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3話「幼い邪悪[前編]~2人のトラブルメーカー~」
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「まぁ、制作する魔術士によりますから…流行りかどうかまでは知りませんがね。それにしても厄介なものを持っていますね、彼女は。本物かどうかはわからないですけど……」
顎に手をあてながら、クリストフはセネトの疑問に答える形で言う。
――実は、《メニートの呪具》には偽物が多く…今回のも本物であるかどうか判断がつかなかった。
「ふーん、なら…あのなりそこないを討伐して魔道具のブローチを回収すれば、本物か偽物かわかるよな!」
クリストフの言葉に名案が浮かんだというように何度も頷いたセネトは、急に動きを止めると静かに怒りを込めて口を開く。
「――あぁ、思いだした…あの、赤毛の吸血鬼をー!!まさか、またいるのか?」
「…変な対抗意識なんか持たないでくださいよ。というか…あの男はいないだろうし、魔道具を作れるほど器用じゃないですから」
呆れた面持ちでクリストフが、怒りをあらわにしているセネトの頭を軽くたたいた。
頭をおさえたセネトは、頬を膨らませながら心の底から叫ぶ。
「持ってるかー!!失礼な…って、それにしてもよ。お前…何気に、酷い言い様だな。それは置いておいて、誰が討伐するんだ?」
この場にいないとわかった上で何気に毒を吐いたクリストフに、セネトは苦笑しながら訊ねた。
きょとんとしているクリストフがなりそこないの女性の方に視線を向けると、彼女は荒い呼吸をしながらセネトだけを見ていた。
「誰って…あなたを見ているようですから、ねぇ。早めに倒さないと…」
「はい、クリストフ様の言う通りかと…この近くに墓地があるので――」
クリストフとヴァリスの2人は、面倒そうな表情を浮かべているセネトに言う。
ちなみに――先ほど、ヴァリスが言いかけたのは『呪具かもしれないものがまた発動すると、大変な事になる』というものだ。
「だぁー、やってやるわ!その代わり…おれのノルマを軽くしろよ、クリストフ!」
髪の毛をかきむしったセネトがクリストフに向けて指差すと、頷いたクリストフはさっさと行くように手を振った。
(なーんか、おれ…パシリにされてるような気がするんだが。気のせいか…?)
何となくそう思ったらしいセネトは首をかしげつつ、なりそこないの女性と対峙する。
「――つーわけで、俺が相手だ…と、一度こんな感じでいってみたかったー」
両手をかざして術式を描きだしたセネトが不敵な笑みを浮かべると、何故かクリストフは白い眼を向けてきた。
「…全然かっこよくないですよ、セネト。何か、やられ役が言いそうな台詞ですし…」
「うるせー…こうなったら、一発でやってやる!"絶対たる炎によりて、自然の摂理に反した者達を大地に還せ!"」
腹を立てたセネトが術式に魔力を込めて口早に詠唱し終えると、術式からマグマのような炎がうねりながら術者であるセネトの周囲を包み込んだ。
セネトがゆっくりと両腕を上げると、うねっていた炎が手のひらに円を描くように集まった。
「これならば、苦しみや痛みを感じずに済むはずだよな…ついでに、今度こそかっこよく決められる上に手間もないし」
「…本音は最後の部分、と思ってよいのでしょうか?」
セネトの発言に首をかしげたヴァリスがクリストフに訊ねると、頷いた彼はため息交じりに答える。
「その本音部分さえ隠しておけば、退魔士としてもかっこいいと思うんですが。本当に、かっこよく言ってみたいのなら…ね」
「だー!!外野ども、うるさいぞ!とにかく、これで終わりだ」
視線だけをクリストフとヴァリスに向けたセネトは文句を言うと、手のひらに集めている魔法の炎をなりそこないの女性に向けて放とうとした。
…だが、一瞬の隙をついてなりそこないの女性が長く伸ばした爪をセネトへ向けて攻撃しようとする。
「すみません…これは回収させていただきます」
語りかけるように言ったヴァリスが素早くなりそこないの女性とセネトの間に割って入ると抜いた短刀で爪を受け止めて、隙をついてブローチを奪い取るとクリストフに投げ渡した。
そして、そのまま押し斬るようにするとなりそこないの女性は大きく後ろへ飛び退く。
「はぁ…びっくりした。ヴァリス、サンキュー!」
ヴァリスに礼を言ったセネトが、なりそこないの女性に向けて魔法の炎を放った。
それに気づいたらしいなりそこないの女性はこの場から逃れようとする、が彼女の身体は動かず逃げられない。
「逃げられてしまうと少々厄介になりそうなので、封じさせてもらいましたよ」
緊縛の魔法を使ったクリストフが小さくため息をついていると、セネトはむっとしながら文句を言う。
「魔法で縛れるんなら、最初からそうしてほしかったな…」
「生半可なものだと、すぐに解かれてしまうかもしれないので特殊な形にしたんですよ。文句あるならば、後でゆっくり身体に教えたあげますよ?」
ひきつったような笑みを浮かべたクリストフに、セネトはゆっくりと首を横にふった。
「グッ…ガッ!!」
魔法で拘束されているなりそこないの女性はなんとか魔法を解こうともがく、が拘束の効果は消えず。
そのまま、セネトの放った魔法の炎に飲み込まれていった……
***
顎に手をあてながら、クリストフはセネトの疑問に答える形で言う。
――実は、《メニートの呪具》には偽物が多く…今回のも本物であるかどうか判断がつかなかった。
「ふーん、なら…あのなりそこないを討伐して魔道具のブローチを回収すれば、本物か偽物かわかるよな!」
クリストフの言葉に名案が浮かんだというように何度も頷いたセネトは、急に動きを止めると静かに怒りを込めて口を開く。
「――あぁ、思いだした…あの、赤毛の吸血鬼をー!!まさか、またいるのか?」
「…変な対抗意識なんか持たないでくださいよ。というか…あの男はいないだろうし、魔道具を作れるほど器用じゃないですから」
呆れた面持ちでクリストフが、怒りをあらわにしているセネトの頭を軽くたたいた。
頭をおさえたセネトは、頬を膨らませながら心の底から叫ぶ。
「持ってるかー!!失礼な…って、それにしてもよ。お前…何気に、酷い言い様だな。それは置いておいて、誰が討伐するんだ?」
この場にいないとわかった上で何気に毒を吐いたクリストフに、セネトは苦笑しながら訊ねた。
きょとんとしているクリストフがなりそこないの女性の方に視線を向けると、彼女は荒い呼吸をしながらセネトだけを見ていた。
「誰って…あなたを見ているようですから、ねぇ。早めに倒さないと…」
「はい、クリストフ様の言う通りかと…この近くに墓地があるので――」
クリストフとヴァリスの2人は、面倒そうな表情を浮かべているセネトに言う。
ちなみに――先ほど、ヴァリスが言いかけたのは『呪具かもしれないものがまた発動すると、大変な事になる』というものだ。
「だぁー、やってやるわ!その代わり…おれのノルマを軽くしろよ、クリストフ!」
髪の毛をかきむしったセネトがクリストフに向けて指差すと、頷いたクリストフはさっさと行くように手を振った。
(なーんか、おれ…パシリにされてるような気がするんだが。気のせいか…?)
何となくそう思ったらしいセネトは首をかしげつつ、なりそこないの女性と対峙する。
「――つーわけで、俺が相手だ…と、一度こんな感じでいってみたかったー」
両手をかざして術式を描きだしたセネトが不敵な笑みを浮かべると、何故かクリストフは白い眼を向けてきた。
「…全然かっこよくないですよ、セネト。何か、やられ役が言いそうな台詞ですし…」
「うるせー…こうなったら、一発でやってやる!"絶対たる炎によりて、自然の摂理に反した者達を大地に還せ!"」
腹を立てたセネトが術式に魔力を込めて口早に詠唱し終えると、術式からマグマのような炎がうねりながら術者であるセネトの周囲を包み込んだ。
セネトがゆっくりと両腕を上げると、うねっていた炎が手のひらに円を描くように集まった。
「これならば、苦しみや痛みを感じずに済むはずだよな…ついでに、今度こそかっこよく決められる上に手間もないし」
「…本音は最後の部分、と思ってよいのでしょうか?」
セネトの発言に首をかしげたヴァリスがクリストフに訊ねると、頷いた彼はため息交じりに答える。
「その本音部分さえ隠しておけば、退魔士としてもかっこいいと思うんですが。本当に、かっこよく言ってみたいのなら…ね」
「だー!!外野ども、うるさいぞ!とにかく、これで終わりだ」
視線だけをクリストフとヴァリスに向けたセネトは文句を言うと、手のひらに集めている魔法の炎をなりそこないの女性に向けて放とうとした。
…だが、一瞬の隙をついてなりそこないの女性が長く伸ばした爪をセネトへ向けて攻撃しようとする。
「すみません…これは回収させていただきます」
語りかけるように言ったヴァリスが素早くなりそこないの女性とセネトの間に割って入ると抜いた短刀で爪を受け止めて、隙をついてブローチを奪い取るとクリストフに投げ渡した。
そして、そのまま押し斬るようにするとなりそこないの女性は大きく後ろへ飛び退く。
「はぁ…びっくりした。ヴァリス、サンキュー!」
ヴァリスに礼を言ったセネトが、なりそこないの女性に向けて魔法の炎を放った。
それに気づいたらしいなりそこないの女性はこの場から逃れようとする、が彼女の身体は動かず逃げられない。
「逃げられてしまうと少々厄介になりそうなので、封じさせてもらいましたよ」
緊縛の魔法を使ったクリストフが小さくため息をついていると、セネトはむっとしながら文句を言う。
「魔法で縛れるんなら、最初からそうしてほしかったな…」
「生半可なものだと、すぐに解かれてしまうかもしれないので特殊な形にしたんですよ。文句あるならば、後でゆっくり身体に教えたあげますよ?」
ひきつったような笑みを浮かべたクリストフに、セネトはゆっくりと首を横にふった。
「グッ…ガッ!!」
魔法で拘束されているなりそこないの女性はなんとか魔法を解こうともがく、が拘束の効果は消えず。
そのまま、セネトの放った魔法の炎に飲み込まれていった……
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