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第二九話 思い出を形に残して

第二九話 五

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 なんとはなしに廊下を歩いていると、玄関から正門前がうかがえた。そこにはこれから街へ出かけようとするヒイラギ、サーヤ、シキブと彼らを見送ろうと並び立つミトドリとニアの姿があった。
「シノ、行ってみない?」
「そうですね」
 出かけてしまう前にと慈乃は急いで彼らのもとへ向かった。
晩秋の残り香もさらうように乾いた冷たい風が頬を撫でる。薄青の空には雲一つない。季節はすっかり冬めいていた。
「日が短くなったから気を付けるのだよ」
「わかっていますぅ」
 ミトドリの注意にシキブをはじめとした三人が頷く。それを確認するとニアがぱっと笑顔になり、大きく手を振った。隣でミトドリも手を振る。
「いってらっしゃい!」
「いってきまーす!」
 学び家らしいいい光景だと思った慈乃は、カメラを構えると彼らの姿を写真に収めた。一枚は笑顔で送り出すミトドリとニア、もう一枚には楽しそうに笑うヒイラギ、サーヤ、シキブを写し取る。
「わあ! いいね、この写真」
 ウタセと撮れた画像を見直していると、目を瞬かせたニアが振り返った。街へ行こうとしていたヒイラギ達も足を止め、ニアと似たような反応を示した。
「何してんの?」
 五人の中で唯一事情を知っているミトドリだけが愉しげに微笑んでいる。慈乃が経緯を説明すると、ニア達はようやく納得した顔を見せた。
「なるほど。確かに面白そう」
「さっき撮ってくれた写真、ボクも見たいな」
「あ、私もですぅ」
「自分も、見たい」
 慈乃が画像を表示させた画面を皆に見えるように差し出す。ヒイラギ達三人が写った写真を見て、ニアが感心した声をあげた。
「へー、よく撮れてるじゃない」
 ニアの隣でミトドリがうんうんと頷く。
「今まではたいてい行事の時しか写真を撮らなかったけれど、たまには日常を撮りたいというシノの提案は功を奏したようだね」
「とはいえまだ始めたばかりです。今日は全員を撮れるように頑張ります」
 決意を新たに慈乃がカメラを持ち直すと、その場の皆は笑みをこぼした。
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