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アリアという悪魔
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アリアの突然の乱入に俺は、陽菜を背後に守るように隠した
その様子にアリアは少し余裕のない瞳で俺を睨む
『リアム、そんなにその子が大事なの?』
『大事さ、お前には分かることはないだろう
一生な』
不敵な笑みをアリアに向ける
背後で陽菜は息を潜めていた
だが、少し体は震えていて俺は羽で陽菜を安心させるように触れた
『分かりたくもないわ
さぁ、その子の魂をよこしなさい
もうその子の命は残りわずか
貴方もわかっているでしょう?』
アリアらしくなく焦っている
陽菜と契約したのは俺だというのに
自分のものと疑わない、その傲慢な悪魔に
嫌気がさしてしょうがない
だから俺は瞳で憎悪を宿して、アリアを見下すように見つめる
アリアは怖気付いたのか、少し後ずさった
『何を勘違いしている?
陽菜と契約者してるのは俺だ
お前のものではない
小間使いの奴らと俺を一緒にするな』
小間使いを使って、陽菜の魂を狙っているのは目に見えていた
そして彼女の存在意義は、自分自身の容姿
美貌こそが彼女の誇り
保っていられれば、他はどうだっていいのだ
『私に手に入らないものはない
昔も今もずっとよ!』
そう、彼女が決めたら手に入らないものはないと疑うことはなかった
悪魔は負の感情から産まれる
負の感情が共鳴して、悪魔として産まれることをサタンが選別し、許可する
その中で彼女は、よく深い女の魂から産まれた
男をその美貌で媚び、翻弄することを好んだ
それが彼女にとっては当たり前だった
他の悪魔達は避難しようともできなかった
彼女に関わったら最後、狂わされる運命になるのだから
人間の男達も同様にその美貌に騙され、魂を喰われ続けた
彼女は気まぐれだから、自由気ままにやっていた
そんな中、サタンから忠告された
おいたが過ぎる、と
彼女は何のことだかさっぱりわからなかった
自分の欲望のままに行動して何が悪いのか
悪魔だから、当然の行動じゃないかと
サタンの言葉は彼女を不快にさせた
けれど、逆らうことはできない
サタンは悪魔の王だ、彼は産みの親でもあり
容易く消滅させられる
アリアでさえ恐れる存在だった
それを機に彼女は魂を狩らず、大人しくしていた
けれどそうしているうちに退屈が増し、痺れを切らした
そして人間界に降り、魂を狩ろうとした矢先に樹と出会った
樹は自分が見えていた
驚きはしていないが、警戒心は強かった
自分が悪魔と告げると、彼は疑いもせず踵を返そうとする
そんな彼に、興味が湧いた
普通の人間なら、疑ってかかる
彼が見える人間だからかも知れないが
新しいおもちゃを見つけたように、アリアは
当分退屈しなそうと、彼を気に入ってしまったのだった
そうして構っているうちに、彼が他愛なく人間の女の子と話していた
か細く筋肉のない腕、痩せこけた頬
見るからに病人と言える
その小さな体に病が巣喰っている
近いうちに命が尽きることだろう、あの小さな体で耐えられていることが不思議なくらいだ
きっと彼は、あの子を救いたくてもどかしいのだろう
これを逃すには勿体無い
そう思ったアリアは、不敵な笑みを浮かべて
彼の願いを叶えるのを先延ばしにする計画を立てていた
せっかく見つけたおもちゃを、魂として喰らうのは惜しすぎる
だから、悪魔として蘇らせて絶望した様を見ながら喰らう
『ああ、なんて美しい嗜好なのかしら』
すぐにでも喰らいたい欲望を舌舐めずりしながら待つ
こんなに彼女を気長に待たした魂など
記憶にないほどに
『罪深い魂なこと、待たせた分極上な魂を
喰らうことが出来るなら
それもまた一興よね』
彼女の含んだ笑みが、赤い唇に映えて
怪しく妖艶に際立っていた
禁忌だとわかっていた
サタンに知られたら自分がどうなのかも
けど、止められなかった
どうしても手に入れたかった
樹が悪魔になる姿を見て、さらに欲望感が増した
だから彼を絶望の淵に落とそうと、様々な言葉を浴びせ続けた
けれど、彼は絶望しなかった
それは彼が思い浸っている、あの小さな女の子
陽菜の存在があったから
その存在に苛立ちを覚えて、陽菜の寿命を縮めたりなど、手を下したのに
あろうことか、彼は陽菜と契約した
許せなかった
彼は私のものなのにと
その感情を彼女は知ることはできなかった
それを機に、アリアらしくない行動をした
温存していた小間使いが犠牲になっていった
それでも諦めることはない、疑わなかった
勝者のように自分には褒美が手に入ると
敗者のように、歯を食いしばり悔しむ姿は
自分には似合わないから
その証拠にこの美しさが保たれている
魂を喰らった分、彼女は美しくなっていった
そう、誰にも彼女の美貌に叶うものはいなかった
けど、樹は惑わなされずに今も彼女に逆らう
憎悪を含めた瞳で私を見つめる
私に、敵うことなどないのに
二人の間に言葉にはならない空気が張り詰めて空間が歪んでいき保てなくなっていく
もう勝者は、目に見えていた
その様子にアリアは少し余裕のない瞳で俺を睨む
『リアム、そんなにその子が大事なの?』
『大事さ、お前には分かることはないだろう
一生な』
不敵な笑みをアリアに向ける
背後で陽菜は息を潜めていた
だが、少し体は震えていて俺は羽で陽菜を安心させるように触れた
『分かりたくもないわ
さぁ、その子の魂をよこしなさい
もうその子の命は残りわずか
貴方もわかっているでしょう?』
アリアらしくなく焦っている
陽菜と契約したのは俺だというのに
自分のものと疑わない、その傲慢な悪魔に
嫌気がさしてしょうがない
だから俺は瞳で憎悪を宿して、アリアを見下すように見つめる
アリアは怖気付いたのか、少し後ずさった
『何を勘違いしている?
陽菜と契約者してるのは俺だ
お前のものではない
小間使いの奴らと俺を一緒にするな』
小間使いを使って、陽菜の魂を狙っているのは目に見えていた
そして彼女の存在意義は、自分自身の容姿
美貌こそが彼女の誇り
保っていられれば、他はどうだっていいのだ
『私に手に入らないものはない
昔も今もずっとよ!』
そう、彼女が決めたら手に入らないものはないと疑うことはなかった
悪魔は負の感情から産まれる
負の感情が共鳴して、悪魔として産まれることをサタンが選別し、許可する
その中で彼女は、よく深い女の魂から産まれた
男をその美貌で媚び、翻弄することを好んだ
それが彼女にとっては当たり前だった
他の悪魔達は避難しようともできなかった
彼女に関わったら最後、狂わされる運命になるのだから
人間の男達も同様にその美貌に騙され、魂を喰われ続けた
彼女は気まぐれだから、自由気ままにやっていた
そんな中、サタンから忠告された
おいたが過ぎる、と
彼女は何のことだかさっぱりわからなかった
自分の欲望のままに行動して何が悪いのか
悪魔だから、当然の行動じゃないかと
サタンの言葉は彼女を不快にさせた
けれど、逆らうことはできない
サタンは悪魔の王だ、彼は産みの親でもあり
容易く消滅させられる
アリアでさえ恐れる存在だった
それを機に彼女は魂を狩らず、大人しくしていた
けれどそうしているうちに退屈が増し、痺れを切らした
そして人間界に降り、魂を狩ろうとした矢先に樹と出会った
樹は自分が見えていた
驚きはしていないが、警戒心は強かった
自分が悪魔と告げると、彼は疑いもせず踵を返そうとする
そんな彼に、興味が湧いた
普通の人間なら、疑ってかかる
彼が見える人間だからかも知れないが
新しいおもちゃを見つけたように、アリアは
当分退屈しなそうと、彼を気に入ってしまったのだった
そうして構っているうちに、彼が他愛なく人間の女の子と話していた
か細く筋肉のない腕、痩せこけた頬
見るからに病人と言える
その小さな体に病が巣喰っている
近いうちに命が尽きることだろう、あの小さな体で耐えられていることが不思議なくらいだ
きっと彼は、あの子を救いたくてもどかしいのだろう
これを逃すには勿体無い
そう思ったアリアは、不敵な笑みを浮かべて
彼の願いを叶えるのを先延ばしにする計画を立てていた
せっかく見つけたおもちゃを、魂として喰らうのは惜しすぎる
だから、悪魔として蘇らせて絶望した様を見ながら喰らう
『ああ、なんて美しい嗜好なのかしら』
すぐにでも喰らいたい欲望を舌舐めずりしながら待つ
こんなに彼女を気長に待たした魂など
記憶にないほどに
『罪深い魂なこと、待たせた分極上な魂を
喰らうことが出来るなら
それもまた一興よね』
彼女の含んだ笑みが、赤い唇に映えて
怪しく妖艶に際立っていた
禁忌だとわかっていた
サタンに知られたら自分がどうなのかも
けど、止められなかった
どうしても手に入れたかった
樹が悪魔になる姿を見て、さらに欲望感が増した
だから彼を絶望の淵に落とそうと、様々な言葉を浴びせ続けた
けれど、彼は絶望しなかった
それは彼が思い浸っている、あの小さな女の子
陽菜の存在があったから
その存在に苛立ちを覚えて、陽菜の寿命を縮めたりなど、手を下したのに
あろうことか、彼は陽菜と契約した
許せなかった
彼は私のものなのにと
その感情を彼女は知ることはできなかった
それを機に、アリアらしくない行動をした
温存していた小間使いが犠牲になっていった
それでも諦めることはない、疑わなかった
勝者のように自分には褒美が手に入ると
敗者のように、歯を食いしばり悔しむ姿は
自分には似合わないから
その証拠にこの美しさが保たれている
魂を喰らった分、彼女は美しくなっていった
そう、誰にも彼女の美貌に叶うものはいなかった
けど、樹は惑わなされずに今も彼女に逆らう
憎悪を含めた瞳で私を見つめる
私に、敵うことなどないのに
二人の間に言葉にはならない空気が張り詰めて空間が歪んでいき保てなくなっていく
もう勝者は、目に見えていた
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