【本編完結】朱咲舞う

第五話 朱咲の再来

第五話 二〇

　俯いて肩を震わせたかと思えば、あかりはばっと顔を上げ、顕現させたままの霊剣で周囲をなぎ払った。あかりを中点に、円を描くように草が刈られる。結月たちは瞬時にとび退った。何事かと状況を確認する間も与えずに、あかりは正面の結月に狙いを定めて打ちかかった。
「なんで、わかってくれないの⁉」
　結月は全力で振り下ろされた刃を霊符で受け止め、悲痛な面持ちながらもはっきりと言い返した。
「あかりは、本当は望んでないでしょう」
「そんなこと、どうしてわかるっ⁉」
　言霊を上乗せされた刀は重い。それは物理的な力量だけでなく、怒りや悲しみをも含む重さだった。
　結月は霊符を持つ左手に気を集中させ、刀を押し返した。反動で後ろにとび退ったあかりは、きっと結月を睨みつける。その目は鮮烈な赤に光り輝いていた。気を抜くと、目を、心を奪われそうになる。それほどまでに美しい瞳は、何故だか結月には魅力的に映らなかった。
　彼女は結月を睨み据えたまま、感情のままに怒鳴り散らした。