うたかた夢曲

雪原るい

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6話「王女と従者と変わり者と…」

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とある部屋に、男が3人――赤灰色の髪をした青年と隣に座る黒髪の右目に眼帯をした男、2人の向かいには青みのある黒髪をした青年がソファーに腰かけていた。
3人共に口を開かず静かに座っているのだが、この沈黙に耐えきれなくなった赤灰色の髪をした青年はお茶を飲むと向かいに座っている青みのある黒髪をした青年に訊ねる。

「えーっと…クリストフ、遅いよな。いつまで待たせるんだ…それよりも、お前は誰だよ?何でここに」
「まったく…大人しく待てないのか、

赤灰色の髪をした青年を、興味なさげに見た青みのある黒髪をした青年は言葉を続けた。

「私の名はキリル・エレディア、我が主の留守の間にお前がまた部屋を壊さぬように見張っているところだ」
「エレディアだぁー!?おれを、散々ボコボコにしてくれた…つーか、部屋を壊したのはおれじゃなくてクリストフ本人だって…うっ」

コップを片手に怒りをあらわにする赤灰色の髪をした青年の手首をおさえた青みのある黒髪をした青年・キリルは、もう片方の手に袖から出したクナイを握るとそれを彼の首筋にあてる。

「そのコップを壊されては、私がイオンに説教されてしまう…やめてもらおうか」
「やめておけ、セネト…俺までイオンに説教されてしまうだろ。あの地獄は、恐ろしいぞ?」

今まで黙って、赤灰色の髪をした青年・セネトとキリルのやり取りを見ていた黒髪の右目に眼帯をした男がため息をついた。

何が地獄なのかわからず、首をかしげたセネトは黒髪の男に訊ねてみるが軽くあしらわれてしまう。
抗議を諦めたセネトはコップをテーブルに置いて、両手を軽く上げると降参のポーズをとった。

それを見たキリルは、セネトの手首から手を離すと同時に首筋にあてていたクナイを引っ込める。

「理解が早くてよかった…イアン、止めるならば早めにしろ」
「そうは言うがな…こう見えて俺は病み上がりなんだが、キリル?」

黒髪の男・イアンが肩をすくめて答えると、ちらりとセネトの方へ目を向けた。

「それに、こいつはエレディアの者に手酷くやられたからな。そこは、説明してやったらどうだ?」
「…ふむ、私達をあの頭の固い連中と同じだと思われても困るしな。そうだな…簡単に説明すれば、テセリアハイトのとある貴族が――」

顎に手をあてたキリルは、説明しはじめる……



テセリアハイト王国のある貴族が、子飼いの没落貴族であるリグゼノに少女を消すよう命じた裏でセイドロード家当主に相談をしていたらしい…の粛清についてを。
それを請け負うかどうか…を決めかねていた時、リグゼノが少女を殺した――その時、すでにもう一人も殺害され吸血鬼となっていたわけだが。

妹を失った兄2人は、エレディア家とアードレア家の当主らの前で"血の誓約"をした。
…人命を危険にさらすフレネ村の者達への復讐――全てを滅ぼすという事を。
できぬ時、自らの生命をもって贖うという事を。

本来ならば、そのような私怨での"血の誓約"は許されないのだが……



「リグゼノ家に誓いをたてた分家の者達を殺害された件も考慮し、当主らはフレネ村を滅ぼす事を許した」

そこまで語ったキリルは、口の中を潤そうとお茶を一口飲んだ。
静かに聞いていたセネトだが何かを思い出した表情を浮かべ、イアンとキリルの顔を交互に見ながら訊ねる。

「ちょっと聞くんだが…"血の誓約"って、何だ?」
「エレディアとアードレアの"血の誓約"とは、自らの生命をかけて何かを成し遂げる…というものだ。成し遂げられれば問題はないが、もし成し遂げられなければ…その身に流れる血によって滅ぼされるという――別名"最期の誓い"と呼ばれるものだ」

そういえば教えるのを忘れていた、という表情をしたイアンが簡単に説明するとキリルは補足するように続けた。

「この誓いを破棄できるとすれば、主たるセイドロード家の血脈だけ…まぁ、わかりやすく言うと"血の誓約"という毒をセイドロードの血という解毒剤で中和する、という感じイメージだな」
「ルフェリスとヴァリスは養子…エレディアとアードレアの血は、一滴も引いていない」

息をついたイアンは言う…だから、エレディアとアードレアから遣いが来たのだと。
話を戻そうとキリルが小さく咳払いをして、もう一度お茶を飲んで口を開いた。

「あの2人が自ら期限というものを提示してきた、1年という時を…な。その約束の期限が、あの日だった――」

ヴェンデルとテルエルは、誓約が果たされたかどうかの確認…果たされていなかった場合、2人を処刑するよう命じられていたらしい。

「だが…同時期にセイドロード家当主であるが粛清をウィリアムス家に命じ、それを請け負ったのがダンフォース・ウィリアムスだ。あいつはヴェンデルとテルエルが誓約の見届け人であるのを知ってか知らずか…あの村へ派遣したら、そこに我が主やイアン、がいたという事だ」

小さくため息をついたキリルは、またお茶を飲んで口の中を潤した。
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