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森の賢者 6
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始祖様へナイスな切り返しをしてくれたアルゴス君はフンフンと鼻息を荒くしたまま、何故かその膝の上に座っている。ならばとマルケス君をお膝だっこした私に、アルゴス君は「狡い狡い」と大騒ぎする。対するマルケス君は言い返すこともなく、にこにこと微笑んでいる。
「アルゴス君、始祖様のお膝だっこは狡くないの?」
「俺は良いの!!」
ジャイアンだ。ジャイアンが居る。
自分が幼い頃に見たアニメのキャラを思い出していると、マルケス君がアルゴス君ににっこり微笑んだままに言う。
「僕はじーじのお膝だっこ、良いな~って言わないからアルゴス座ってて」
「う~っ!!だって!!俺もママのお膝~!!」
どんなに騒がれても、無言のままにニコニコと笑顔を絶やさないマルケス君に降参したのはアルゴス君。
マルケス君って、意外と芯があるんだなぁ。
納得出来ないのかしたくないのか、「うーうー」と唸り続けるアルゴス君に問い掛ける。
「どうして、竜の親子を見て、ママが欲しいな~って思ったの?」
「今までは遊んでくれたのにリズは俺達に来るな~ってやるんだ!!」
「僕達にはシャーッてやるの。なのに、サーシャにはすご~く優しいの」
多くの獣達がそうであるように、竜も出産直後は子供を守る為に主であっても他の存在を寄せ付けないらしい。
しかし、今まで遊んでくれていた竜が何故自分達を威嚇するのか理解出来ない子供達は不満を募らせていたのだろう。
「ディーバになんでって聞いたら、リズはママになったからだって」
「ママになったリズは子供のサーシャが大切だから、僕達だって判っててもシャーッてするんだって。危ない事から、ママは子供を守るって聞いたの」
この子達は竜の親子の絆から、自分達へ差し延べられる無償の愛をくれる存在を欲したのだろうか。王様は「獣人は女の腹から産まれない」と言っていた。この子達はどんなに無償の愛を欲しても、その対象が居ないのだ。
だから……。
急に切なくなって、膝の上のマルケス君をキュッと抱きしめる。
「ママって、どんな人かなぁ~ってアルゴスと話してたの。どうすれば僕達にママが出来るかな~って」
「どーしよっかなーってた時に、じーじにわかんない事があったら聞きに来いって言われたの思い出したんだ!!」
「な~、じーじ」と相槌を求めるアルゴス君の頭に顎を乗せながら始祖様が口を開いた。
「家に飛び込んで来て開口一番に、俺達のママはどうすれば手に入るんだ~って言われちゃ、追い返しようがねぇだろ?」
「……確かに」
苦笑……というよりは脱力して始祖様が口にし、王様が答えるが、その表情は限りなく渋い。
アルゴス君は自分への言葉でなかった為か、ご機嫌斜めなようだ。むっとしたまま、始祖様の膝の上でぴょこぴょこと跳びはねている。
うわ~。始祖様、太腿痛そ~。
でも、アルゴス君、可愛い~!!
「それでね、じーじに聞いたの。ディーバにとても危ないからダメだよって習った禁断の儀式をしたら、僕達にもママが出来る?って」
「お答えになられたんですね?」
「そりゃ……」
口を開いた始祖様を遮るようにベルが鳴り、どこからか侍女さんの声で「食事の用意が調いました」と言われ、皆で移動することになった。
私の手をとっていたアルゴス君とマルケス君を見た王様が口を開く。
「アルゴス、マルケス。お前達は先に行きなさい」
「え~!?ママと行く!!」
「ママを案内するよ?一緒に行こ?」
「ダメだ。昨日、寄り道して私達を待たせたのを忘れたのか?」
「「うぅ~!!」」
盛大にブーイングしながらアルゴス君とマルケス君はディーバさんに手を引かれていった。強引とも言えるそれに子供達には聞かれたくない話があるのだろうと察する。
道すがら始祖様に聞かれる。
「ミーナちゃんは、あいつらのママになる気はあんの?ないの?」
「我々もミーナの意志を確認したい」
「私は……」
頭を殴られたかのような衝撃にはっきりと答える事が出来なかった。
「俺には、ミーナちゃんはあいつらのママにしかみえねーけどな」
始祖様の優しい声が、何故か胸に痛かった。
「アルゴス君、始祖様のお膝だっこは狡くないの?」
「俺は良いの!!」
ジャイアンだ。ジャイアンが居る。
自分が幼い頃に見たアニメのキャラを思い出していると、マルケス君がアルゴス君ににっこり微笑んだままに言う。
「僕はじーじのお膝だっこ、良いな~って言わないからアルゴス座ってて」
「う~っ!!だって!!俺もママのお膝~!!」
どんなに騒がれても、無言のままにニコニコと笑顔を絶やさないマルケス君に降参したのはアルゴス君。
マルケス君って、意外と芯があるんだなぁ。
納得出来ないのかしたくないのか、「うーうー」と唸り続けるアルゴス君に問い掛ける。
「どうして、竜の親子を見て、ママが欲しいな~って思ったの?」
「今までは遊んでくれたのにリズは俺達に来るな~ってやるんだ!!」
「僕達にはシャーッてやるの。なのに、サーシャにはすご~く優しいの」
多くの獣達がそうであるように、竜も出産直後は子供を守る為に主であっても他の存在を寄せ付けないらしい。
しかし、今まで遊んでくれていた竜が何故自分達を威嚇するのか理解出来ない子供達は不満を募らせていたのだろう。
「ディーバになんでって聞いたら、リズはママになったからだって」
「ママになったリズは子供のサーシャが大切だから、僕達だって判っててもシャーッてするんだって。危ない事から、ママは子供を守るって聞いたの」
この子達は竜の親子の絆から、自分達へ差し延べられる無償の愛をくれる存在を欲したのだろうか。王様は「獣人は女の腹から産まれない」と言っていた。この子達はどんなに無償の愛を欲しても、その対象が居ないのだ。
だから……。
急に切なくなって、膝の上のマルケス君をキュッと抱きしめる。
「ママって、どんな人かなぁ~ってアルゴスと話してたの。どうすれば僕達にママが出来るかな~って」
「どーしよっかなーってた時に、じーじにわかんない事があったら聞きに来いって言われたの思い出したんだ!!」
「な~、じーじ」と相槌を求めるアルゴス君の頭に顎を乗せながら始祖様が口を開いた。
「家に飛び込んで来て開口一番に、俺達のママはどうすれば手に入るんだ~って言われちゃ、追い返しようがねぇだろ?」
「……確かに」
苦笑……というよりは脱力して始祖様が口にし、王様が答えるが、その表情は限りなく渋い。
アルゴス君は自分への言葉でなかった為か、ご機嫌斜めなようだ。むっとしたまま、始祖様の膝の上でぴょこぴょこと跳びはねている。
うわ~。始祖様、太腿痛そ~。
でも、アルゴス君、可愛い~!!
「それでね、じーじに聞いたの。ディーバにとても危ないからダメだよって習った禁断の儀式をしたら、僕達にもママが出来る?って」
「お答えになられたんですね?」
「そりゃ……」
口を開いた始祖様を遮るようにベルが鳴り、どこからか侍女さんの声で「食事の用意が調いました」と言われ、皆で移動することになった。
私の手をとっていたアルゴス君とマルケス君を見た王様が口を開く。
「アルゴス、マルケス。お前達は先に行きなさい」
「え~!?ママと行く!!」
「ママを案内するよ?一緒に行こ?」
「ダメだ。昨日、寄り道して私達を待たせたのを忘れたのか?」
「「うぅ~!!」」
盛大にブーイングしながらアルゴス君とマルケス君はディーバさんに手を引かれていった。強引とも言えるそれに子供達には聞かれたくない話があるのだろうと察する。
道すがら始祖様に聞かれる。
「ミーナちゃんは、あいつらのママになる気はあんの?ないの?」
「我々もミーナの意志を確認したい」
「私は……」
頭を殴られたかのような衝撃にはっきりと答える事が出来なかった。
「俺には、ミーナちゃんはあいつらのママにしかみえねーけどな」
始祖様の優しい声が、何故か胸に痛かった。
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