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硬く結ばれた糸
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絶望したアリアをよそに、サタンは樹と陽菜に向き合った
こうして向き合ってみると、恐縮してしまい意思を持っていかれてしまいそうになる
だが、これが悪魔界の支配者に相応しいからなのだろう
『そう恐縮するな、と言いたいところだが
無理な話だな
俺が放つものを抑えることはできない
自分でも制御できぬのだ、許せ』
『いえ、それが貴方という存在証明になって
いるのでしょう お気になさらずに』
そんな俺の態度を気に入ったのか、彼は顎に手を当て小さく微笑んだ
『ほう、随分と肝が据わってるな
だが、時間はもう残り少ない
樹、と言ったか お前の経緯は知って
いる』
彼はきっと俺を試しているのだろう
時間が迫った中で、元人間であり悪魔になった俺がどんな選択をするのか
『サタン様、今の俺とアリアには魂の縛りは
されていますか?』
『アリアが人間の娘に触れた途端に、縛りは
解除された 禁忌に触れたのだ、当然だ
あいつは知らなかったのだろうがな
お前は知っていたのだろう?』
彼には全て見透かされていたようだ
きっと傍観していたのだろう
賭けのようなものだった
確証はなかったが、アリアだったら手に入れる為に陽菜に手を出すはずと
結果的に俺は彼女との魂の縛り、繋がりを断ち切れた
『今のお前は人間と悪魔、どちらにも当て
はまることはない
中途半端の存在狭間そのもの、と呼べる
どうすべきか、わかっているのだな』
頷き、俺は決意を瞳に宿した
人間としての俺の願いは陽菜の病気を治すこと
けれど、アリアの縛りが解除されたことによってそれは無効となった
だから、俺は悪魔のリアムとして願いを叶える
代償は自分の魂を、サタンに差し出して
本当の意味としての、死を迎えるのだ
『陽菜、君と過ごす時間がもうないんだ
だから、君に想いを伝えるよ』
『樹…君…』
小さな瞳が震えるようにこちらを見ている
俺はいつものように、優しく微笑んで陽菜の頬に触れた
『君のことが、好きだった
陽菜は俺を笑顔にしてくれた
あたたかい心をくれた女の子
陽菜には笑顔でいて欲しいんだ
これからも、ずっと
でも、その隣にいるのは俺じゃない』
最後に陽菜に触れる感触は、温かくて少し胸が苦しかった
それを手放すことが陽菜の為になることだと
自分に言い聞かせて、手を離した
『だから、最後に俺の心残りを叶えさせて
その選択が正しいと、思わせてくれ
それが、俺の最後の願いだ』
『樹君、私、私…!』
陽菜の言葉を待たずに指を鳴らすと、陽菜の髪が靡くように視界が見えなくなった
最後に見たのは陽菜が悲しそうな瞳で俺を見つめる姿 必死に俺を呼んでいる
それに答えることは叶わない
『陽菜、君がいるべき場所はここじゃない
君の帰りを待ってる人がいるんだ
幸せにおなり』
その言葉と同時に陽菜と樹の魂の縛りも断ち切れた
小さな糸が切れたような、プツンと
硬く結ばれたようでも、切れる時は一瞬のような音
もう、彼と結ばれることはないのだ
会うことさえ叶わない
一人一人にある縁が結ばれているように
私と彼の間の縁が今、切れた
それは彼の魂がなくなったことを意味していた
こうして向き合ってみると、恐縮してしまい意思を持っていかれてしまいそうになる
だが、これが悪魔界の支配者に相応しいからなのだろう
『そう恐縮するな、と言いたいところだが
無理な話だな
俺が放つものを抑えることはできない
自分でも制御できぬのだ、許せ』
『いえ、それが貴方という存在証明になって
いるのでしょう お気になさらずに』
そんな俺の態度を気に入ったのか、彼は顎に手を当て小さく微笑んだ
『ほう、随分と肝が据わってるな
だが、時間はもう残り少ない
樹、と言ったか お前の経緯は知って
いる』
彼はきっと俺を試しているのだろう
時間が迫った中で、元人間であり悪魔になった俺がどんな選択をするのか
『サタン様、今の俺とアリアには魂の縛りは
されていますか?』
『アリアが人間の娘に触れた途端に、縛りは
解除された 禁忌に触れたのだ、当然だ
あいつは知らなかったのだろうがな
お前は知っていたのだろう?』
彼には全て見透かされていたようだ
きっと傍観していたのだろう
賭けのようなものだった
確証はなかったが、アリアだったら手に入れる為に陽菜に手を出すはずと
結果的に俺は彼女との魂の縛り、繋がりを断ち切れた
『今のお前は人間と悪魔、どちらにも当て
はまることはない
中途半端の存在狭間そのもの、と呼べる
どうすべきか、わかっているのだな』
頷き、俺は決意を瞳に宿した
人間としての俺の願いは陽菜の病気を治すこと
けれど、アリアの縛りが解除されたことによってそれは無効となった
だから、俺は悪魔のリアムとして願いを叶える
代償は自分の魂を、サタンに差し出して
本当の意味としての、死を迎えるのだ
『陽菜、君と過ごす時間がもうないんだ
だから、君に想いを伝えるよ』
『樹…君…』
小さな瞳が震えるようにこちらを見ている
俺はいつものように、優しく微笑んで陽菜の頬に触れた
『君のことが、好きだった
陽菜は俺を笑顔にしてくれた
あたたかい心をくれた女の子
陽菜には笑顔でいて欲しいんだ
これからも、ずっと
でも、その隣にいるのは俺じゃない』
最後に陽菜に触れる感触は、温かくて少し胸が苦しかった
それを手放すことが陽菜の為になることだと
自分に言い聞かせて、手を離した
『だから、最後に俺の心残りを叶えさせて
その選択が正しいと、思わせてくれ
それが、俺の最後の願いだ』
『樹君、私、私…!』
陽菜の言葉を待たずに指を鳴らすと、陽菜の髪が靡くように視界が見えなくなった
最後に見たのは陽菜が悲しそうな瞳で俺を見つめる姿 必死に俺を呼んでいる
それに答えることは叶わない
『陽菜、君がいるべき場所はここじゃない
君の帰りを待ってる人がいるんだ
幸せにおなり』
その言葉と同時に陽菜と樹の魂の縛りも断ち切れた
小さな糸が切れたような、プツンと
硬く結ばれたようでも、切れる時は一瞬のような音
もう、彼と結ばれることはないのだ
会うことさえ叶わない
一人一人にある縁が結ばれているように
私と彼の間の縁が今、切れた
それは彼の魂がなくなったことを意味していた
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