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第一一話 雨の休日
第一一話 一〇
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「出ました。『現在トップのひとの好きなところを伝えよう』だそうです」
「ってことは、シノの好きなところを言えばいいってことね」
「はい。そうですね、シノ姉さんは優しいです」
ヨルメイは穏やかに微笑んで慈乃を見つめた。
「お話を最後までちゃんと聞いてくれます。そんなシノ姉さんが私は好きです」
上手く言えないけど、と慈乃には聞こえるか聞こえないかの小さな声で落とされた呟きは、しかしヨルメイの隣に着座するトゥナにははっきり聞こえたようだ。彼女の言に相槌を打った。
「ヨルメイちゃんの言いたいことはなんとなくわかるよ。あれだよね、聞き上手にも色々あって、ニア姉やウタ兄とは違うタイプの聞き上手っていう感じでしょ」
「そう、そうです!」
子ども達の間では共有できる感覚なのか、納得顔のソラルも含め、謎の一体感が生まれていた。当人達は実感がないため、慈乃もニアも揃って顔を見合わせるばかりだ。
「まあ、褒められてることには違いないんだし、いいんじゃない?」
「そうで……、仰る通りですね。ヨルちゃん、有難う存じます」
一応非常に丁寧な言葉遣いを意識しながら、慈乃はヨルメイにお礼を言った。ヨルメイははにかみ、頷き返した。
「さてさて、オレの番だね。……えええ……」
トゥナは停止したマスの指示を読んで、げんなりした声をもらした。向かいからソラルが、トゥナの手元を覗き込んだ。
「『次の自分の番まで両腕を上げ続ける』とは、急に罰ゲームっぽくなりましたね」
「地味に辛いやつ~」
渋々といった動作でありながらも、指示にはしっかり従うあたりトゥナの真面目さがにじみ出ているというものだろう。
そんな彼のためにも早く一周を終わらせてあげたいと、慈乃は心持ち急いてさいころを振った。出目は二で、惜しくもゴール直前で止まってしまう。しかも指示のあるマスで『奇数が出たら二〇のマスに戻る』と書かれている。慈乃は指示通り、さいころをもう一度回した。
「……五は奇数、ですね」
「あらー、惜しかったのに」
ニアの声を聞きながら、慈乃はコマを二〇のマスに逆行させる。ちょうどソラルが待機しているところだった。
「ってことは、シノの好きなところを言えばいいってことね」
「はい。そうですね、シノ姉さんは優しいです」
ヨルメイは穏やかに微笑んで慈乃を見つめた。
「お話を最後までちゃんと聞いてくれます。そんなシノ姉さんが私は好きです」
上手く言えないけど、と慈乃には聞こえるか聞こえないかの小さな声で落とされた呟きは、しかしヨルメイの隣に着座するトゥナにははっきり聞こえたようだ。彼女の言に相槌を打った。
「ヨルメイちゃんの言いたいことはなんとなくわかるよ。あれだよね、聞き上手にも色々あって、ニア姉やウタ兄とは違うタイプの聞き上手っていう感じでしょ」
「そう、そうです!」
子ども達の間では共有できる感覚なのか、納得顔のソラルも含め、謎の一体感が生まれていた。当人達は実感がないため、慈乃もニアも揃って顔を見合わせるばかりだ。
「まあ、褒められてることには違いないんだし、いいんじゃない?」
「そうで……、仰る通りですね。ヨルちゃん、有難う存じます」
一応非常に丁寧な言葉遣いを意識しながら、慈乃はヨルメイにお礼を言った。ヨルメイははにかみ、頷き返した。
「さてさて、オレの番だね。……えええ……」
トゥナは停止したマスの指示を読んで、げんなりした声をもらした。向かいからソラルが、トゥナの手元を覗き込んだ。
「『次の自分の番まで両腕を上げ続ける』とは、急に罰ゲームっぽくなりましたね」
「地味に辛いやつ~」
渋々といった動作でありながらも、指示にはしっかり従うあたりトゥナの真面目さがにじみ出ているというものだろう。
そんな彼のためにも早く一周を終わらせてあげたいと、慈乃は心持ち急いてさいころを振った。出目は二で、惜しくもゴール直前で止まってしまう。しかも指示のあるマスで『奇数が出たら二〇のマスに戻る』と書かれている。慈乃は指示通り、さいころをもう一度回した。
「……五は奇数、ですね」
「あらー、惜しかったのに」
ニアの声を聞きながら、慈乃はコマを二〇のマスに逆行させる。ちょうどソラルが待機しているところだった。
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