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もふもふパニック 6

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 用意してもらったシートの上に、ひとつひとつメニューを説明しながら並べていく。
「サンドイッチはパンに色んな具を挟んだ食べ物で、これは茹でた卵を油と卵と酢と塩で作ったマヨネーズソースで和えた物、こっちは茹でたお魚をマヨネーズで和えた物、これがお野菜を挟んだものだよ」
「野菜、か~。でも、ママのお料理、野菜でも旨いもんな~」
「コロンコロンして可愛いね~」
 こちらのパンはバゲット風な生地もバターロール風な生地も食パン風な生地も成形は全て丸だ。
 パンの成形には携わらなかった為、サンドイッチは半円形で、いわゆるバーガーにするバンズで、コンビニなどで見慣れている食パンで作られた三角では無い。
 それでも、あちらでの形を知らないマルケス君には「可愛い」と大好評なのが嬉しい。
 もっとも、アルゴス君は野菜の部分にひっかかっているようで、マルケス君に「可愛いからこれも絶対美味しいよ!!」と言われて複雑そうに頷いていた。
 実は昨日、クリームコロッケやミネストローネを作った時に今日のお昼の計画を打ち明けて相談し、一番手間取りそうなマヨネーズとケーキを前持って作成していた。
 魔法があるとは言え、非加熱でのマヨネーズを作って、卵からくる菌により食中毒になってはいけないと、湯煎にかけながら作った。
 卵に雑菌が付いていたとしても50から60度の熱で3分ほど撹拌かくはんすることにより死活化し、中毒にはなりづらい上に、空気を含むことで口当たりも良くなり良いこと尽くめだと母達に習った覚えがあるのだ。
 あー、と、たしか、何故、海外でたまごかけご飯が嫌悪されるのか?で説明してもらった時だったか。
  生で食べたいからこそ衛生基準を作り、徹底した日本以外では食材を生で食べるのは危険だと思った方が無難だと言われて「なんで?」と問い返した私に母は子供だからと侮らずに説明してくれた。
 鶏は排泄も卵を産むのも出口は一緒だから、どうしても菌が付着するリスクが上がること。
 又、そもそも生で食べるという習慣が少ない為、外国では非加熱用で生産されている物は少ない事、売買されている際の衛生状態も確かめなければならない事、寄生虫の心配もしなければならない事、など、子供向けではないよね??な、それでも一人で生きるために大切な事を教えてくれた。
 それはともかく、作成中のマヨネーズソースに対するルッツォさんとジルさんの食いつきは凄まじく、「いますぐ使いたい」との二人を「今日のお昼までは内緒で」を押し通すのは中々苦労した。
……と、私の世界に入ってたね。
 まぁるいお目々を輝かせて見つめる子供達に小さく頷いて、料理の説明に戻る。
「スープはキャベツとニンジンと玉葱とお肉をちっちゃく切って、牛乳で煮込んだミルクスープ」
 保温魔法をかけてあるという陶器の瓶に入れて持って来たので、あっつあつなそれからはミルクの優しい香りがのぼっている。
 そして、子供達が喜ぶだろうとケーキをバスケットから取り出す。
「デザートはこれ」
 「じゃじゃ~ん」と声に出しながら、切り分け前のホールケーキを見せるとちびもふブラザーズは飛び上がって喜んでくれる。
「やった~!!すっごいお月様だ~!!」
「すごいすご~い!!なんでこんなにおっきいの~?」
 きらっきらの笑顔の二人に答える。子供達に水を注すまいと思っているのか、始祖様は笑顔のままで口をつぐんでいる。
「これはね?ケーキって言って、卵と砂糖と粉を混ぜてから、型に入れて皆の分を一気に焼いちゃうの。だから、一人で一個じゃなくて切り分けて皆で食べる為に大きいんだよ」
「「お~」」
 感嘆の声を上げた子供達はコクコクと激しく首を縦に振った。
「切るとお月様じゃなくなるな」
「でも、すっごい綺麗なオレンジ~。可愛いね~」
 マルケス君はさすが鋭いな~。
 実はこれは人参(にんじん)をたっぷり入れたキャロットケーキ。
 だから、人参の色で鮮やかなオレンジをしているのだ。
 野菜が苦手だと言うアルゴスくんが美味しく食べられるように人参の癖を消す為、マーマレードを加えて甘味とし、砂糖の量は減らしている。
「うふふ。じゃあ、順番に食べてみよ?」
「「はい!!」」
「いや、すげぇな。こんなに沢山、大変だったろ?」
「ソースとケーキは前日に作り置きしていましたから思う程ではありませ……ケーキは一番最後!!」
 文字通り、ぴょんと飛び上がった毛玉ちゃん達は、ささっと始祖様の背中に隠れて頭だけを出した。
「違うぞ!?くんくんしただけだ」
「そうだよ!!このまんまでどうやって食べようか思っただけで、ちょびっとかじりたいな~とか思ってないよ?」
「そう!!つまみ食いなんて考えてないぞ」
 慌てながら告白している子供達に微笑む。
「慌てなくてもアルゴス君とマルケス君が獣還りの最中は、お話を聞く時やご飯の時は抱っこしてあげるよ?」
「お膝で?」
「あ~んしてくれる?」
「もちろん!!」
「「良いかも~」」
 顔を見合わせた毛玉ちゃん達は目を細めてくふふと笑っている。
「「ママ!!抱っこ~」」
 尻尾を千切れんばかりに振って駆けてくる子供達をきゅっと抱きしめ、便乗して被さってきた始祖様の鼻はきゅっと摘んでおいた。
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