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第二四話 再び紡ぐ物語
第二四話 三
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廊下で立ち話をしているのは目立つらしい。興味を持ったスイセンがテオとウルフィニを伴って近づいてきた。
「楽しそうですね。何を話していたんですか?」
「ぼくもまぜて」
「まぜて」
「リンのことで話してたんだ。彼、あんまり馴染んでないでしょ? やっぱり心配だから、どうしたらいいのかなって」
「ですよね。リンドウくん、なかなか仲良くなってくれなくて。あ、でも、まだ諦めてないですよ……!」
スイセンは強い光を宿した黄色の瞳で慈乃とウタセを見上げた。
「ぼくがやってることが参考になるかはわかりませんが……」
「スイくんがやっていること、ですか?」
「何かしてるの?」
身を乗り出したふたりにスイセンはやや身を退きながら「は、はい……」と頷いた。
「毎日話しかけるようにしてるんです。最初は無視されてましたけど、最近はたまに反応をしてくれるようになりました」
「えー。それだったら僕もやってるのにー」
どうやらウタセは未だに無視され続けているらしい。唇をとがらせて拗ねていた。
スイセンは苦笑いを浮かべた。
「まあ、年齢とか話しやすさとか違いはありますから」
ウタセははっとした顔をしてスイセンに詰め寄った。
「僕、なめられてるのかな……⁉」
「ど、どうでしょう? ウタくんがどうこうといった話は聞いたことありませんが。……あ」
「『あ』って何⁉」
スイセンはちらりと慈乃に視線をやると、言いにくそうに口を開いた。
「えっと……ウタくんがリンドウくんを叱った日があったじゃないですか」
それは、慈乃がリンドウに理不尽な言葉を投げつけられたときのことだった。慈乃はあの後、ウタセとリンドウの間で何があったかを知らない。ただウタセが遅れて慈乃に追いついて、扉の隙間にメモ用紙を差し込んだことだけが記憶に残っていた。
「そんなことがあったのですか」
「ああ、うん、まあ……」
「ウタお兄ちゃんがめずらしくおこってたんだよ」
「……こわかった」
ウタセが誰かに対して厳しい態度をとるところなど想像できない。慈乃が目をまるくしてウタセを見ると、彼はさっと視線を逸らした。スイセンは話を続けた。
「その後だったかな。リンドウくんの顔色がちょっと悪かったです。ウタくん、相当厳しく言ったんじゃないですか。それで苦手意識を持ったのかも」
「確かにあのときは私情も挟んじゃって……。いけないとはわかってたんだけど、言い過ぎたんだよね……」
それでウタセはばつの悪い顔をしているのだと慈乃はようやく合点がいった。
「だから、なめられてはいないと思いますよ」
「うーん、でも……。やっぱり、あれはよくなかったよね……」
「そうかしら? あたしはむしろすっきりしたわよ」
「楽しそうですね。何を話していたんですか?」
「ぼくもまぜて」
「まぜて」
「リンのことで話してたんだ。彼、あんまり馴染んでないでしょ? やっぱり心配だから、どうしたらいいのかなって」
「ですよね。リンドウくん、なかなか仲良くなってくれなくて。あ、でも、まだ諦めてないですよ……!」
スイセンは強い光を宿した黄色の瞳で慈乃とウタセを見上げた。
「ぼくがやってることが参考になるかはわかりませんが……」
「スイくんがやっていること、ですか?」
「何かしてるの?」
身を乗り出したふたりにスイセンはやや身を退きながら「は、はい……」と頷いた。
「毎日話しかけるようにしてるんです。最初は無視されてましたけど、最近はたまに反応をしてくれるようになりました」
「えー。それだったら僕もやってるのにー」
どうやらウタセは未だに無視され続けているらしい。唇をとがらせて拗ねていた。
スイセンは苦笑いを浮かべた。
「まあ、年齢とか話しやすさとか違いはありますから」
ウタセははっとした顔をしてスイセンに詰め寄った。
「僕、なめられてるのかな……⁉」
「ど、どうでしょう? ウタくんがどうこうといった話は聞いたことありませんが。……あ」
「『あ』って何⁉」
スイセンはちらりと慈乃に視線をやると、言いにくそうに口を開いた。
「えっと……ウタくんがリンドウくんを叱った日があったじゃないですか」
それは、慈乃がリンドウに理不尽な言葉を投げつけられたときのことだった。慈乃はあの後、ウタセとリンドウの間で何があったかを知らない。ただウタセが遅れて慈乃に追いついて、扉の隙間にメモ用紙を差し込んだことだけが記憶に残っていた。
「そんなことがあったのですか」
「ああ、うん、まあ……」
「ウタお兄ちゃんがめずらしくおこってたんだよ」
「……こわかった」
ウタセが誰かに対して厳しい態度をとるところなど想像できない。慈乃が目をまるくしてウタセを見ると、彼はさっと視線を逸らした。スイセンは話を続けた。
「その後だったかな。リンドウくんの顔色がちょっと悪かったです。ウタくん、相当厳しく言ったんじゃないですか。それで苦手意識を持ったのかも」
「確かにあのときは私情も挟んじゃって……。いけないとはわかってたんだけど、言い過ぎたんだよね……」
それでウタセはばつの悪い顔をしているのだと慈乃はようやく合点がいった。
「だから、なめられてはいないと思いますよ」
「うーん、でも……。やっぱり、あれはよくなかったよね……」
「そうかしら? あたしはむしろすっきりしたわよ」
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