薬術の魔女の結婚事情【リメイク】

しの

文字の大きさ
上 下
154 / 200
同棲生活

154:縁結び

しおりを挟む
 ラファエラが自室に戻ったのを確認し、フォラクスは安堵する。

「(……如何どうにか、儀式の真意には気付かれないで助かったが)」

彼自身も、書斎の方の自室に戻った。以前、彼女と眠った方ではない自室だ。そこには山ほど積まれた仕事の依頼書や魔術・呪術に関連する禁書や資料がある。

「(…………意外と、さとい方の様だ)」

 さすがは、『魔女』と呼ばれるだけの素質と技量のある娘だと、感心した。

 彼女は、興味のない物事にはとことん興味が無い。
 だが、一瞬でも興味を持った物事に対する思考力が随分と高い。
 『魔女』と呼ばれるためには、相当な専門性の高い知識と実力を示す必要がある。専門的な知識があるならばただの専門家。『魔女』と呼ばれる者は脅威だとも兼ね備えているのだ。

「(……しや、意外と面倒な事になったのでは)」

と、思ってしまうがなったものは仕方がないし、仕掛けてしまったものも解きようがない上にむしろ解く気も更々ないのでどうしようもない。

 フォラクスが呪猫フェレスでラファエラに仕掛けたそれは無論、自身と彼女の縁を強くだ。
 同じ食物を割り切れない数で交互に体内に取り入れて縁を繋ぎ、を行うことで、同族化させる。そういう呪術。

 先程、ラファエラが『披露宴のような』と言っていたが、それは擬似的なものであれ。その上、彼女が注目した絵柄の意味は『比翼の鳥』と『連理の枝』を意味し、仲睦まじい夫婦に関わる言葉だ。
 ラファエラを『夫婦めおと』という、最も縁の繋がった他人同士を想起させる呪術で彼女とその魂を絡め取る。それ以外に方法はない。
 いつ消えるかわからない妖精存在ならば、消えられなくなるまで縁を重ねる。
 それが、フォラクスと呪猫当主こちら側が出した結論だ。
 フォラクス自身を認めてくれた唯一の相手拠り所であり、吊り合いを取るためにも必要な相手装置。利害が一致しているので、異論はなかった。

「(……彼女はを好む気質であまり、乗り気にはなれなかったが)」

 フォラクスは小さく溜息を吐く。
 一度、縁を結ぶ呪術を仕掛けてしまったのだから、遣り遂げるしかない。
 毒を喰らわば皿まで、手を出したならば終いまで。

「(れが、呪術の基本なのだから仕方が無い)」

 兄が呪術に一定の知見を持つ者で良かったと、やや不本意ながらも安堵した。他の者ではこうはいかない。呪術などというになど、普通の魔術師や呪猫フェレスの者は力を貸さない。

「(あの娘には、く手遅れになる程まで気付かれぬ様にしなければ……)」

 、彼女はフォラクス自身に興味を持ち合わせている。なので、あまり下手なことあるいは露骨なことはできそうにないだろう、多分。

「(次に縁を結べそうなものはあれか)」

 と、フォラクスは見当をつける。
 それは、もうじき行われる『雨祭り』。
 しくも、彼女が行きたいと言った催事である。
 あれは基本的には浄化に関連する祭りであるが、めでたい日であり、とされているので、むしろ上手く使えばより強い縁を重ねられそうだった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~

恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」 そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。 私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。 葵は私のことを本当はどう思ってるの? 私は葵のことをどう思ってるの? 意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。 こうなったら確かめなくちゃ! 葵の気持ちも、自分の気持ちも! だけど甘い誘惑が多すぎて―― ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

【完結】元お飾り聖女はなぜか腹黒宰相様に溺愛されています!?

雨宮羽那
恋愛
 元社畜聖女×笑顔の腹黒宰相のラブストーリー。 ◇◇◇◇  名も無きお飾り聖女だった私は、過労で倒れたその日、思い出した。  自分が前世、疲れきった新卒社会人・花菱桔梗(はなびし ききょう)という日本人女性だったことに。    運良く婚約者の王子から婚約破棄を告げられたので、前世の教訓を活かし私は逃げることに決めました!  なのに、宰相閣下から求婚されて!? 何故か甘やかされているんですけど、何か裏があったりしますか!? ◇◇◇◇ お気に入り登録、エールありがとうございます♡ ※ざまぁはゆっくりじわじわと進行します。 ※「小説家になろう」「エブリスタ」様にも掲載しております(アルファポリス先行)。 ※この作品はフィクションです。特定の政治思想を肯定または否定するものではありません(_ _*))

姫騎士様と二人旅、何も起きないはずもなく……

踊りまんぼう
ファンタジー
主人公であるセイは異世界転生者であるが、地味な生活を送っていた。 そんな中、昔パーティを組んだことのある仲間に誘われてとある依頼に参加したのだが……。 *表題の二人旅は第09話からです (カクヨム、小説家になろうでも公開中です)

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

オバサンが転生しましたが何も持ってないので何もできません!

みさちぃ
恋愛
50歳近くのおばさんが異世界転生した! 転生したら普通チートじゃない?何もありませんがっ!! 前世で苦しい思いをしたのでもう一人で生きて行こうかと思います。 とにかく目指すは自由気ままなスローライフ。 森で調合師して暮らすこと! ひとまず読み漁った小説に沿って悪役令嬢から国外追放を目指しますが… 無理そうです…… 更に隣で笑う幼なじみが気になります… 完結済みです。 なろう様にも掲載しています。 副題に*がついているものはアルファポリス様のみになります。 エピローグで完結です。 番外編になります。 ※完結設定してしまい新しい話が追加できませんので、以後番外編載せる場合は別に設けるかなろう様のみになります。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる

三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。 こんなはずじゃなかった! 異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。 珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に! やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活! 右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり! アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。

処理中です...