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第一四話 輝く夏の始まりは
第一四話 一〇
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「ねえ、シノ姉さん。暇してるんじゃないの?」
「く、クルルちゃん」
背後から呼び止められて、少し驚いた。振り向いた先のクルルはにやりといたずらっぽい笑みを浮かべていた。
「ね、暇してるわよね?」
「えっと、皆さん順調そうですし、特に私が出る幕はない、ですね……」
「じゃあ、決まりね!」
クルルはぱっと笑顔になると、慈乃の腕を引いた。
「はい、連れてきたわよ」
「救世主! シノ姉手伝って!」
カルリアが手を合わせて、慈乃に頼み込む。ホノとメリルも「おねがい」とカルリアの真似をしている。慈乃は状況を察した。
「私も生地をのばせば良いのですか?」
「そういうことよ」
女子四人では疲れてしまったのだろう。慈乃は苦笑すると生地のばしを手伝った。
慈乃の動きとともに、夏服の襟元からのぞくライムグリーンのネックレスがちらちらと輝きを放つ。
「シノ姉、ネックレスなんてしてたんだ」
今日は風通しの良い襟の開いた麻のワンピースだが、今までは服の下に隠れることが多かったので気づかなかったのだろう。カルリアが目をまるくする横で、クルルが得意げな顔をしていた。
「緑色のネックレスよね。確かクル姉が選んだっていう」
「メリル、このいろすきだよ」
ホノとメリルも会話に加わってくる。
「ええ、いつの間に? クルルが選んだの? シノ姉のために?」
「ちょっとカルリア姉さん。それどういう意味よ」
「だってクルルは気に入ったひとにしか世話を焼かないじゃない? ちょっと前までシノ姉のこと苦手っぽかったから」
「いつの話よ」
クルルは鼻を鳴らすと、慈乃を振り返った。
「そんなのずっと前のことじゃない。ねえ、シノ姉さん」
「ふふ、そうですね」
「く、クルルちゃん」
背後から呼び止められて、少し驚いた。振り向いた先のクルルはにやりといたずらっぽい笑みを浮かべていた。
「ね、暇してるわよね?」
「えっと、皆さん順調そうですし、特に私が出る幕はない、ですね……」
「じゃあ、決まりね!」
クルルはぱっと笑顔になると、慈乃の腕を引いた。
「はい、連れてきたわよ」
「救世主! シノ姉手伝って!」
カルリアが手を合わせて、慈乃に頼み込む。ホノとメリルも「おねがい」とカルリアの真似をしている。慈乃は状況を察した。
「私も生地をのばせば良いのですか?」
「そういうことよ」
女子四人では疲れてしまったのだろう。慈乃は苦笑すると生地のばしを手伝った。
慈乃の動きとともに、夏服の襟元からのぞくライムグリーンのネックレスがちらちらと輝きを放つ。
「シノ姉、ネックレスなんてしてたんだ」
今日は風通しの良い襟の開いた麻のワンピースだが、今までは服の下に隠れることが多かったので気づかなかったのだろう。カルリアが目をまるくする横で、クルルが得意げな顔をしていた。
「緑色のネックレスよね。確かクル姉が選んだっていう」
「メリル、このいろすきだよ」
ホノとメリルも会話に加わってくる。
「ええ、いつの間に? クルルが選んだの? シノ姉のために?」
「ちょっとカルリア姉さん。それどういう意味よ」
「だってクルルは気に入ったひとにしか世話を焼かないじゃない? ちょっと前までシノ姉のこと苦手っぽかったから」
「いつの話よ」
クルルは鼻を鳴らすと、慈乃を振り返った。
「そんなのずっと前のことじゃない。ねえ、シノ姉さん」
「ふふ、そうですね」
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