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第一九話 迷子の色
第一九話 三
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学舎組を送り出し生活棟に戻る途中でスギナに声を掛けられた。
「朝言ってたけど、この後ウタんとこ寄るか?」
そういえばハーブティーがなんとかと話していた。あやうく忘れかけていたが、スギナに誘われてはっきりと思い出した。
ウタセはというとミトドリとツクシと並んで先の方を歩いてた。
「はい、そうしましょう」
慈乃が答えるとスギナは軽く頷き、そのまま慈乃をじっと見た。
「……あの、何か?」
「……いや、なんでもねえ」
しかし慈乃が問いかけるとスギナは顔を逸らしてしまった。
そのままふたりの間に会話はなく、そろって保健室を訪ねた。
「ウタ。朝言ってたハーブティーなんだけど」
「はいはい、いらっしゃい」
ウタセは笑顔で慈乃とスギナを出迎え、背後の戸棚を漁り始めた。慈乃とスギナが空いた椅子に適当に腰かけて待っていると、ウタセが「お待たせ」と言ってティーバッグを三つずつ差し出した。
中には細かく刻まれた何かが入っている。
「カモミールをベースに陳皮とレモングラスを混ぜてみたんだ。カモミールティーなんて初めて飲むけど美味しかったよ。それによく眠れたんだよね。ふたりにも是非試してみてほしくて」
「ありがとうございます」
「ウタのつくるハーブティーはよく効くから助かる。ありがとう」
ウタセは屈託のない笑みを浮かべた。
「役に立ちそうなら嬉しいな」
そのとき、園庭側の大きな窓がガラガラと開けられた。
「シノちゃん見~っけ。みんなで遊ぼ~」
業務時間内なので、ここで長話しているわけにもいかない。慈乃は「はい、今行きますね」と言い置くと保健室を一礼して出て、玄関へ向かった。
その後ろ姿をスギナが注意深く見ていることに気が付き、ウタセは「どうしたの」と尋ねた。スギナは振り向くと、怪訝そうな顔をした。
「やっぱり気のせいじゃねえよな……」
「え? 気のせいって何が?」
スギナは逡巡した後、重々しく口を開いた。
「シノの髪の色、あと目も。……色が、戻りかけてるんだ」
衝撃の発言にウタセは言葉を失った。背後でツクシが「シノちゃんってばまた迷子になっちゃったのかな~」と沈んだ声音で呟いた。
「朝言ってたけど、この後ウタんとこ寄るか?」
そういえばハーブティーがなんとかと話していた。あやうく忘れかけていたが、スギナに誘われてはっきりと思い出した。
ウタセはというとミトドリとツクシと並んで先の方を歩いてた。
「はい、そうしましょう」
慈乃が答えるとスギナは軽く頷き、そのまま慈乃をじっと見た。
「……あの、何か?」
「……いや、なんでもねえ」
しかし慈乃が問いかけるとスギナは顔を逸らしてしまった。
そのままふたりの間に会話はなく、そろって保健室を訪ねた。
「ウタ。朝言ってたハーブティーなんだけど」
「はいはい、いらっしゃい」
ウタセは笑顔で慈乃とスギナを出迎え、背後の戸棚を漁り始めた。慈乃とスギナが空いた椅子に適当に腰かけて待っていると、ウタセが「お待たせ」と言ってティーバッグを三つずつ差し出した。
中には細かく刻まれた何かが入っている。
「カモミールをベースに陳皮とレモングラスを混ぜてみたんだ。カモミールティーなんて初めて飲むけど美味しかったよ。それによく眠れたんだよね。ふたりにも是非試してみてほしくて」
「ありがとうございます」
「ウタのつくるハーブティーはよく効くから助かる。ありがとう」
ウタセは屈託のない笑みを浮かべた。
「役に立ちそうなら嬉しいな」
そのとき、園庭側の大きな窓がガラガラと開けられた。
「シノちゃん見~っけ。みんなで遊ぼ~」
業務時間内なので、ここで長話しているわけにもいかない。慈乃は「はい、今行きますね」と言い置くと保健室を一礼して出て、玄関へ向かった。
その後ろ姿をスギナが注意深く見ていることに気が付き、ウタセは「どうしたの」と尋ねた。スギナは振り向くと、怪訝そうな顔をした。
「やっぱり気のせいじゃねえよな……」
「え? 気のせいって何が?」
スギナは逡巡した後、重々しく口を開いた。
「シノの髪の色、あと目も。……色が、戻りかけてるんだ」
衝撃の発言にウタセは言葉を失った。背後でツクシが「シノちゃんってばまた迷子になっちゃったのかな~」と沈んだ声音で呟いた。
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