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第一七話 諦めない未来
第一七話 七
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直後、秋之介が耳を震わせ、白虎姿に変じた。
「来たね」
昴に続いて、あかりと結月も立ち上がる。昴はいつでも結界が展開できるように構えをとり、結月は袂から数枚の霊符と護符を取り出した。あかりも霊剣を顕現させ、ひとつ深呼吸をした。
刹那、黒い妖狐が目で追えない速さでとびかかってきた。狙いは一番前に出ている秋之介のようだ。姿が捉えられないため、秋之介はほとんど勘と薄い気配を頼りに後ろに跳んだ。妖狐は秋之介がいた場所で宙返りをするとその場に着地した。
妖狐のまとう薄い気配にじわりと禍々しい気配が滲んでいくのがわかる。十中八九、目の前の妖狐は呪詛をのせている。下手に触れたら最後、呪いを受けてしまうかもしれないので、あかりたちは一旦妖狐と距離をとった。
「秋くん、大丈夫?」
結界を張り終えるなり、昴は秋之介に尋ねた。秋之介は白虎姿のまま一瞬視線だけを昴の方へ向けて「ああ」と頷いた。
秋之介の視線を追うようにあかりも前を見据える。捉えた妖狐の赤い瞳には感情らしい感情は浮かんでおらず、正気を失っているのは明らかだった。
「お父様……」
呼びかけるつもりはなく、あかりはただ呟いた。妖狐は耳を震わせたがそれだけで、あかりの声に反応したというよりは音を拾っただけのようだった。
こうなることは予想していたが、あかりの胸に寂寥感と空しさがじわりと広がる。感傷的になりそうなのをぐっと堪え、あかりはすっと霊剣を掲げた。
それが始まりの合図だった。
「来たね」
昴に続いて、あかりと結月も立ち上がる。昴はいつでも結界が展開できるように構えをとり、結月は袂から数枚の霊符と護符を取り出した。あかりも霊剣を顕現させ、ひとつ深呼吸をした。
刹那、黒い妖狐が目で追えない速さでとびかかってきた。狙いは一番前に出ている秋之介のようだ。姿が捉えられないため、秋之介はほとんど勘と薄い気配を頼りに後ろに跳んだ。妖狐は秋之介がいた場所で宙返りをするとその場に着地した。
妖狐のまとう薄い気配にじわりと禍々しい気配が滲んでいくのがわかる。十中八九、目の前の妖狐は呪詛をのせている。下手に触れたら最後、呪いを受けてしまうかもしれないので、あかりたちは一旦妖狐と距離をとった。
「秋くん、大丈夫?」
結界を張り終えるなり、昴は秋之介に尋ねた。秋之介は白虎姿のまま一瞬視線だけを昴の方へ向けて「ああ」と頷いた。
秋之介の視線を追うようにあかりも前を見据える。捉えた妖狐の赤い瞳には感情らしい感情は浮かんでおらず、正気を失っているのは明らかだった。
「お父様……」
呼びかけるつもりはなく、あかりはただ呟いた。妖狐は耳を震わせたがそれだけで、あかりの声に反応したというよりは音を拾っただけのようだった。
こうなることは予想していたが、あかりの胸に寂寥感と空しさがじわりと広がる。感傷的になりそうなのをぐっと堪え、あかりはすっと霊剣を掲げた。
それが始まりの合図だった。
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