11 / 269
森の賢者 4
しおりを挟む
「それでね、お願いを二回続けて言って、二回とも良いよって言われないとダメなの。そうしないと帰れないの」
「聞いて聞いて」とばかりにマルケス君が言う。おそらく彼は、王様の言った「説明しなさい」を守ろうとしているのだろう。
「俺達にはママが二回聞いてくれただろ?」
アルゴス君も言うが、彼の場合はどちらかというと、「俺も居るぞ~」とアピールしたいだけのような気がする。
「一回だけではダメなんですか?」
「「ダメ~」」
始祖様に聞いた私に、彼が答えてくれるより早く二人が言う。言った後に「そうだよね?」とばかりに始祖様を見つめる姿はものすごく可愛い。
可愛い過ぎて奇声を上げたらどうしてくれるの!!
て、あれ!?
これ、結構、本気で子供達、ピンチだったんじゃない!?
あんな時間帯に、酔っ払って思考回路がバカになった人間の多い時間帯に、わざわざ二回も聞き返した上に動物にチューするなんて、出来る!?
良くて何も聞かずにお持ち帰り。
悪いと、なんらかの暴行を受けていた可能性が……。
思い至ったそれに、一人背筋を寒くした。
「「ママ?」」
動きを止めた私に不安げに呼び掛けてくる子供達へ「ふふ」と曖昧に笑って見せると、「へへ~♪」と笑い返し、誤魔化されてくれたようだ。
「初代の奴がモテない奴だったから、ノリと勢いだけで返事されて、相手が正気づいて罵られたら困るって事じゃねーの?」
始祖様は「だからモテね~んだよ」と身も蓋も無い言葉で毒づく。
つまり、こちらに渡る事への了承を二度貰わなければ無効となるわけだ。
確かに一度だけでは気の迷いという可能性も捨て切れないだろう。情熱的に愛を語られて熱にうかされた状態なら一度聞かれたくらいなら誰でも簡単に返事をしてしまいそうだ。
術者が世界を渡り連れて来た相手に「気持ちが冷めたから帰る」と言われて果たして帰す事が可能なのか、いや、不可能だからこその二回の了承を得る必要があるのか……。
「なぁなぁ、ミーナちゃんは、ちび達になんて言ったの?」
始祖様に問われた私は、考えを中断して答える。
「家族になってくれる?だったかと……」
「俺達、ちゃんと覚えてるぞ!!ママは最初に、ねぇ、私の家族になってくれる?って言ったんだ!!なっ?マルケス!!」
「うん!!そうだよ!!ママは二回目に、私と家族になってくれるの?って聞いてくれたの!!」
あやふやだった私の記憶を嬉しそうに得意そうに二人が補足してくれる。そんなにはっきりと記憶出来るほどに嬉しかったのかと思うと温かい感情と共に照れ臭さも沸き上がる。
「へぇ~。それ、俺にも言ってくんない?」
感動に浸る私にニヤニヤしながら始祖様が言う。
「俺達のママだって言ってんだろっ!?もう、じーじは帰れ!!」
「そうだよ~!!ママは言っちゃダメだよ!?」
両手でテーブルをバンバン叩きながら始祖様を威嚇するアルゴス君と、「絶対言っちゃダメだからね」と言外に目で私に訴えてくるマルケス君。
も~ぅ、二人とも!!可愛い~!!可愛い~!!可愛いっ!!可愛い過ぎる~っ!!
「待て待て。ちび達はどうやって答えたんだ?喋れなかったんだろ?」
「一回目は鳴いた!!」
「はーい!!って言いたかったけど、お話出来なかったから、いっぱい鳴いたの。それで、二回目はチカイのクチヅケをしたの」
いなしながら二人に質問する始祖様に、威嚇していた事も忘れたようにケロッとして答えるアルゴス君に続き、そこまで切り替えが早くないのか上目つかいで始祖様を見遣りながら答えるマルケス君。
「か~っ!!良いな~っ!!ミーナちゃんみてーな綺麗なお姉ちゃんとチューなんて羨ましすぎんだろ~!!」
バシバシと膝を叩きながら喜ぶ始祖様を、顔を真っ赤に染めた王様が諌める。
「待てっ!!接吻は神聖な物であって、軽々しく成される物では……」
「バッカ。おめー、召喚の儀式のちゅーは十分神聖だろーが!!つか、なに照れてんだよ。ガ~キ」
王様の顔はまるで飲酒後の私のように見事に真っ赤っ赤だ。
王様、意外と純情なんだな~。
「ん~で、ちびっ子!!なんでママがそんなに欲しかったんだ?もうママが居るんだから話せんだろ?」
王様をからかう事に飽きたのか、からかう事が気の毒な程の赤面に武士の情けをかけたのか、始祖様は子供達に話しかける。私は後者とみた。
「聞いて聞いて」とばかりにマルケス君が言う。おそらく彼は、王様の言った「説明しなさい」を守ろうとしているのだろう。
「俺達にはママが二回聞いてくれただろ?」
アルゴス君も言うが、彼の場合はどちらかというと、「俺も居るぞ~」とアピールしたいだけのような気がする。
「一回だけではダメなんですか?」
「「ダメ~」」
始祖様に聞いた私に、彼が答えてくれるより早く二人が言う。言った後に「そうだよね?」とばかりに始祖様を見つめる姿はものすごく可愛い。
可愛い過ぎて奇声を上げたらどうしてくれるの!!
て、あれ!?
これ、結構、本気で子供達、ピンチだったんじゃない!?
あんな時間帯に、酔っ払って思考回路がバカになった人間の多い時間帯に、わざわざ二回も聞き返した上に動物にチューするなんて、出来る!?
良くて何も聞かずにお持ち帰り。
悪いと、なんらかの暴行を受けていた可能性が……。
思い至ったそれに、一人背筋を寒くした。
「「ママ?」」
動きを止めた私に不安げに呼び掛けてくる子供達へ「ふふ」と曖昧に笑って見せると、「へへ~♪」と笑い返し、誤魔化されてくれたようだ。
「初代の奴がモテない奴だったから、ノリと勢いだけで返事されて、相手が正気づいて罵られたら困るって事じゃねーの?」
始祖様は「だからモテね~んだよ」と身も蓋も無い言葉で毒づく。
つまり、こちらに渡る事への了承を二度貰わなければ無効となるわけだ。
確かに一度だけでは気の迷いという可能性も捨て切れないだろう。情熱的に愛を語られて熱にうかされた状態なら一度聞かれたくらいなら誰でも簡単に返事をしてしまいそうだ。
術者が世界を渡り連れて来た相手に「気持ちが冷めたから帰る」と言われて果たして帰す事が可能なのか、いや、不可能だからこその二回の了承を得る必要があるのか……。
「なぁなぁ、ミーナちゃんは、ちび達になんて言ったの?」
始祖様に問われた私は、考えを中断して答える。
「家族になってくれる?だったかと……」
「俺達、ちゃんと覚えてるぞ!!ママは最初に、ねぇ、私の家族になってくれる?って言ったんだ!!なっ?マルケス!!」
「うん!!そうだよ!!ママは二回目に、私と家族になってくれるの?って聞いてくれたの!!」
あやふやだった私の記憶を嬉しそうに得意そうに二人が補足してくれる。そんなにはっきりと記憶出来るほどに嬉しかったのかと思うと温かい感情と共に照れ臭さも沸き上がる。
「へぇ~。それ、俺にも言ってくんない?」
感動に浸る私にニヤニヤしながら始祖様が言う。
「俺達のママだって言ってんだろっ!?もう、じーじは帰れ!!」
「そうだよ~!!ママは言っちゃダメだよ!?」
両手でテーブルをバンバン叩きながら始祖様を威嚇するアルゴス君と、「絶対言っちゃダメだからね」と言外に目で私に訴えてくるマルケス君。
も~ぅ、二人とも!!可愛い~!!可愛い~!!可愛いっ!!可愛い過ぎる~っ!!
「待て待て。ちび達はどうやって答えたんだ?喋れなかったんだろ?」
「一回目は鳴いた!!」
「はーい!!って言いたかったけど、お話出来なかったから、いっぱい鳴いたの。それで、二回目はチカイのクチヅケをしたの」
いなしながら二人に質問する始祖様に、威嚇していた事も忘れたようにケロッとして答えるアルゴス君に続き、そこまで切り替えが早くないのか上目つかいで始祖様を見遣りながら答えるマルケス君。
「か~っ!!良いな~っ!!ミーナちゃんみてーな綺麗なお姉ちゃんとチューなんて羨ましすぎんだろ~!!」
バシバシと膝を叩きながら喜ぶ始祖様を、顔を真っ赤に染めた王様が諌める。
「待てっ!!接吻は神聖な物であって、軽々しく成される物では……」
「バッカ。おめー、召喚の儀式のちゅーは十分神聖だろーが!!つか、なに照れてんだよ。ガ~キ」
王様の顔はまるで飲酒後の私のように見事に真っ赤っ赤だ。
王様、意外と純情なんだな~。
「ん~で、ちびっ子!!なんでママがそんなに欲しかったんだ?もうママが居るんだから話せんだろ?」
王様をからかう事に飽きたのか、からかう事が気の毒な程の赤面に武士の情けをかけたのか、始祖様は子供達に話しかける。私は後者とみた。
10
お気に入りに追加
435
あなたにおすすめの小説
私のお父様とパパ様
棗
ファンタジー
非常に過保護で愛情深い二人の父親から愛される娘メアリー。
婚約者の皇太子と毎月あるお茶会で顔を合わせるも、彼の隣には幼馴染の女性がいて。
大好きなお父様とパパ様がいれば、皇太子との婚約は白紙になっても何も問題はない。
※箱入り娘な主人公と娘溺愛過保護な父親コンビのとある日のお話。
追記(2021/10/7)
お茶会の後を追加します。
更に追記(2022/3/9)
連載として再開します。
夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。
【完結】父が再婚。義母には連れ子がいて一つ下の妹になるそうですが……ちょうだい癖のある義妹に寮生活は無理なのでは?
つくも茄子
ファンタジー
父が再婚をしました。お相手は男爵夫人。
平民の我が家でいいのですか?
疑問に思うものの、よくよく聞けば、相手も再婚で、娘が一人いるとのこと。
義妹はそれは美しい少女でした。義母に似たのでしょう。父も実娘をそっちのけで義妹にメロメロです。ですが、この新しい義妹には悪癖があるようで、人の物を欲しがるのです。「お義姉様、ちょうだい!」が口癖。あまりに煩いので快く渡しています。何故かって?もうすぐ、学園での寮生活に入るからです。少しの間だけ我慢すれば済むこと。
学園では煩い家族がいない分、のびのびと過ごせていたのですが、義妹が入学してきました。
必ずしも入学しなければならない、というわけではありません。
勉強嫌いの義妹。
この学園は成績順だということを知らないのでは?思った通り、最下位クラスにいってしまった義妹。
両親に駄々をこねているようです。
私のところにも手紙を送ってくるのですから、相当です。
しかも、寮やクラスで揉め事を起こしては顰蹙を買っています。入学早々に学園中の女子を敵にまわしたのです!やりたい放題の義妹に、とうとう、ある処置を施され・・・。
なろう、カクヨム、にも公開中。
私は逃げます
恵葉
恋愛
ブラック企業で社畜なんてやっていたら、23歳で血反吐を吐いて、死んじゃった…と思ったら、異世界へ転生してしまったOLです。
そしてこれまたありがちな、貴族令嬢として転生してしまったのですが、運命から…ではなく、文字通り物理的に逃げます。
貴族のあれやこれやなんて、構っていられません!
今度こそ好きなように生きます!
騎士団長のお抱え薬師
衣更月
ファンタジー
辺境の町ハノンで暮らすイヴは、四大元素の火、風、水、土の属性から弾かれたハズレ属性、聖属性持ちだ。
聖属性持ちは意外と多く、ハズレ属性と言われるだけあって飽和状態。聖属性持ちの女性は結婚に逃げがちだが、イヴの年齢では結婚はできない。家業があれば良かったのだが、平民で天涯孤独となった身の上である。
後ろ盾は一切なく、自分の身は自分で守らなければならない。
なのに、求人依頼に聖属性は殆ど出ない。
そんな折、獣人の国が聖属性を募集していると話を聞き、出国を決意する。
場所は隣国。
しかもハノンの隣。
迎えに来たのは見上げるほど背の高い美丈夫で、なぜかイヴに威圧的な騎士団長だった。
大きな事件は起きないし、意外と獣人は優しい。なのに、団長だけは怖い。
イヴの団長克服の日々が始まる―ー―。
絶対に間違えないから
mahiro
恋愛
あれは事故だった。
けれど、その場には彼女と仲の悪かった私がおり、日頃の行いの悪さのせいで彼女を階段から突き落とした犯人は私だと誰もが思ったーーー私の初恋であった貴方さえも。
だから、貴方は彼女を失うことになった私を許さず、私を死へ追いやった………はずだった。
何故か私はあのときの記憶を持ったまま6歳の頃の私に戻ってきたのだ。
どうして戻ってこれたのか分からないが、このチャンスを逃すわけにはいかない。
私はもう彼らとは出会わず、日頃の行いの悪さを見直し、平穏な生活を目指す!そう決めたはずなのに...……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる