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第一一話 夏のひととき
第一一話 一一
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涼しい顔でそつなく作業をこなす結月と、頭を悩ませながらも手伝う手は休めない秋之介の助力もあってあかりの政務は予定よりも早く終わった。
玄舞家の料理番が用意してくれた昼食を取り終えた後、三人はそろって昴の部屋へ向かった。
あかりが退室したときには閉めてあったはずの縁側に面した外廊下の障子は開け放たれていた。そのため室内の様子が一目で確認できた。
「昴……!」
あかりの声に、昴は読んでいた報告書から顔を上げた。
「あかりちゃん。ゆづくんに秋くんも、いらっしゃい」
穏やかに微笑む昴の顔色は倒れたときよりもましにはなっていたが、それでも普段に比べれば良いとはいえない。
あかりは咎めるように昴が手にしている報告書に視線を移した。
「ちゃんと休まないと駄目だよ」
「ばれちゃったか」
昴は苦笑すると素直に報告書を脇に寄せた。そこには他にも紙がまとめて置かれていて、あかりは思わずため息をついた。
「もう、昴ってば……」
「こうでもしないと明日が怖いからね。多めに見てよ。それよりあかりちゃんの政務は終わったの?」
話を逸らされたような気もしたが、あかりはこれ以上言っても意味はないと思い、昴の問いかけに頷きを返した。
「結月と秋にも手伝ってもらって、今日の分は終わらせてきたよ。午後は昴のところにいるから」
「僕なら大丈夫だよ?」
「って言ってもなあ。そこの紙束見ちゃあ、説得力皆無だぞ?」
秋之介が呆れ顔で言い募る。結月も同意するようにこくりと頷いた。
「……それじゃあ、お願いしようかな。一人でやることもないんじゃ退屈だしね」
昴が折れる形となったのに、本人はいたずらっぽく、そして嬉しそうに笑う。
「それで? 何をしてくれるのかな?」
「うーん、昴には休んでてほしいんだけど……」
午後には昴の側にいることを決めてはいたものの、具体的に何かを求められるとは思っていなかった。そもそもあかりは看病をするつもりだったし、昴には体を休めることを優先してほしかった。
昴は意地悪くにこりと笑って、あかりに答えを促す。
「さっきまで寝てたから眠気もないし。あかりちゃんが楽しいことしてくれるって期待しててもいいんだよね?」
「えーっと……」
助けを求めるように、あかりは側にいる結月と秋之介にちらりと目をやった。秋之介は他人事のようにあかりと昴のやりとりを面白がって見ているだけだったが、結月はあかりと目が合うと一緒になって考えてくれた。
「寝物語に、昔の話でも、する?」
結月の提案に昴はにっこりと笑みを深めた。
「いいね。いい夢が見られそう」
誰からともなく幼い頃の話をし始める。
そんなこともあったと恥ずかしくなったり、懐かしく思ったり。けれどもどんな話をしたところであかりたちの笑顔が絶えることはなく、和やかな時間が流れていった。
玄舞家の料理番が用意してくれた昼食を取り終えた後、三人はそろって昴の部屋へ向かった。
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「昴……!」
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「僕なら大丈夫だよ?」
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「……それじゃあ、お願いしようかな。一人でやることもないんじゃ退屈だしね」
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「それで? 何をしてくれるのかな?」
「うーん、昴には休んでてほしいんだけど……」
午後には昴の側にいることを決めてはいたものの、具体的に何かを求められるとは思っていなかった。そもそもあかりは看病をするつもりだったし、昴には体を休めることを優先してほしかった。
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「さっきまで寝てたから眠気もないし。あかりちゃんが楽しいことしてくれるって期待しててもいいんだよね?」
「えーっと……」
助けを求めるように、あかりは側にいる結月と秋之介にちらりと目をやった。秋之介は他人事のようにあかりと昴のやりとりを面白がって見ているだけだったが、結月はあかりと目が合うと一緒になって考えてくれた。
「寝物語に、昔の話でも、する?」
結月の提案に昴はにっこりと笑みを深めた。
「いいね。いい夢が見られそう」
誰からともなく幼い頃の話をし始める。
そんなこともあったと恥ずかしくなったり、懐かしく思ったり。けれどもどんな話をしたところであかりたちの笑顔が絶えることはなく、和やかな時間が流れていった。
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