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第二九話 思い出を形に残して
第二九話 一六
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「そういえば、今日、慈乃の写真を撮るのは初めてだね」
「そうですね。ウタくんの写真は先ほど撮りましたし、私が最後のひとりといったところでしょうか」
慈乃とウタセの会話にスイセンが加わる。
「良かったらぼくがふたりのこと撮りましょうか。ぼく達の写真はたくさん撮ったみたいですけど、シノさんとウタくんのはそんなにないでしょう?」
「え、いいの? シノ、一緒に撮ろうよ」
無邪気な笑顔を浮かべるウタセはまるで子どものようで、慈乃は微笑みながら軽やかに頷いた。
スイセンがウタセから受け取ったカメラを構えた。
「はい、撮りますよー」
「はーい」
「お願いします」
写真を撮ったスイセンはカメラをウタセに返した。慈乃は撮ってもらった画像をウタセと隣り合って確認した。
「うん、良く撮れてるね」
手元の画面には、満面の笑みのウタセと隣で幸せそうに微笑む慈乃の姿があった。ウタセの言う通り、よく撮れていると思う。
向かいでスイセンがにっこり笑った。
「シノさんもすっかりなじみましたよね。ウタくんと並ぶとまるで兄妹みたいです」
「そうですか?」
「嬉しいなぁ」
学び家にやってきてまだ一年と経たないが、そのように評されるのはくすぐったい気持ちになり、慈乃ははにかんだ。同時に、一年前からは想像もつかない現在の自身の在りように慈乃は感慨深くなった。
(本当に、信じられないくらい変わったわ)
ついさっき見た写真の中の少女を思い浮かべる。彼女に向けて慈乃が心の内で微笑みを返せば、少女の笑みが深まったような気がした。
「そうですね。ウタくんの写真は先ほど撮りましたし、私が最後のひとりといったところでしょうか」
慈乃とウタセの会話にスイセンが加わる。
「良かったらぼくがふたりのこと撮りましょうか。ぼく達の写真はたくさん撮ったみたいですけど、シノさんとウタくんのはそんなにないでしょう?」
「え、いいの? シノ、一緒に撮ろうよ」
無邪気な笑顔を浮かべるウタセはまるで子どものようで、慈乃は微笑みながら軽やかに頷いた。
スイセンがウタセから受け取ったカメラを構えた。
「はい、撮りますよー」
「はーい」
「お願いします」
写真を撮ったスイセンはカメラをウタセに返した。慈乃は撮ってもらった画像をウタセと隣り合って確認した。
「うん、良く撮れてるね」
手元の画面には、満面の笑みのウタセと隣で幸せそうに微笑む慈乃の姿があった。ウタセの言う通り、よく撮れていると思う。
向かいでスイセンがにっこり笑った。
「シノさんもすっかりなじみましたよね。ウタくんと並ぶとまるで兄妹みたいです」
「そうですか?」
「嬉しいなぁ」
学び家にやってきてまだ一年と経たないが、そのように評されるのはくすぐったい気持ちになり、慈乃ははにかんだ。同時に、一年前からは想像もつかない現在の自身の在りように慈乃は感慨深くなった。
(本当に、信じられないくらい変わったわ)
ついさっき見た写真の中の少女を思い浮かべる。彼女に向けて慈乃が心の内で微笑みを返せば、少女の笑みが深まったような気がした。
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