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第一一話 雨の休日
第一一話 九
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ソラルがさいころを投げると四が出た。
「あ、豆知識のマスですね。……前回はカモミールの話をしたので、今回はアゲラタムにしましょうか」
アゲラタムは今も眠っているタムの司る花だ。慈乃はどんな話が聞けるのかと密かに胸を躍らせた。
「アゲラタムの花名の由来ですが、花が色褪せない、老いないという意味の『アゲラス』という異国語がもとになっているのだとか」
通説に依れば、ソラルの言う異国語とはギリシャ語を指すと思われる。『ア』が否定を表す接頭語で、『ゲラス』が『年をとる』という意味を持ち、これを合わせて『不老』と成す。
慈乃でも既知の内容だったので、ソラルには申し訳ないが正直豆知識に値するかどうか怪しいところだ。皆もやや物足りないと感じているようだった。ソラルはその反応も予期していたのか、さして驚いたり不満そうにしたりするでもなく話を続けた。
「また、このアゲラタムの開花の特徴は花言葉にも影響を与えています。トゥナさんは知っていますか?」
「さあ? 不老不死とか?」
「ではないです」
慈乃やヨルメイもトゥナと似たような反応を示したが、ニアだけはさすがにわかっているようで微笑を湛えながら深く頷くだけだ。
ソラルは一同の顔をぐるりと見回して、これから話すことは豆知識に相当するものだと判断した。その表情はやや得意げだ。
「アゲラタムは花期が長く、花色も褪せないことから『信頼、安楽、幸せを得る、永久の美』といった花言葉を持つんです」
「へー、そうだったんだ」
トゥナは素直に感心した声をあげた。
慈乃もトゥナと同じ気持ちだった。植物図鑑には一通り目を通したが、それも完全に情報が網羅されているわけではない。花言葉の記載された図鑑にはまだ出会っていなかったので、ソラルの話は非常に興味深かった。
ヨルメイにはまだ難しかったのか花言葉の全ては理解できなかったようだが、ニアに嚙み砕いて教えてもらうことで少しはわかったらしい。「いい意味の花言葉なんですね」と真面目な顔をして言った。
「と、俺の話はこのくらいです。次はニアさんですね」
「ほいほいっと。……五ね。なんか書いてある」
慈乃を追いかけるように、ニアのコマはその一つ手前で止まった。そのマスには『そろそろ飽きてきたな~』とツクシの一言が書かれていた。
「占いの次は独り言? 自由な子ねー、ツクシは」
ニアはからりと笑い飛ばして、ヨルメイに先を促した。
「あ、豆知識のマスですね。……前回はカモミールの話をしたので、今回はアゲラタムにしましょうか」
アゲラタムは今も眠っているタムの司る花だ。慈乃はどんな話が聞けるのかと密かに胸を躍らせた。
「アゲラタムの花名の由来ですが、花が色褪せない、老いないという意味の『アゲラス』という異国語がもとになっているのだとか」
通説に依れば、ソラルの言う異国語とはギリシャ語を指すと思われる。『ア』が否定を表す接頭語で、『ゲラス』が『年をとる』という意味を持ち、これを合わせて『不老』と成す。
慈乃でも既知の内容だったので、ソラルには申し訳ないが正直豆知識に値するかどうか怪しいところだ。皆もやや物足りないと感じているようだった。ソラルはその反応も予期していたのか、さして驚いたり不満そうにしたりするでもなく話を続けた。
「また、このアゲラタムの開花の特徴は花言葉にも影響を与えています。トゥナさんは知っていますか?」
「さあ? 不老不死とか?」
「ではないです」
慈乃やヨルメイもトゥナと似たような反応を示したが、ニアだけはさすがにわかっているようで微笑を湛えながら深く頷くだけだ。
ソラルは一同の顔をぐるりと見回して、これから話すことは豆知識に相当するものだと判断した。その表情はやや得意げだ。
「アゲラタムは花期が長く、花色も褪せないことから『信頼、安楽、幸せを得る、永久の美』といった花言葉を持つんです」
「へー、そうだったんだ」
トゥナは素直に感心した声をあげた。
慈乃もトゥナと同じ気持ちだった。植物図鑑には一通り目を通したが、それも完全に情報が網羅されているわけではない。花言葉の記載された図鑑にはまだ出会っていなかったので、ソラルの話は非常に興味深かった。
ヨルメイにはまだ難しかったのか花言葉の全ては理解できなかったようだが、ニアに嚙み砕いて教えてもらうことで少しはわかったらしい。「いい意味の花言葉なんですね」と真面目な顔をして言った。
「と、俺の話はこのくらいです。次はニアさんですね」
「ほいほいっと。……五ね。なんか書いてある」
慈乃を追いかけるように、ニアのコマはその一つ手前で止まった。そのマスには『そろそろ飽きてきたな~』とツクシの一言が書かれていた。
「占いの次は独り言? 自由な子ねー、ツクシは」
ニアはからりと笑い飛ばして、ヨルメイに先を促した。
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