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第二〇話 過去と現在の狭間で

第二〇話 五

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 最初に立ち寄ったのはヨルメイとアスキの教室だった。ここではテーマ学習の発表をしているらしい。
 慈乃とウタセがやって来たことにいち早く気づいたアスキが、ヨルメイの手を引き、慈乃達を指さした。
「あ、シノ姉さんにウタ兄さん」
 アスキはヨルメイの横でにこにこと機嫌よさそうに笑っている。
「これがヨルとアスが調べたこと?」
 ウタセが目の前の模造紙を見る。そこには『セイヨウタンポポについて』のタイトルとともに、セイヨウタンポポの生態や花言葉、逸話などが記されていた。どうやらテーマは『花』らしく、隣の模造紙には『チューリップについて』や『サクラについて調べたこと』などのタイトルが飾られていた。
「この前質問に来たと思ったらこのためだったんだね」
 アスキがこくりと頷く。
「せっかくだし発表してもらおうかな」
「はい。アスちゃん、頑張ろうね……!」
 慈乃も彼女達の発表を心待ちにする。ヨルメイとアスキは顔を見合わせると、互いに頷きあった。
「私達が調べたのはセイヨウタンポポについてです。タンポポは春に黄色い花を咲かせ、生長すると白い綿毛をつけます。タンポポの別名は『たん・ぽんぽん』という鼓という楽器の音から鼓草ともいわれます。タンポポにはいろんな種類がありますがセイヨウタンポポは総苞片といわれる部分が反り返っていることが他のタンポポとは違います」
 ヨルメイがひとしきり話し終えると、アスキが口を開いた。
「セイヨウタンポポは食べられます。若い菜っ葉はサラダになり、根っこはお茶になります。そして乾かすとお腹のお薬にもなります。アスは苦くてあんまり好きじゃないけど……」
 ウタセは苦笑いを浮かべていたが、口は挟まずに話の続きを促した。
「花びらを一枚ずつ抜く占いや綿毛を吹いて残った量で占うことがあることから『神のお告げ』『神託』という花言葉がつけられました」
「他にも『誠実』『幸せ』『別離』などの花言葉もあります」
「まとめです。セイヨウタンポポのことを調べてみていろんなことがわかって楽しかったです」
「終わりです」
 ふたりが頭を下げたところで、慈乃とウタセは拍手を送った。
「ヨルちゃんもアスちゃんも、発表上手ですね」
「難しい言葉もあったのによく調べられてるよ。インタビューに答えた甲斐があったね」
 ヨルメイとアスキは照れたように笑った。
 ふたりとの会話を少し楽しんだ後は、名残惜しく思いながらも次の教室へ向かうことにした。
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