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第一五話 ひと夏の冒険

第一五話 六

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「あっ、シノさんと……えっ⁉」
 アウィルは慈乃の隣で人懐こい笑みを浮かべるフロリアを目にして固まってしまった。
 お花見以降でもしばしば会うことのあるアウィルとは、それなりに親しくなっている。アウィルは慈乃に身を寄せると、小声で問いかけた。
「ちょ、ちょっと。どういうことっすか、シノさん!」
「お忍びで視察だそうです」
「ええ……」
「ねえねえ、ウィル! どこ座っていいの? ここ?」
「と、とりあえずご案内するっす……」
 アウィルは慈乃とフロリアを席へ誘導し、メニュー表を差し出した。しかし、フロリアはそれを受け取らず、即座に注文を口にした。
「シノのおすすめにする!」
 きょとんとするアウィルに、シノは困り笑いで「大人のためのお子様ランチを二つください」と言い直した。
「りょ、了解したっす」
未だ困惑したままのアウィルだったが、慈乃達の注文を受けて持ち場に戻っていった。
すれ違うだけなら慈乃の隣に並ぶのが誰だかはわからないようだが、対面するとアウィルのように女神のフロリアだと気付かれてしまうらしい。よく午前中は騒ぎにならなかったと思いつつ、この後もフロリアと行動するなら注意を払わなければと内心で覚悟を決める慈乃だった。
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