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命を捨ててまで欲しかったもの
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再び目を閉じ、深呼吸すると空気が変わる
目を開けるともといた光景に戻った
隣には陽菜が心配そうに、樹を見つめていた
陽菜に優しく微笑み返し、真白へ視線を向ける
『俺は、自分自身と向き合うことが必要だっ
たんだな それが君の、導き手が与える
試練というものか?』
『はい、試練を与えもう一度人としての生を
与えるべきか、否かを判断する
それがその人にとって大切だということを
気づいて欲しいから』
『ああ、おかげで決心がついた
ありがとう、もう大丈夫だ』
そして樹は、陽菜に言葉を紡ぐ
偽りのない真実を、少しずつ口にしていく
『陽菜、悪魔としての敬意を話した時
言えなかった事があったんだ
きっと、陽菜も勘付いてたと思う』
時間を言い訳にしてしまったこともある
限られた中、自分の思いを伝えた
全て自己満足の為
けど、今から伝えることは陽菜の為に
陽菜が一番知りたかった事を
『俺は、自分の命を捨ててまで
叶えたかった願いは
君だよ、陽菜』
思いがけない言葉に、陽菜は言葉を失った
叶えたかった願いは、自分
理解するのは早かった、だが心は追いつくことはなかった
気づけば涙が頬を伝っていて、呼吸するのが苦しかった
私がここにいられるのは、彼の命のおかげ
命の重さを、儚さを実感された
心臓の音、鼓動が耳に響く
『陽菜が苦しむ姿を見たくなかった
日に日に痩せ細っていく姿を見ていられ
なくて
騙された形にもなったが、目の前の
欲望に抗えなかった
それで陽菜が助かるなら、安い命と
後先のこと、考えることもなかった』
樹も苦しそうに、陽菜にあの時の心情を伝える
彼も、苦しんでいたのだ
苦しみながらも、欲望に身を委ね、帰らぬ人になってしまった
『私、あの時が幸せだった
苦しくても、辛くても樹君が傍にいて
くれる
それだけで、よかったのに』
感情が昂り、陽菜は今まで堪えていた思いを樹にぶつけるように、樹の服を爪が食い込むほどに掴む
『酷いよ…ずるいよ…!
一人で勝手に決めて、私を置き去りして
樹君の命で救われても、私嬉しくない!』
陽菜の思い、気持ちをぶつけられても樹は
何も言わずに、困ったように微笑む
『なのに、私…
樹君を、許せないって思えない』
樹は驚きを隠せず、陽菜の言葉に反応し
一瞬体が震えた
陽菜は樹の瞳を見つめ、少し背伸びをして
樹の唇に、自分の唇を重ねた
触れるだけの、ほんの小さな一瞬の時間
『他に何もいらないから…
悲しませた分、私を愛してくれなきゃ嫌』
まだいい足りないことは、たくさんあった
けれど、自分の命を捨ててまで陽菜の病を救ってくれたこの人を、憎めない
樹も、陽菜も同じように苦しんだ
そして今、やっとお互いに思いが通じ合えた
これ以上、樹を責めることは陽菜にはできなかった
『…ああ、これでもかってくらい愛してやる
もう、陽菜を一人にはしないから
ありがとう、陽菜』
樹は優しく、でもどこか遠慮がちな抱擁
そんな樹の優しさに、心に惹かれていた感情がまた、芽生えていった
懐かしい抱擁に、彼のぬくもりが鼻腔をくすぐるよう、太陽のような匂い
胸の奥がくすぐったくて、言葉にできない
けど、嫌ではない 嬉しくてしょうがない
この感情を、人は愛しいと思うのだろう
目を開けるともといた光景に戻った
隣には陽菜が心配そうに、樹を見つめていた
陽菜に優しく微笑み返し、真白へ視線を向ける
『俺は、自分自身と向き合うことが必要だっ
たんだな それが君の、導き手が与える
試練というものか?』
『はい、試練を与えもう一度人としての生を
与えるべきか、否かを判断する
それがその人にとって大切だということを
気づいて欲しいから』
『ああ、おかげで決心がついた
ありがとう、もう大丈夫だ』
そして樹は、陽菜に言葉を紡ぐ
偽りのない真実を、少しずつ口にしていく
『陽菜、悪魔としての敬意を話した時
言えなかった事があったんだ
きっと、陽菜も勘付いてたと思う』
時間を言い訳にしてしまったこともある
限られた中、自分の思いを伝えた
全て自己満足の為
けど、今から伝えることは陽菜の為に
陽菜が一番知りたかった事を
『俺は、自分の命を捨ててまで
叶えたかった願いは
君だよ、陽菜』
思いがけない言葉に、陽菜は言葉を失った
叶えたかった願いは、自分
理解するのは早かった、だが心は追いつくことはなかった
気づけば涙が頬を伝っていて、呼吸するのが苦しかった
私がここにいられるのは、彼の命のおかげ
命の重さを、儚さを実感された
心臓の音、鼓動が耳に響く
『陽菜が苦しむ姿を見たくなかった
日に日に痩せ細っていく姿を見ていられ
なくて
騙された形にもなったが、目の前の
欲望に抗えなかった
それで陽菜が助かるなら、安い命と
後先のこと、考えることもなかった』
樹も苦しそうに、陽菜にあの時の心情を伝える
彼も、苦しんでいたのだ
苦しみながらも、欲望に身を委ね、帰らぬ人になってしまった
『私、あの時が幸せだった
苦しくても、辛くても樹君が傍にいて
くれる
それだけで、よかったのに』
感情が昂り、陽菜は今まで堪えていた思いを樹にぶつけるように、樹の服を爪が食い込むほどに掴む
『酷いよ…ずるいよ…!
一人で勝手に決めて、私を置き去りして
樹君の命で救われても、私嬉しくない!』
陽菜の思い、気持ちをぶつけられても樹は
何も言わずに、困ったように微笑む
『なのに、私…
樹君を、許せないって思えない』
樹は驚きを隠せず、陽菜の言葉に反応し
一瞬体が震えた
陽菜は樹の瞳を見つめ、少し背伸びをして
樹の唇に、自分の唇を重ねた
触れるだけの、ほんの小さな一瞬の時間
『他に何もいらないから…
悲しませた分、私を愛してくれなきゃ嫌』
まだいい足りないことは、たくさんあった
けれど、自分の命を捨ててまで陽菜の病を救ってくれたこの人を、憎めない
樹も、陽菜も同じように苦しんだ
そして今、やっとお互いに思いが通じ合えた
これ以上、樹を責めることは陽菜にはできなかった
『…ああ、これでもかってくらい愛してやる
もう、陽菜を一人にはしないから
ありがとう、陽菜』
樹は優しく、でもどこか遠慮がちな抱擁
そんな樹の優しさに、心に惹かれていた感情がまた、芽生えていった
懐かしい抱擁に、彼のぬくもりが鼻腔をくすぐるよう、太陽のような匂い
胸の奥がくすぐったくて、言葉にできない
けど、嫌ではない 嬉しくてしょうがない
この感情を、人は愛しいと思うのだろう
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