上 下
121 / 269

使者団との昼食会 3

しおりを挟む
 笑いあう中で周囲を伺い、マッチョな方とスリムな体型の人ばかりな事に少し、安堵する。
 なにせ、子供たちと一緒に「おデブおデブ」と連呼していた為、体型を気にしている人がいたらカチンとくると思ったのだ。 
 楽しい気分に水を差すようだが、唐突に道徳を教えるのは今だと思った。昼食会の前のシュリさんとのやりとりでも感じていたが、タイミングを逃していた。
 だからこそ、「人を比較してはいけません」という事を教えるのは今を逃してはいけないと考えた。
「突然だけどね?自分がされたり言われたりして嫌だなって事はしてはいけません。それが相手を傷付けようと考えての悪口だったり意地悪だったりならよけいにダメ」
「「はい」」
 突然の説教じみた言葉に戸惑うだろうと思っていた私に対し、子供たちは当然のように真剣な面持ちで頷いてくれた。後にこの時の事をアルゴス君とマルケス君に謝りつつ問うたら、「ママは自分たちに意地悪で言わない。ママが自分たちを好きだから言うんだから、素敵な大人になるために大切な事なんだと思った。なんで謝るのか?」と意訳で返され、良い子過ぎる二人を抱きしめて感極まった私は泣いてしまった。
「例えば、二人は自分で言われたら嫌な事ってあるかな?」
「なんでマルケスよりバカなの?っての」
「僕は、アルゴスは武術凄いのにって言われるのが嫌なの……」
 心底嫌そうに顔をしかめたアルゴス君と、泣きそうに表情を歪めたマルケス君に、誰か大人がねちねちと言ったのだろうと容易に考え付くと同時に見知らぬ人間に怒りを覚えた。
 うちの可愛い子供たちになんてこと吹き込んでくれてんのよ!?そんなん見かけたらただじゃおかないから!!
 荒れ狂う心境を悟らせないように膝の上のちびもふブラザーズをそっと抱きしめる。
「ごめんね。嫌な気分になったよね。思い出させてごめんね」
「全然!!俺たち、言われた時にガブッてしてやったもん」
「うん!!意地悪しないでって噛みついちゃった」
 ちょっぴり自慢気な子供たちに、誰かが「ぶほっ」と吹き出した。王様達は知らなかったのか、何かを考える素振りを見せていた。
「「あ!! かじってごめんなさいしてない」」
 耳をしょぼんと寝かせて怒られるのではないかと小さくなっている子供たちに笑顔で告げた。
「いきなりかじるのは悪いことだけど、アルゴス君もマルケス君も嫌な気分になったからガブッてしたんでしょ?」
「「はい」」
 「あれ?怒らないの?」と言いたげに見つめてくるちびもふブラザーズに笑顔続行のままに告げる。
「二人がガブッてした人を見かけたら教えてくれるかな?私からもご挨拶(ゴアイサツ)したいから」
「「はい!!ママ、ありがとう~」
 「一緒に謝ってくれる」と思って嬉しそうに頭をグリグリ擦り付けてくる子供たちには悪いが、私は相手をシメる気でいる。
 もちろん、アルゴス君とマルケス君には分からないが相手には分かるように慇懃無礼(いんぎんぶれい)にきっちりしっかり完膚なきほどに。そんな私の思惑に気付いたらしい大人たちは顔をひきつらせていた。我等が良心エリゴスさんは裏を読まずに子供たちを微笑ましく見ている。
「誰かに勝手に比べられたら嫌な気分になっちゃうよね?」
「「はい!!ママも?」」
「そうだよ?その嫌な気分を皆にやらないように出来るかな?」
「「はい!! あ!!」」
 「ママも一緒だね」と顔を見合わせて「うふふ」と笑っていたちびもふブラザーズはすぐに何かに気付いたようで声を上げた後、膝の上でもぞもぞと向きを変えて真剣な表情を見せる。 
「アレス、シュリ、いっぱい言ってごめんなさい」
「嫌だったよね?本当にごめんなさい」
「はい。謝罪は受け入れますが、私は気にしていません」
「わかればよろしい。ぴょんもぐるぐるもしてしんぜよう」
 裏の無い優しい笑顔で返すアレスさんと、芝居がかった口調で返すシュリさんに、嬉しそうに笑いながら子供達は何度も「ありがとう」を繰り返していた。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

私のお父様とパパ様

ファンタジー
非常に過保護で愛情深い二人の父親から愛される娘メアリー。 婚約者の皇太子と毎月あるお茶会で顔を合わせるも、彼の隣には幼馴染の女性がいて。 大好きなお父様とパパ様がいれば、皇太子との婚約は白紙になっても何も問題はない。 ※箱入り娘な主人公と娘溺愛過保護な父親コンビのとある日のお話。 追記(2021/10/7) お茶会の後を追加します。 更に追記(2022/3/9) 連載として再開します。

5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?

gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。 そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて 「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」 もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね? 3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。 4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。 1章が書籍になりました。

私は逃げます

恵葉
恋愛
ブラック企業で社畜なんてやっていたら、23歳で血反吐を吐いて、死んじゃった…と思ったら、異世界へ転生してしまったOLです。 そしてこれまたありがちな、貴族令嬢として転生してしまったのですが、運命から…ではなく、文字通り物理的に逃げます。 貴族のあれやこれやなんて、構っていられません! 今度こそ好きなように生きます!

【完結】父が再婚。義母には連れ子がいて一つ下の妹になるそうですが……ちょうだい癖のある義妹に寮生活は無理なのでは?

つくも茄子
ファンタジー
父が再婚をしました。お相手は男爵夫人。 平民の我が家でいいのですか? 疑問に思うものの、よくよく聞けば、相手も再婚で、娘が一人いるとのこと。 義妹はそれは美しい少女でした。義母に似たのでしょう。父も実娘をそっちのけで義妹にメロメロです。ですが、この新しい義妹には悪癖があるようで、人の物を欲しがるのです。「お義姉様、ちょうだい!」が口癖。あまりに煩いので快く渡しています。何故かって?もうすぐ、学園での寮生活に入るからです。少しの間だけ我慢すれば済むこと。 学園では煩い家族がいない分、のびのびと過ごせていたのですが、義妹が入学してきました。 必ずしも入学しなければならない、というわけではありません。 勉強嫌いの義妹。 この学園は成績順だということを知らないのでは?思った通り、最下位クラスにいってしまった義妹。 両親に駄々をこねているようです。 私のところにも手紙を送ってくるのですから、相当です。 しかも、寮やクラスで揉め事を起こしては顰蹙を買っています。入学早々に学園中の女子を敵にまわしたのです!やりたい放題の義妹に、とうとう、ある処置を施され・・・。 なろう、カクヨム、にも公開中。

騎士団長のお抱え薬師

衣更月
ファンタジー
辺境の町ハノンで暮らすイヴは、四大元素の火、風、水、土の属性から弾かれたハズレ属性、聖属性持ちだ。 聖属性持ちは意外と多く、ハズレ属性と言われるだけあって飽和状態。聖属性持ちの女性は結婚に逃げがちだが、イヴの年齢では結婚はできない。家業があれば良かったのだが、平民で天涯孤独となった身の上である。 後ろ盾は一切なく、自分の身は自分で守らなければならない。 なのに、求人依頼に聖属性は殆ど出ない。 そんな折、獣人の国が聖属性を募集していると話を聞き、出国を決意する。 場所は隣国。 しかもハノンの隣。 迎えに来たのは見上げるほど背の高い美丈夫で、なぜかイヴに威圧的な騎士団長だった。 大きな事件は起きないし、意外と獣人は優しい。なのに、団長だけは怖い。 イヴの団長克服の日々が始まる―ー―。

夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました

氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。 ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。 小説家になろう様にも掲載中です

絶対に間違えないから

mahiro
恋愛
あれは事故だった。 けれど、その場には彼女と仲の悪かった私がおり、日頃の行いの悪さのせいで彼女を階段から突き落とした犯人は私だと誰もが思ったーーー私の初恋であった貴方さえも。 だから、貴方は彼女を失うことになった私を許さず、私を死へ追いやった………はずだった。 何故か私はあのときの記憶を持ったまま6歳の頃の私に戻ってきたのだ。 どうして戻ってこれたのか分からないが、このチャンスを逃すわけにはいかない。 私はもう彼らとは出会わず、日頃の行いの悪さを見直し、平穏な生活を目指す!そう決めたはずなのに...……。

義母に毒を盛られて前世の記憶を取り戻し覚醒しました、貴男は義妹と仲良くすればいいわ。

克全
ファンタジー
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。 11月9日「カクヨム」恋愛日間ランキング15位 11月11日「カクヨム」恋愛週間ランキング22位 11月11日「カクヨム」恋愛月間ランキング71位 11月4日「小説家になろう」恋愛異世界転生/転移恋愛日間78位

処理中です...