108 / 269
新たな官僚 1
しおりを挟む
もちろん、そんなに簡単に気絶出来るわけもなく、パニックに固まっている私に、再び天の声が響いた。
「皆、席に着け。エリゴスはミーナを降ろしてやれ。シュリはミーナから離れて座れ」
「はい」
「……はい」
納得いかないが、王様の指示だから仕方ないと言いたげにシュリさんは斜め向かいに座り、私は知らない男性に挟まれる形でエリゴスさんに椅子へと下ろして貰った。
彼女から休み無く送られてくる熱い視線は痛い程だ。
嫌われるよりは嬉しいが、こうもあからさまに「貴女が好きです」と成人女性から好意を寄せられた事が無かった為に混乱も一入だ。シュリさんからさりげなく視線を外し、辺りを見れば、私も含めて着席しているのは十名、女性は彼女と自分だけだった。
侍女さんにより手際良くお茶をいれてもらい、王様が口をつけたのを見てからこんがらがっている思考を落ち着ける為に自分も一口飲んだ。
あ~。生き返った気がする。日本茶じゃなくても熱いお茶は落ち着く~。
フォレストで出されるのはハーブティーか紅茶で、コーヒーや緑茶などはまだ飲んだ事が無い。
飲んだお茶も、茶葉じたいは見た事が無いので味で判断しているが、もしかすると私の知っているハーブティーや紅茶ではない可能性もある。
続けて飲んでいると、荒れていた思考も少しづつ落ち着いていったように感じる。
そんな私を見越したかのようにディーバさんが口を開いた。
「今、ここに居るのは私の直属で動いてもらっています。それでは、自己紹介をお願いします」
すっと音も無く立ち上がったのは、茶色の瞳で同じく茶色の長髪をそのまま背に垂らした細身の男性だった。
「マンティスと申します。ランティスは兄です。よろしくお願いします」
短く言って頭を下げたマンティスさんが着席する前に慌ただしく立ち上がったのは、ルッツォさんやソルゴスさんに勝るとも劣らない筋骨隆々(きんこつりゅうりゅう)な、焦げ茶色の瞳で同じ色の髪を短く刈り上げた男性だった。
「弟のマンティスから名の上がった、兄のランティスです。弟は口下手ですが、自分は違います。兄弟共々、フォレストの為に尽くします。よろしくお願いします」
ニカッと音が聞こえてきそうなランティスさんは白い歯を煌めかせて笑った。
ヤバイ。体育会系にしか見えない。エリゴスさんもそうだけど、間違えてませんか!?
本人に聞かれたら、正座で説教されそうな失礼な事を思っていると、女性としか思えない美貌の絵本のお姫様のような人が立ち上がった。白く抜けるような肌、緩くウェーブする金髪、睫毛も長く、その下からのぞく瞳も見事な金色だった。
綺麗……。
見惚れているその人から零れる声は男性のものだったが、完璧な美貌のせいで本当に男性かと疑ってしまうほどだ。
「私はアレスと申します。若輩者ではありますが、フォレストを思う気持ちは誰にも負けないと自負しております。よろしくお願いします」
アレスさんが頭を下げると、さらりと髪も流れる。
本当に綺麗な人だな~。ちびもふブラザーズが対面したら、照れちゃうかもしれないな~。
「皆、席に着け。エリゴスはミーナを降ろしてやれ。シュリはミーナから離れて座れ」
「はい」
「……はい」
納得いかないが、王様の指示だから仕方ないと言いたげにシュリさんは斜め向かいに座り、私は知らない男性に挟まれる形でエリゴスさんに椅子へと下ろして貰った。
彼女から休み無く送られてくる熱い視線は痛い程だ。
嫌われるよりは嬉しいが、こうもあからさまに「貴女が好きです」と成人女性から好意を寄せられた事が無かった為に混乱も一入だ。シュリさんからさりげなく視線を外し、辺りを見れば、私も含めて着席しているのは十名、女性は彼女と自分だけだった。
侍女さんにより手際良くお茶をいれてもらい、王様が口をつけたのを見てからこんがらがっている思考を落ち着ける為に自分も一口飲んだ。
あ~。生き返った気がする。日本茶じゃなくても熱いお茶は落ち着く~。
フォレストで出されるのはハーブティーか紅茶で、コーヒーや緑茶などはまだ飲んだ事が無い。
飲んだお茶も、茶葉じたいは見た事が無いので味で判断しているが、もしかすると私の知っているハーブティーや紅茶ではない可能性もある。
続けて飲んでいると、荒れていた思考も少しづつ落ち着いていったように感じる。
そんな私を見越したかのようにディーバさんが口を開いた。
「今、ここに居るのは私の直属で動いてもらっています。それでは、自己紹介をお願いします」
すっと音も無く立ち上がったのは、茶色の瞳で同じく茶色の長髪をそのまま背に垂らした細身の男性だった。
「マンティスと申します。ランティスは兄です。よろしくお願いします」
短く言って頭を下げたマンティスさんが着席する前に慌ただしく立ち上がったのは、ルッツォさんやソルゴスさんに勝るとも劣らない筋骨隆々(きんこつりゅうりゅう)な、焦げ茶色の瞳で同じ色の髪を短く刈り上げた男性だった。
「弟のマンティスから名の上がった、兄のランティスです。弟は口下手ですが、自分は違います。兄弟共々、フォレストの為に尽くします。よろしくお願いします」
ニカッと音が聞こえてきそうなランティスさんは白い歯を煌めかせて笑った。
ヤバイ。体育会系にしか見えない。エリゴスさんもそうだけど、間違えてませんか!?
本人に聞かれたら、正座で説教されそうな失礼な事を思っていると、女性としか思えない美貌の絵本のお姫様のような人が立ち上がった。白く抜けるような肌、緩くウェーブする金髪、睫毛も長く、その下からのぞく瞳も見事な金色だった。
綺麗……。
見惚れているその人から零れる声は男性のものだったが、完璧な美貌のせいで本当に男性かと疑ってしまうほどだ。
「私はアレスと申します。若輩者ではありますが、フォレストを思う気持ちは誰にも負けないと自負しております。よろしくお願いします」
アレスさんが頭を下げると、さらりと髪も流れる。
本当に綺麗な人だな~。ちびもふブラザーズが対面したら、照れちゃうかもしれないな~。
0
お気に入りに追加
432
あなたにおすすめの小説
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。
【完結】父が再婚。義母には連れ子がいて一つ下の妹になるそうですが……ちょうだい癖のある義妹に寮生活は無理なのでは?
つくも茄子
ファンタジー
父が再婚をしました。お相手は男爵夫人。
平民の我が家でいいのですか?
疑問に思うものの、よくよく聞けば、相手も再婚で、娘が一人いるとのこと。
義妹はそれは美しい少女でした。義母に似たのでしょう。父も実娘をそっちのけで義妹にメロメロです。ですが、この新しい義妹には悪癖があるようで、人の物を欲しがるのです。「お義姉様、ちょうだい!」が口癖。あまりに煩いので快く渡しています。何故かって?もうすぐ、学園での寮生活に入るからです。少しの間だけ我慢すれば済むこと。
学園では煩い家族がいない分、のびのびと過ごせていたのですが、義妹が入学してきました。
必ずしも入学しなければならない、というわけではありません。
勉強嫌いの義妹。
この学園は成績順だということを知らないのでは?思った通り、最下位クラスにいってしまった義妹。
両親に駄々をこねているようです。
私のところにも手紙を送ってくるのですから、相当です。
しかも、寮やクラスで揉め事を起こしては顰蹙を買っています。入学早々に学園中の女子を敵にまわしたのです!やりたい放題の義妹に、とうとう、ある処置を施され・・・。
なろう、カクヨム、にも公開中。
一宿一飯の恩義で竜伯爵様に抱かれたら、なぜか監禁されちゃいました!
当麻月菜
恋愛
宮坂 朱音(みやさか あかね)は、電車に跳ねられる寸前に異世界転移した。そして異世界人を保護する役目を担う竜伯爵の元でお世話になることになった。
しかしある日の晩、竜伯爵当主であり、朱音の保護者であり、ひそかに恋心を抱いているデュアロスが瀕死の状態で屋敷に戻ってきた。
彼は強い媚薬を盛られて苦しんでいたのだ。
このまま一晩ナニをしなければ、死んでしまうと知って、朱音は一宿一飯の恩義と、淡い恋心からデュアロスにその身を捧げた。
しかしそこから、なぜだかわからないけれど監禁生活が始まってしまい……。
好きだからこそ身を捧げた異世界女性と、強い覚悟を持って異世界女性を抱いた男が異世界婚をするまでの、しょーもないアレコレですれ違う二人の恋のおはなし。
※いつもコメントありがとうございます!現在、返信が遅れて申し訳ありません(o*。_。)oペコッ 甘口も辛口もどれもありがたく読ませていただいてます(*´ω`*)
※他のサイトにも重複投稿しています。
冷宮の人形姫
りーさん
ファンタジー
冷宮に閉じ込められて育てられた姫がいた。父親である皇帝には関心を持たれず、少しの使用人と母親と共に育ってきた。
幼少の頃からの虐待により、感情を表に出せなくなった姫は、5歳になった時に母親が亡くなった。そんな時、皇帝が姫を迎えに来た。
※すみません、完全にファンタジーになりそうなので、ファンタジーにしますね。
※皇帝のミドルネームを、イント→レントに変えます。(第一皇妃のミドルネームと被りそうなので)
そして、レンド→レクトに変えます。(皇帝のミドルネームと似てしまうため)変わってないよというところがあれば教えてください。
貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた
佐藤醤油
ファンタジー
貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。
僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。
魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。
言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。
この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。
小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。
------------------------------------------------------------------
お知らせ
「転生者はめぐりあう」 始めました。
------------------------------------------------------------------
注意
作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。
感想は受け付けていません。
誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。
【完結】言いたいことがあるなら言ってみろ、と言われたので遠慮なく言ってみた
杜野秋人
ファンタジー
社交シーズン最後の大晩餐会と舞踏会。そのさなか、第三王子が突然、婚約者である伯爵家令嬢に婚約破棄を突き付けた。
なんでも、伯爵家令嬢が婚約者の地位を笠に着て、第三王子の寵愛する子爵家令嬢を虐めていたというのだ。
婚約者は否定するも、他にも次々と証言や証人が出てきて黙り込み俯いてしまう。
勝ち誇った王子は、最後にこう宣言した。
「そなたにも言い分はあろう。私は寛大だから弁明の機会をくれてやる。言いたいことがあるなら言ってみろ」
その一言が、自らの破滅を呼ぶことになるなど、この時彼はまだ気付いていなかった⸺!
◆例によって設定ナシの即興作品です。なので主人公の伯爵家令嬢以外に固有名詞はありません。頭カラッポにしてゆるっとお楽しみ下さい。
婚約破棄ものですが恋愛はありません。もちろん元サヤもナシです。
◆全6話、約15000字程度でサラッと読めます。1日1話ずつ更新。
◆この物語はアルファポリスのほか、小説家になろうでも公開します。
◆9/29、HOTランキング入り!お読み頂きありがとうございます!
10/1、HOTランキング最高6位、人気ランキング11位、ファンタジーランキング1位!24h.pt瞬間最大11万4000pt!いずれも自己ベスト!ありがとうございます!
三年目の離縁、「白い結婚」を申し立てます! 幼な妻のたった一度の反撃
紫月 由良
恋愛
【書籍化】5月30日発行されました。イラストは天城望先生です。
【本編】十三歳で政略のために婚姻を結んだエミリアは、夫に顧みられない日々を過ごす。夫の好みは肉感的で色香漂う大人の女性。子供のエミリアはお呼びではなかった。ある日、参加した夜会で、夫が愛人に対して、妻を襲わせた上でそれを浮気とし家から追い出すと、楽しそうに言ってるのを聞いてしまう。エミリアは孤児院への慰問や教会への寄付で培った人脈を味方に、婚姻無効を申し立て、夫の非を詳らかにする。従順(見かけだけ)妻の、夫への最初で最後の反撃に出る。
チート幼女とSSSランク冒険者
紅 蓮也
ファンタジー
【更新休止中】
三十歳の誕生日に通り魔に刺され人生を終えた小鳥遊葵が
過去にも失敗しまくりの神様から異世界転生を頼まれる。
神様は自分が長々と語っていたからなのに、ある程度は魔法が使える体にしとく、無限収納もあげるといい、時間があまり無いからさっさと転生しちゃおっかと言いだし、転生のため光に包まれ意識が無くなる直前、神様から不安を感じさせる言葉が聞こえたが、どうする事もできない私はそのまま転生された。
目を開けると日本人の男女の顔があった。
転生から四年がたったある日、神様が現れ、異世界じゃなくて地球に転生させちゃったと・・・
他の人を新たに異世界に転生させるのは無理だからと本来行くはずだった異世界に転移することに・・・
転移するとそこは森の中でした。見たこともない魔獣に襲われているところを冒険者に助けられる。
そして転移により家族がいない葵は、冒険者になり助けてくれた冒険者たちと冒険したり、しなかったりする物語
※この作品は小説家になろう様、カクヨム様、ノベルバ様、エブリスタ様でも掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる