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10話「悠久の霧」
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実湖に自称『本物の神様』と『御使い様』がいるって話は聞いた事ないから集落外の人だろうし、来ていたとしたら誰にも気づかれないよう接触していたのかもしれない。
それこそ、人間離れした能力を使わないと無理なんじゃないかな?
まったくわからず首をかしげていると、桜矢さんが小声で教えてくれた。
「…多分、そういう役目を持つ【古代兵器】じゃないかな。もし熾杜が生きている時にだとしたら、僕らが気づけるはずだからね」
「自己弁護するわけではないが――おそらく【迷いの想い出】に組み込まれてから接触した、としか思えない」
桜矢さんの言葉に頷いた悠河さんが、視線をこちらに向けず続けた。
――【迷いの想い出】を暴走させる失態は犯しているが、それだけは絶対に見落としていないと。
確かに桜矢さんと悠河さんのふたりは、実湖にある【祭司の一族】の屋敷に訪れた人をすべて把握していた。
だから、彼らが見落とすような事はないはずだと私も思う。
でも、熾杜が【迷いの想い出】の中枢となってすぐに実湖は滅ぼされている…正確には、なって半日くらい経った後だけど。
ところで、そんな短時間で接触からのあれやこれやを教えられるものなのかな?
そもそも『世界を統べる神様』を自称している存在なんて怪しいだけだと思うけど、一体何者なのだろう。
『いいじゃない、神同士仲良くしても。なーにも問題ないでしょう!』
頬を膨らませている熾杜は、最後に会った時より幼く見えた。
「神…あぁ、もしかして――」
何かに気づいた桜矢さんが視線を天宮様に向ける。
顔を上の方に向けて思案する天宮様は、肯定するように頷いた。
「おそらく…あれらは数ありますから。その可能性が高いでしょうね」
そう答える天宮様の顔色が、とても悪く見えた。
熾杜の生みだす霧のせいなのか、それとも力の暴走による体調不良なのかはわからないけど。
でも、ふたりは『世界を統べる神様』の正体に心当たりがあるみたいだった。
ふたりの会話を聞いていた神代さん達も、心当たりあるようで眉をひそめている――まるで、辛い記憶を思い出したかのように。
「――勝手な事を…本当に忌々しい存在ですね」
かろうじて聞こえてきたのは、憎しみの籠った天宮様の暗い声だ。
熾杜に向けて、というより『世界を統べる神様』なる存在に向けて言っているようだった。
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それこそ、人間離れした能力を使わないと無理なんじゃないかな?
まったくわからず首をかしげていると、桜矢さんが小声で教えてくれた。
「…多分、そういう役目を持つ【古代兵器】じゃないかな。もし熾杜が生きている時にだとしたら、僕らが気づけるはずだからね」
「自己弁護するわけではないが――おそらく【迷いの想い出】に組み込まれてから接触した、としか思えない」
桜矢さんの言葉に頷いた悠河さんが、視線をこちらに向けず続けた。
――【迷いの想い出】を暴走させる失態は犯しているが、それだけは絶対に見落としていないと。
確かに桜矢さんと悠河さんのふたりは、実湖にある【祭司の一族】の屋敷に訪れた人をすべて把握していた。
だから、彼らが見落とすような事はないはずだと私も思う。
でも、熾杜が【迷いの想い出】の中枢となってすぐに実湖は滅ぼされている…正確には、なって半日くらい経った後だけど。
ところで、そんな短時間で接触からのあれやこれやを教えられるものなのかな?
そもそも『世界を統べる神様』を自称している存在なんて怪しいだけだと思うけど、一体何者なのだろう。
『いいじゃない、神同士仲良くしても。なーにも問題ないでしょう!』
頬を膨らませている熾杜は、最後に会った時より幼く見えた。
「神…あぁ、もしかして――」
何かに気づいた桜矢さんが視線を天宮様に向ける。
顔を上の方に向けて思案する天宮様は、肯定するように頷いた。
「おそらく…あれらは数ありますから。その可能性が高いでしょうね」
そう答える天宮様の顔色が、とても悪く見えた。
熾杜の生みだす霧のせいなのか、それとも力の暴走による体調不良なのかはわからないけど。
でも、ふたりは『世界を統べる神様』の正体に心当たりがあるみたいだった。
ふたりの会話を聞いていた神代さん達も、心当たりあるようで眉をひそめている――まるで、辛い記憶を思い出したかのように。
「――勝手な事を…本当に忌々しい存在ですね」
かろうじて聞こえてきたのは、憎しみの籠った天宮様の暗い声だ。
熾杜に向けて、というより『世界を統べる神様』なる存在に向けて言っているようだった。
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