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あまいひととき 2
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聞いていなかった調理器具の有無をルッツォさんが教えてくれたのだが、こちらも調味料よろしく嬉しい裏切り方をしてくれた。鍋やフライパンは当然の事として、調整可能のコンロに石窯などの過熱機具、冷気と凍気の魔法がそれぞれかけられている冷蔵庫と冷凍庫、笊にレードルに漉し器、お菓子が無いなら無いだろうと諦めていた泡立て器もあった。子供が興味をもった事は無茶な事以外はやらせるという王族の教育方針があるらしく、子供サイズの調理用品まであったのには笑ってしまった。
晩御飯の支度は何時からだと聞けば、下拵えは済んでいるので、二時間後までは自由に厨房を使って良いと言う。後片付けの時間を省いて一時間半。子供達もお手伝い出来て、期待外れだとシメられない物は無いかと考え、こちらに無い料理である、焼き菓子を作ろうと思う。
「卵と牛乳とバター、砂糖と小麦粉を使いたいのですが、あればクルミも。それと、石窯は火を落としていますか?」
「30分くらい前に落としたかな?まだ熱いくらいだな。何をつくるんだ?」
「私の国ではクッキーと言う、甘い焼き料理を作ります。時間があるならホットケーキと言う、甘い料理も作りたいと思っています」
恐らく通じないだろうと「お菓子」ではなく「料理」と伝えると、ルッツォさんは目を丸くした。
「甘い料理?ディーバが言ってた肉料理じゃないのか?」
「肉じゃないのー!?なんでなんで~!?」
不思議そうに問うルッツォさんと、肉が好きだと言っていた不満そうなアルゴス君のほほえましい姿に、アルゴス君とマルケス君の前にしゃがんで答える。
「そう。肉料理は作って肉汁を落ち着かせたくらいの熱い状態が一番美味しいと思うの。だから、今日は冷ましてから食べる甘い料理にしたんだ」
「お肉でもお魚でも無いね~。ママはそのお料理、好きなの?」
肉より魚が好きだと言っていたマルケス君は、二人のどちらかの好物でもない事にほっとしているようだ。
恐らく、アルゴスくんと喧嘩になったらいやだな、と考えたのだろう。
「うん。好きだよ」
「なら、僕はそれ作る~!!」
バンザイして言ってくれたマルケス君の頭を撫でる。
「あ!!ありがとうございます。大小のボウル三個づつと泡立て器と漉し器、子供達にも同じく一揃えづつ、お願い出来ますか?」
「はいっ!!」
私が説明している間に、材料を用意してくれた若い料理人さんにお礼とお願いをする。
顔を真っ赤に染めて立ち去った彼を見て、「でもでもやっぱり肉が良い」と二人で言いあっていたアルゴス君とルッツォさんが静かになる。そして私に真剣な表情をした三人が詰め寄る。
「ママ!!俺達の傍にずーっとずーっと居て!!」
「ママ、僕たちがおっきくなるまで待っててね?僕たちとケッコンしようね?」
「ミーナ!!ストーカーに気をつけろっ!!城内だろうが城下だろうが、絶対に一人で歩くんじゃねーぞ!?」
「はぁ?」
私の両手を包み込むように握り、忠告して下さるルッツォさんの言葉が理解出来ずに生返事をしてしまう。
「あ!!ルーにぃ!!ママの手離せよ!!」
「自覚無しかよ。アルゴス!!マルケス!!ママを守れる男になれよ!!」
「「おーっ!!」」
なにやら盛り上がる子供達とルッツォさんの姿に、唐突に始祖様が頭に浮かぶ。ルッツォさんと始祖様は容姿はまったく似ていないのだが、言動や子供達への対応が似ている気がする。
「始祖様?」
ぽろりと零れた言葉に、私の後ろでメモをとっていたディーバさんが頷いた。
「はい。ルッツォは王族ですから、始祖様にも育てられました。ちなみに、儀式などは行なっておりませんが、私たちの兄弟分で、陛下の兄にあたります」
「お兄さん?」
「はい。ミーナ様もご存知の通り、獣人は王族として城へ入ります。入城した時期十年を一区切りとして、その間に居た獣人を兄弟分と。血の繋がりはありませんが、種族が同じであれば兄弟分ではなく、兄弟とみなされます」
ディーバさんの説明に、合点がいった私も思わず大きく頷いた。
「だから、アルゴス君とマルケス君は兄弟なんですね」
「マーマ~、ディーバと仲良し止めて、早く教えてくれよぅ。俺、くっちー食べたい~」
ディーバさんと脱線してしまった私に痺れをきらしたのか、ツンツンとスカートを引っ張るアルゴス君とマルケス君。
そうだ。限られた時間で子供達のリクエストを叶えなければいけない。私には厨房で立ち話をしている暇は無い。
「お喋りごめんね?じゃぁ、みんなで手を洗ってから始めようか」
「「うん」」
「よくやった!!」
「エライッ!!フルーツおまけしてやるっ!!」
沸き起こる子供達への野太い声援に、ビクリと体が震えてしまったが、アルゴス君とマルケス君はなぜか得意げだった。
晩御飯の支度は何時からだと聞けば、下拵えは済んでいるので、二時間後までは自由に厨房を使って良いと言う。後片付けの時間を省いて一時間半。子供達もお手伝い出来て、期待外れだとシメられない物は無いかと考え、こちらに無い料理である、焼き菓子を作ろうと思う。
「卵と牛乳とバター、砂糖と小麦粉を使いたいのですが、あればクルミも。それと、石窯は火を落としていますか?」
「30分くらい前に落としたかな?まだ熱いくらいだな。何をつくるんだ?」
「私の国ではクッキーと言う、甘い焼き料理を作ります。時間があるならホットケーキと言う、甘い料理も作りたいと思っています」
恐らく通じないだろうと「お菓子」ではなく「料理」と伝えると、ルッツォさんは目を丸くした。
「甘い料理?ディーバが言ってた肉料理じゃないのか?」
「肉じゃないのー!?なんでなんで~!?」
不思議そうに問うルッツォさんと、肉が好きだと言っていた不満そうなアルゴス君のほほえましい姿に、アルゴス君とマルケス君の前にしゃがんで答える。
「そう。肉料理は作って肉汁を落ち着かせたくらいの熱い状態が一番美味しいと思うの。だから、今日は冷ましてから食べる甘い料理にしたんだ」
「お肉でもお魚でも無いね~。ママはそのお料理、好きなの?」
肉より魚が好きだと言っていたマルケス君は、二人のどちらかの好物でもない事にほっとしているようだ。
恐らく、アルゴスくんと喧嘩になったらいやだな、と考えたのだろう。
「うん。好きだよ」
「なら、僕はそれ作る~!!」
バンザイして言ってくれたマルケス君の頭を撫でる。
「あ!!ありがとうございます。大小のボウル三個づつと泡立て器と漉し器、子供達にも同じく一揃えづつ、お願い出来ますか?」
「はいっ!!」
私が説明している間に、材料を用意してくれた若い料理人さんにお礼とお願いをする。
顔を真っ赤に染めて立ち去った彼を見て、「でもでもやっぱり肉が良い」と二人で言いあっていたアルゴス君とルッツォさんが静かになる。そして私に真剣な表情をした三人が詰め寄る。
「ママ!!俺達の傍にずーっとずーっと居て!!」
「ママ、僕たちがおっきくなるまで待っててね?僕たちとケッコンしようね?」
「ミーナ!!ストーカーに気をつけろっ!!城内だろうが城下だろうが、絶対に一人で歩くんじゃねーぞ!?」
「はぁ?」
私の両手を包み込むように握り、忠告して下さるルッツォさんの言葉が理解出来ずに生返事をしてしまう。
「あ!!ルーにぃ!!ママの手離せよ!!」
「自覚無しかよ。アルゴス!!マルケス!!ママを守れる男になれよ!!」
「「おーっ!!」」
なにやら盛り上がる子供達とルッツォさんの姿に、唐突に始祖様が頭に浮かぶ。ルッツォさんと始祖様は容姿はまったく似ていないのだが、言動や子供達への対応が似ている気がする。
「始祖様?」
ぽろりと零れた言葉に、私の後ろでメモをとっていたディーバさんが頷いた。
「はい。ルッツォは王族ですから、始祖様にも育てられました。ちなみに、儀式などは行なっておりませんが、私たちの兄弟分で、陛下の兄にあたります」
「お兄さん?」
「はい。ミーナ様もご存知の通り、獣人は王族として城へ入ります。入城した時期十年を一区切りとして、その間に居た獣人を兄弟分と。血の繋がりはありませんが、種族が同じであれば兄弟分ではなく、兄弟とみなされます」
ディーバさんの説明に、合点がいった私も思わず大きく頷いた。
「だから、アルゴス君とマルケス君は兄弟なんですね」
「マーマ~、ディーバと仲良し止めて、早く教えてくれよぅ。俺、くっちー食べたい~」
ディーバさんと脱線してしまった私に痺れをきらしたのか、ツンツンとスカートを引っ張るアルゴス君とマルケス君。
そうだ。限られた時間で子供達のリクエストを叶えなければいけない。私には厨房で立ち話をしている暇は無い。
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「「うん」」
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「エライッ!!フルーツおまけしてやるっ!!」
沸き起こる子供達への野太い声援に、ビクリと体が震えてしまったが、アルゴス君とマルケス君はなぜか得意げだった。
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