149 / 269
カブトムシ大作戦 2
しおりを挟む
徐々に明るくなる中、森といって差し支えないそこをカブトムシ捕獲隊の私たちが進む。
「いっぱい居たら困るから、いっぱい入る、おっきい虫籠(むしかご)を持ってきてね」と言われていたらしいランティスさんとラムセスさんは、「それは大きすぎるだろう」と突っ込みたくなるような、下手をすればアルゴスくんとマルケスくんが直立不動で一人づつ入ってしまいそうな大きさの、言わば飼育小屋といった様相のものを背負っていた。
勿論、子供たちは自分達で持ち歩きたいと相応の小さな虫籠を斜めがけにしている。
「カブトムシ、いっぱいいるかな?」
「いっぱい居ると良いね~」
私の右手を繋いだアルゴス君と、左手を繋いだマルケス君が秘密兵器をしかけた場所へと案内してくれる為に引っ張るように歩きながらニコニコ笑っている。
「こんなに大きな虫籠二つ分も居るなら、お世話しきれないんじゃない?」
ランティスさんとラムセスさんの背負う虫籠を見て苦笑しながら私が言えば、
「大丈夫!!俺たちだけのじゃないから」
「そうだよね~。独り占めしないよ?皆のもあるから、大丈夫だよ~」
自信満々に間髪入れずに子供たちが返してきた。
いや、うん。でも、私たちが貰ってもまだまだって言うか……。
子供たちの期待に満ちた視線を前に否定的な発言は言わないが、「張り切りすぎでしょう?」とラムセスさんとランティスさんに言いたくなるくらいには二人の背負う小屋は大きいのだ。
子供たちとムキムキな男性二人は嬉しそうに笑いあっているが、帰りにアルゴス君とマルケス君が小屋に入って背負われる事態にならなければ良いなと悪い方向に考えてしまう。
「俺が3つに塗って~」
「僕は二つの樹に塗ったんだ~」
私の懸念に気付かずに、アルゴス君とマルケス君は教えてくれる。
「いっぱい秘密兵器作ったんだね?」
「はい!!だって、一匹とか二匹とかしか居なかったらしょんぼりだろ?」
「だから、臭かったけど頑張って作って、いっぱい塗ったの~」
自分のモヤモヤを振り払う為ににっこりと笑って問うと、アルゴス君はちょっぴりしょんぼりしながら、マルケス君は秘密兵器がどれだけ臭かったのかを語ってくれた。
確かに、自分の幼い頃に父親が作ってくれたカブトムシ集めの秘密兵器も焼酎やら日本酒やらの酒と蜂蜜やパイナップルジュースなどの糖類を混ぜ合わせた、とんでもなく臭いものだったなと思い出す。
あ~。待ちきれなくて「昼は行くな」って言われたのに行って、スズメバチと遭遇したんだっけか。
幸いな事に、彼らの攻撃範囲に辛うじて入っていなかった事と、淡い色の服を着ていた為に、刺されたり追いかけられたりはしなかったが、独特の羽音とスズメバチと認識した時の恐怖は今でも忘れない。
「クワガタも居ると良いですね」
「「お~」」
私が恐怖体験を思い出していると、アレスさんににこやかな声で言われた子供たちが嬉しそうに勇ましく返した。
「「マンティス、秘密兵器にクワガタも来る?」」
「はい。どちらも来る場合もありますし、またどちらかだけ、蛾や黄金虫だけの時もあります」
「「あ~」」
秘密兵器提案者のマンティスさんにさっくりと返された子供たちは、まさかの収穫ゼロになる可能性は微塵も考えていなかったらしく、残念そうなうめき声をあげた。
「両方、来ないのか~」
「大丈夫だよ。アルゴス。僕たち、頑張ったもん。カブトムシこなかったら黄金虫でも良いじゃない。明日、また、早起きすれば良いんだもん」
見ているこちらが切なくなるほどにがっかりしているアルゴス君を誰よりも早くフォローしたのはマルケス君だった。
「そっか。お楽しみは後にとっとくんだな」
「うん」
ふんわりと微笑んでいるマルケス君をじっと見つめた後、ニッと笑ったアルゴス君はうなずき返され、納得したようで、再び私を元気よく誘導してくれた。
「いっぱい居たら困るから、いっぱい入る、おっきい虫籠(むしかご)を持ってきてね」と言われていたらしいランティスさんとラムセスさんは、「それは大きすぎるだろう」と突っ込みたくなるような、下手をすればアルゴスくんとマルケスくんが直立不動で一人づつ入ってしまいそうな大きさの、言わば飼育小屋といった様相のものを背負っていた。
勿論、子供たちは自分達で持ち歩きたいと相応の小さな虫籠を斜めがけにしている。
「カブトムシ、いっぱいいるかな?」
「いっぱい居ると良いね~」
私の右手を繋いだアルゴス君と、左手を繋いだマルケス君が秘密兵器をしかけた場所へと案内してくれる為に引っ張るように歩きながらニコニコ笑っている。
「こんなに大きな虫籠二つ分も居るなら、お世話しきれないんじゃない?」
ランティスさんとラムセスさんの背負う虫籠を見て苦笑しながら私が言えば、
「大丈夫!!俺たちだけのじゃないから」
「そうだよね~。独り占めしないよ?皆のもあるから、大丈夫だよ~」
自信満々に間髪入れずに子供たちが返してきた。
いや、うん。でも、私たちが貰ってもまだまだって言うか……。
子供たちの期待に満ちた視線を前に否定的な発言は言わないが、「張り切りすぎでしょう?」とラムセスさんとランティスさんに言いたくなるくらいには二人の背負う小屋は大きいのだ。
子供たちとムキムキな男性二人は嬉しそうに笑いあっているが、帰りにアルゴス君とマルケス君が小屋に入って背負われる事態にならなければ良いなと悪い方向に考えてしまう。
「俺が3つに塗って~」
「僕は二つの樹に塗ったんだ~」
私の懸念に気付かずに、アルゴス君とマルケス君は教えてくれる。
「いっぱい秘密兵器作ったんだね?」
「はい!!だって、一匹とか二匹とかしか居なかったらしょんぼりだろ?」
「だから、臭かったけど頑張って作って、いっぱい塗ったの~」
自分のモヤモヤを振り払う為ににっこりと笑って問うと、アルゴス君はちょっぴりしょんぼりしながら、マルケス君は秘密兵器がどれだけ臭かったのかを語ってくれた。
確かに、自分の幼い頃に父親が作ってくれたカブトムシ集めの秘密兵器も焼酎やら日本酒やらの酒と蜂蜜やパイナップルジュースなどの糖類を混ぜ合わせた、とんでもなく臭いものだったなと思い出す。
あ~。待ちきれなくて「昼は行くな」って言われたのに行って、スズメバチと遭遇したんだっけか。
幸いな事に、彼らの攻撃範囲に辛うじて入っていなかった事と、淡い色の服を着ていた為に、刺されたり追いかけられたりはしなかったが、独特の羽音とスズメバチと認識した時の恐怖は今でも忘れない。
「クワガタも居ると良いですね」
「「お~」」
私が恐怖体験を思い出していると、アレスさんににこやかな声で言われた子供たちが嬉しそうに勇ましく返した。
「「マンティス、秘密兵器にクワガタも来る?」」
「はい。どちらも来る場合もありますし、またどちらかだけ、蛾や黄金虫だけの時もあります」
「「あ~」」
秘密兵器提案者のマンティスさんにさっくりと返された子供たちは、まさかの収穫ゼロになる可能性は微塵も考えていなかったらしく、残念そうなうめき声をあげた。
「両方、来ないのか~」
「大丈夫だよ。アルゴス。僕たち、頑張ったもん。カブトムシこなかったら黄金虫でも良いじゃない。明日、また、早起きすれば良いんだもん」
見ているこちらが切なくなるほどにがっかりしているアルゴス君を誰よりも早くフォローしたのはマルケス君だった。
「そっか。お楽しみは後にとっとくんだな」
「うん」
ふんわりと微笑んでいるマルケス君をじっと見つめた後、ニッと笑ったアルゴス君はうなずき返され、納得したようで、再び私を元気よく誘導してくれた。
0
お気に入りに追加
435
あなたにおすすめの小説
私のお父様とパパ様
棗
ファンタジー
非常に過保護で愛情深い二人の父親から愛される娘メアリー。
婚約者の皇太子と毎月あるお茶会で顔を合わせるも、彼の隣には幼馴染の女性がいて。
大好きなお父様とパパ様がいれば、皇太子との婚約は白紙になっても何も問題はない。
※箱入り娘な主人公と娘溺愛過保護な父親コンビのとある日のお話。
追記(2021/10/7)
お茶会の後を追加します。
更に追記(2022/3/9)
連載として再開します。
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。
私は逃げます
恵葉
恋愛
ブラック企業で社畜なんてやっていたら、23歳で血反吐を吐いて、死んじゃった…と思ったら、異世界へ転生してしまったOLです。
そしてこれまたありがちな、貴族令嬢として転生してしまったのですが、運命から…ではなく、文字通り物理的に逃げます。
貴族のあれやこれやなんて、構っていられません!
今度こそ好きなように生きます!
【完結】父が再婚。義母には連れ子がいて一つ下の妹になるそうですが……ちょうだい癖のある義妹に寮生活は無理なのでは?
つくも茄子
ファンタジー
父が再婚をしました。お相手は男爵夫人。
平民の我が家でいいのですか?
疑問に思うものの、よくよく聞けば、相手も再婚で、娘が一人いるとのこと。
義妹はそれは美しい少女でした。義母に似たのでしょう。父も実娘をそっちのけで義妹にメロメロです。ですが、この新しい義妹には悪癖があるようで、人の物を欲しがるのです。「お義姉様、ちょうだい!」が口癖。あまりに煩いので快く渡しています。何故かって?もうすぐ、学園での寮生活に入るからです。少しの間だけ我慢すれば済むこと。
学園では煩い家族がいない分、のびのびと過ごせていたのですが、義妹が入学してきました。
必ずしも入学しなければならない、というわけではありません。
勉強嫌いの義妹。
この学園は成績順だということを知らないのでは?思った通り、最下位クラスにいってしまった義妹。
両親に駄々をこねているようです。
私のところにも手紙を送ってくるのですから、相当です。
しかも、寮やクラスで揉め事を起こしては顰蹙を買っています。入学早々に学園中の女子を敵にまわしたのです!やりたい放題の義妹に、とうとう、ある処置を施され・・・。
なろう、カクヨム、にも公開中。
騎士団長のお抱え薬師
衣更月
ファンタジー
辺境の町ハノンで暮らすイヴは、四大元素の火、風、水、土の属性から弾かれたハズレ属性、聖属性持ちだ。
聖属性持ちは意外と多く、ハズレ属性と言われるだけあって飽和状態。聖属性持ちの女性は結婚に逃げがちだが、イヴの年齢では結婚はできない。家業があれば良かったのだが、平民で天涯孤独となった身の上である。
後ろ盾は一切なく、自分の身は自分で守らなければならない。
なのに、求人依頼に聖属性は殆ど出ない。
そんな折、獣人の国が聖属性を募集していると話を聞き、出国を決意する。
場所は隣国。
しかもハノンの隣。
迎えに来たのは見上げるほど背の高い美丈夫で、なぜかイヴに威圧的な騎士団長だった。
大きな事件は起きないし、意外と獣人は優しい。なのに、団長だけは怖い。
イヴの団長克服の日々が始まる―ー―。
夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です
絶対に間違えないから
mahiro
恋愛
あれは事故だった。
けれど、その場には彼女と仲の悪かった私がおり、日頃の行いの悪さのせいで彼女を階段から突き落とした犯人は私だと誰もが思ったーーー私の初恋であった貴方さえも。
だから、貴方は彼女を失うことになった私を許さず、私を死へ追いやった………はずだった。
何故か私はあのときの記憶を持ったまま6歳の頃の私に戻ってきたのだ。
どうして戻ってこれたのか分からないが、このチャンスを逃すわけにはいかない。
私はもう彼らとは出会わず、日頃の行いの悪さを見直し、平穏な生活を目指す!そう決めたはずなのに...……。
義母に毒を盛られて前世の記憶を取り戻し覚醒しました、貴男は義妹と仲良くすればいいわ。
克全
ファンタジー
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。
11月9日「カクヨム」恋愛日間ランキング15位
11月11日「カクヨム」恋愛週間ランキング22位
11月11日「カクヨム」恋愛月間ランキング71位
11月4日「小説家になろう」恋愛異世界転生/転移恋愛日間78位
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる