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第二五話 花開くリンドウ

第二五話 二三

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確かに学び家に来た当初はこんなところ嫌いだと思った。
年下の子ども達は勝手気ままでうるさくて、職員や同い年のスイセンは鬱陶しいくらいに話しかけてくるし、少し年上の者とも親しくする気がなかった。
 しかし、最近はそこまで忌み嫌うことがなくなった。自分でもよくわからないが、感じ方が変わったのだ。
 ふとした瞬間に遠く響く子ども達の笑い声に安堵し、挨拶や会話を試みようとする者達を無下に扱うことに気がとがめた。
ささくれだっていた心がいつの間にか癒されかけているような気がした。けれども、その感覚が落ち着かなくて、むしゃくしゃしていた。
加えて、今日の帰り道の慈乃の言動にも言いようのない感情が押し寄せた。心配していた、帰ってきてくれて安心下したと彼女は淡く微笑んだ。まるで胸の奥を撫でられるような奇妙な心地がしたが不快なものではなかった。反面、いっそ怒ってくれたほうが良かったともリンドウは思った。
整理のつかない感情の嵐に、リンドウは翻弄されていた。
結果、導き出されたのが「わからない」の一言だった。
疎まれ、邪険に扱われることには慣れていたが、親しくなりたいと歩み寄られることには不慣れでどうしていいのかやはりわからなかった。
自己肯定感が低いリンドウには学び家の皆の気持ちが理解できない。自分でも自分が嫌いだと思っているし、何をとっても中途半端で魅力を感じられない。
「それなのに、なんでここのひと達は……」
 訥々と語っていたリンドウの瞳が戸惑いに揺れる。ウタセは視線を外さずに、小さく微笑んだ。
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