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第四話 休日の触れ合い
第四話 七
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続いてウタセがさいころを振ると四が出た。行き着いたマスには『ものまね』と記してある。
「せっかくならこの中の誰かにしようか」
「いいけど、勇気あるな」
ガザが若干身を退いた。
「じゃあ、ソラのものまねにするね」
「……どっちが罰ゲームでしょうか」
ウタセのまっすぐな視線を避けるように、ソラルは顔を逸らした。
「はい、いきます。『フィオ、楽しく食べるのは構いませんが、もう少し落ち着いたらどうですか。それにまたピーマンを残して。ほら、箸の持ち方がおかしいですよ。この間も言ったでしょう。箸はこうやって持つんです、こう。そうです、やればできるじゃないですか』……どう、似てた?」
「似てないです!」
ソラルが珍しく大声をあげる。ウタセを睨む目は鋭いものだった。
それに慈乃が驚くのを目の端に捉えたソラルは、「すみませんでした」と言って落ち着きを取り戻した。
「ソラくんはそういうけど、オレはそこそこ似てたと思うよ?」
「ウタってやっぱりまわりをよく見てるよなぁ」
「似てたなら良かったよ。ほらほら、ソラの番だよ」
「いえ、俺は一回休みなので、次はシノさんです」
「あ、そっか。はい、シノ。どうぞ」
「ありがとう、ございます」
ウタセから手渡されたさいころを振ると、六が出た。
「『マイブームは?』、ですか……」
「当初の目的これだったよな。やっぱり仲良くなるには自己紹介からでしょ」
考える慈乃を、ガザは期待に満ちた目で見つめる。
(特にこれといって思いつかないわ……。やっぱり、私は薄っぺらい……)
慈乃の表情が曇りがちになっていくのを見かねたウタセが助け舟を出した。
「そういえば、シノは言の葉語に興味があるんだったよね。教えるのは今日からだけど。それってマイブームにならないかな」
「あ……」
俯けていた顔を上げると、優しく微笑むウタセと目が合った。
「そう、ですね」
慈乃が頷くと、ガザ達も興味を示してきた。
「言の葉語に興味? 母国語の研究でもすんの? ん? でも今のウタの言い方だと、ウタがシノに言の葉語を教えるってことか?」
「ええ。私の母国語は、言の葉語では、ない、ので……」
「でも、わざわざ勉強しなくても別段困らないですよね。花の加護もあるし、なにより現状不便していないんでしょう?」
「はい。ですけど、皆さんと同じ、景色を見てみたい、といいますか……」
上手い言いまわしが思いつかずに、なんとなく尻すぼみになってしまう。しかし、聞いていた皆は納得したようだった。
「シノ姉は真面目だね。うん、頑張ってね! オレ応援するよ」
「俺も、頑張ってるひとは好きですよ。早く上達するといいですね」
「ウタが教えるなら出る幕なさそうだけど、オレにもできることあったら協力するぜ」
「皆さん……」
まさか応援されるとは思っていなかった。予想外の反応に、慈乃は呆然とするばかりで、かろうじて「……ありがとう、ございます。頑張り、ます」とだけ口にした。
皆、段々と慈乃の人となりがわかってきたからか、言葉数こそ少ないもののそこに込められた精一杯の慈乃の思いには気づいてくれたようだった。
「そうだ。シノ姉の母国語もいつか教えてよ」
「はい」
「せっかくならこの中の誰かにしようか」
「いいけど、勇気あるな」
ガザが若干身を退いた。
「じゃあ、ソラのものまねにするね」
「……どっちが罰ゲームでしょうか」
ウタセのまっすぐな視線を避けるように、ソラルは顔を逸らした。
「はい、いきます。『フィオ、楽しく食べるのは構いませんが、もう少し落ち着いたらどうですか。それにまたピーマンを残して。ほら、箸の持ち方がおかしいですよ。この間も言ったでしょう。箸はこうやって持つんです、こう。そうです、やればできるじゃないですか』……どう、似てた?」
「似てないです!」
ソラルが珍しく大声をあげる。ウタセを睨む目は鋭いものだった。
それに慈乃が驚くのを目の端に捉えたソラルは、「すみませんでした」と言って落ち着きを取り戻した。
「ソラくんはそういうけど、オレはそこそこ似てたと思うよ?」
「ウタってやっぱりまわりをよく見てるよなぁ」
「似てたなら良かったよ。ほらほら、ソラの番だよ」
「いえ、俺は一回休みなので、次はシノさんです」
「あ、そっか。はい、シノ。どうぞ」
「ありがとう、ございます」
ウタセから手渡されたさいころを振ると、六が出た。
「『マイブームは?』、ですか……」
「当初の目的これだったよな。やっぱり仲良くなるには自己紹介からでしょ」
考える慈乃を、ガザは期待に満ちた目で見つめる。
(特にこれといって思いつかないわ……。やっぱり、私は薄っぺらい……)
慈乃の表情が曇りがちになっていくのを見かねたウタセが助け舟を出した。
「そういえば、シノは言の葉語に興味があるんだったよね。教えるのは今日からだけど。それってマイブームにならないかな」
「あ……」
俯けていた顔を上げると、優しく微笑むウタセと目が合った。
「そう、ですね」
慈乃が頷くと、ガザ達も興味を示してきた。
「言の葉語に興味? 母国語の研究でもすんの? ん? でも今のウタの言い方だと、ウタがシノに言の葉語を教えるってことか?」
「ええ。私の母国語は、言の葉語では、ない、ので……」
「でも、わざわざ勉強しなくても別段困らないですよね。花の加護もあるし、なにより現状不便していないんでしょう?」
「はい。ですけど、皆さんと同じ、景色を見てみたい、といいますか……」
上手い言いまわしが思いつかずに、なんとなく尻すぼみになってしまう。しかし、聞いていた皆は納得したようだった。
「シノ姉は真面目だね。うん、頑張ってね! オレ応援するよ」
「俺も、頑張ってるひとは好きですよ。早く上達するといいですね」
「ウタが教えるなら出る幕なさそうだけど、オレにもできることあったら協力するぜ」
「皆さん……」
まさか応援されるとは思っていなかった。予想外の反応に、慈乃は呆然とするばかりで、かろうじて「……ありがとう、ございます。頑張り、ます」とだけ口にした。
皆、段々と慈乃の人となりがわかってきたからか、言葉数こそ少ないもののそこに込められた精一杯の慈乃の思いには気づいてくれたようだった。
「そうだ。シノ姉の母国語もいつか教えてよ」
「はい」
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