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第二一話 祈りの言霊
第二一話 六
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結月の無事を確かめた春朝と香澄は、玄舞家にいる梓に会ってから帰るといってあかりたちのもとを去った。残されたのはあかりたち幼なじみの四人だけだ。
「そういや、間に合って良かったよな」
「間に合う? 何のこと?」
首を傾げる結月に向けて、秋之介はすっと壁の方を指さした。そこには日めくりの暦がかけられていて、『七』と大書されている。
「あ……!」
それで結月は秋之介が言わんとしていることを察したらしい。僅かに見開いた目であかりを振り向いた。
「文月七日。あかりの、誕生日……」
「そういうこった」
秋之介はにやりと歯を見せて笑った。
「あかりも気が気じゃなかっただろ。毎日暦を破りとっては落ち着きがなくって」
「そういうことは言わなくていいのよっ!」
あかりは赤面しながら、秋之介の肩をぱしんとはたいた。
「いてーっつの!」
「秋のせいだからね! 自業自得よ!」
「まあまあ、二人とも」
昴が苦笑とともにやんわりと場をとりなすことで、あかりと秋之介は言い合いを止めた。
「なんにせよ良かったじゃない。今年も四人そろってお祝いできそうで」
「そうだね。あかり、今年は何したい?」
結月に問われて、あかりは考え込んだ。そして思いつくままを口にした。
「みんなと過ごせれば、私は満足だよ?」
「やりたいこととか行きたいところとか、なんかねぇのか?」
「そうなると、やっぱり町に遊びに行くってなるけど。でも、結月は目覚めたばっかりだし……」
あかりが案じる視線を結月に向けると、結月は緩やかに頭を振った。
「おれなら、大丈夫。だから、あかりの望むようにして」
「そう? だったらみんなで町に行きたいな」
あかりの誕生日にはたいてい町に遊びに行くことになるが、四人の中の誰一人としてつまらないと感じる者はいなかった。いつ、何度行ってもそっくり同じ時間などない。関わる人が変われば、そこに生まれる会話も変わる。訪れる場所が変われば、振る舞いだって変わるだろう。あかりはそのささいな違いを楽しんでいて、結月たちはそんなあかりの姿を見て楽しんでいるのだった。
だから今年のあかりの誕生日の過ごし方についても異論を唱えるものはいなかった。
「明日、楽しみにしてるね」
あかりの期待に満ちた眼差しを受けて、三人はしっかりと頷くのだった。
「そういや、間に合って良かったよな」
「間に合う? 何のこと?」
首を傾げる結月に向けて、秋之介はすっと壁の方を指さした。そこには日めくりの暦がかけられていて、『七』と大書されている。
「あ……!」
それで結月は秋之介が言わんとしていることを察したらしい。僅かに見開いた目であかりを振り向いた。
「文月七日。あかりの、誕生日……」
「そういうこった」
秋之介はにやりと歯を見せて笑った。
「あかりも気が気じゃなかっただろ。毎日暦を破りとっては落ち着きがなくって」
「そういうことは言わなくていいのよっ!」
あかりは赤面しながら、秋之介の肩をぱしんとはたいた。
「いてーっつの!」
「秋のせいだからね! 自業自得よ!」
「まあまあ、二人とも」
昴が苦笑とともにやんわりと場をとりなすことで、あかりと秋之介は言い合いを止めた。
「なんにせよ良かったじゃない。今年も四人そろってお祝いできそうで」
「そうだね。あかり、今年は何したい?」
結月に問われて、あかりは考え込んだ。そして思いつくままを口にした。
「みんなと過ごせれば、私は満足だよ?」
「やりたいこととか行きたいところとか、なんかねぇのか?」
「そうなると、やっぱり町に遊びに行くってなるけど。でも、結月は目覚めたばっかりだし……」
あかりが案じる視線を結月に向けると、結月は緩やかに頭を振った。
「おれなら、大丈夫。だから、あかりの望むようにして」
「そう? だったらみんなで町に行きたいな」
あかりの誕生日にはたいてい町に遊びに行くことになるが、四人の中の誰一人としてつまらないと感じる者はいなかった。いつ、何度行ってもそっくり同じ時間などない。関わる人が変われば、そこに生まれる会話も変わる。訪れる場所が変われば、振る舞いだって変わるだろう。あかりはそのささいな違いを楽しんでいて、結月たちはそんなあかりの姿を見て楽しんでいるのだった。
だから今年のあかりの誕生日の過ごし方についても異論を唱えるものはいなかった。
「明日、楽しみにしてるね」
あかりの期待に満ちた眼差しを受けて、三人はしっかりと頷くのだった。
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