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第四話 過去との決別

第四話 八

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一方で、楓と風雅も熾烈な戦いを繰り広げていた。
 風雅は怪我をしているのにも関わらず愉しげに嗤いながら短刀を振るう。
「ははっ。悪くねえな!」
楓は襲い来る攻撃を霊符を使役することで回避したり相殺したりしていた。
息つく暇もなく次の攻撃が楓に迫る。
「けど、そろそろ飽きてきた、なっ!」
「風神去来、急々如律令」
 楓が唱えると一瞬の閃光の後、突風が巻き起こった。地面に積もっていた木の葉が舞い上がり、頭上からも木の葉が降り注ぐ。
 視界を遮られた風雅は苛立たしげに舌を打つと態勢を整えるべくすぐさま後退して、楓から距離をとった。
 楓は薄く冷たく笑った。
「雷火焼炎、急々如律令」
 風雅が跳躍して着地するのと全く同じ瞬間に、彼を標的に雷が落ち、その周辺だけに火が上り立つ。
 風雅の行動を先読みして仕掛けた楓の攻撃だった。
 先に美桜と戦ったことで体力を消費し、怪我まで負った風雅は端から楓の敵ではなかったのだ。
 炎に包まれた風雅は苦痛に呻いていたが、やがてその声も聞こえなくなった。すると燃え盛っていた火は幻だったかのようにすっと消えた。
 標的だけを攻撃し、周りには一切被害を出さない。普段は陽気で朗らかで軽薄さすら感じる楓だが、紫苑の相棒を自称するだけあってその実力は折り紙付きだ。紫苑と比べれば劣るところも多いが、こと霊符の扱いにおいては楓の方が優れていた。
 力の加減次第では、楓は風雅を消滅させることもできたがそうしなかった。
(決めるのはきっと俺の役目じゃない)
 気絶した烏を一瞥して、楓は紫苑たちがいた方へ走り出した。
 来た道を戻りながら、楓は紫苑たちを探す。
「確かあの辺で別れたような……」
 首を巡らせ、楓はある一点で動きを止めた。
 左上腕に短刀が刺さった紫苑を美桜が突き飛ばしていた。
 完全に不意打ちだったのだろう、紫苑は驚きに目を見開いている。そして美桜は切羽詰まった表情をしていた。
彼女の背には大きな影がかかっていた。
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