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47 ラメタルの民に告げる

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 ジェスのもう一人のお祖父様のセフェム様が門扉を越えて来て、僕は腰を抜かしそうになった。

 だって顔が狼なんだ。それも銀色の狼で、その狼が僕を見下ろして、

「お前がジェスの伴侶で番いかあ。ん、あ、あれ?腹に別のマナがある。タク、タク、どゆこと?」

 と今度は横にいるターク先生を見下した。ターク先生は困った顔をしてから、

「やっぱりイベールにすれば良かったかなあ……。でも感知能力はセフェムの方が上だし……」

と一言呟いて、

「彼はジェスの番いで、サリオンといいます。お腹に赤ちゃんがいるのですよ」

 とセフェム様に話した。セフェム様は何度も首を傾げてから、

「宿り実?腹ん中に?」

と僕とジェスを交互に見て、

「すげえ、な、タク!腹ん中に宿り木がある!」

ターク先生を抱きしめてくるくる回り出した。

「よく分かっていないでしょう、貴方は。サリオン、この少し飲み込みの悪い獣面が僕のもう一人の伴侶で残念な番いのセフェムです。ジェスの祖父でもありますよ」

 ジェスは

「よお、爺様」

と小さな手を挙げて挨拶をする。

「次王座決まった?」

「んー、決まんないなあ。とりあえずジェスとサリオンで一度行ってこい。赤ん坊出してから」

「親父と顔を合わせたくないなあ」

 セフェム様がしゃがみこんでふさふさの尻尾を振りながら、ジェスの頭を撫でて、

「タクから、こっちで番い見つけたって聞かされて驚いてたけど、喜んでたぜ。まずは結婚問題はクリアだけど、王位問題がなあ」

 なんて鼻に皺を寄せる。

「まだまだレームだって元気ですし、放っておきましょう。ジェスの父親なのに、レームは王座から逃れて冒険者になりたいだけです。ガリウスみたいにですね」

 ターク先生がセフェム様の腕に抱えられ、ガリウス王もやってきた。高台にある城の庭に村人が集まっていて、炊き出しを始めている。湯を沸かしタオルを出したテレサと、温かいスープやパンを用意しているのはメーテルとフェンナだ。

「さあ、始めましょう。ガルドバルド大陸王族の力の見せ所です」

 僕はガリウス王の左肩に乗せられ、ターク先生は右肩に乗せて、セフェム様がジェスを肩に乗せる。ガリウス王の肩にセフェム様は手をやり、

「魔法陣展開、遠見」

と呟く。すると僕の面前に見たことのない建物と、そこかしこでぼんやりと青く光るものが見えた。

「サリオン、見えますか?この青いマナはラメタルの民のものです。セフェムを通して僕たちはレガリア国の王都を可視化しています。さあ、あなたの出番ですよ」

 僕は頷いてガリウス王の肩の上で立ち上がるとセフェム様が

「魔法陣展開、遠声、拡散!」

と更に魔法陣を展開する。その天空に浮かぶ魔法陣に向かって僕は声を張った。

「僕はラメタル国、国王になる者だ。ラメタルの民に告げる。今一度ラメタルに戻りたい者は手を挙げよ。戻りたいと声を出し願うのだ。そなたたちを掬い上げる光の手が差し伸べらるであろう」

 するとほんの少しだけ間があったが青いマナが細く高く浮かび上がり、

「魔法陣展開、大移動陣」

ガリウス王が静かに両手を広げると、ターク先生が魔法陣を展開して、

「ガリウス、分散します」

とガリウス王の大移動陣を細かく散らし、その青いマナごと人々を包みあげると、天空にある透明な板敷に乗せていく。レガリア国では空を見て叫び声が出ているようだ。

「防御陣、発動!」

 ジェスが大移動陣の周りにジェスの魔法陣を展開する。ジェスの防御魔法陣はすごいんだ。攻撃されるとその攻撃を返してしまうんだ。それは槍でも弓でも同じで、下からの攻撃は無駄に終わる。

 こうしてレガリア国の隅々から百人程度のラメタルの民を掬い上げることが出来た。その後は、セフェム様はぐったり倒れてしまい、ガリウス王に担がれて寝台に押し込まれ、僕は心配になりながらも新しいラメタルの民に王都での生活の許可と、ガルドバルド大陸の民との共生について話をする。

「アル!アルフィート!」

「ライカ、ライカァ……俺、俺もう……」

 裸で救出された、酷く痛めつけられていたらしい人がライカの伴侶のようで、外で湯に浸けられて傷を治療されていた。

 タオルを掛けた下腹部が薄く光って点滅をしている。他の人を治癒していたターク先生が慌ててやってきて、

「降りてきているのですか、腹実が」

とアルフィートに聞く。アルフィートは頷いて、

「もう二日目になる。貴族サロンで引き出されて、でも出なくて……すごく叩かれた。ライカ、腹実が死んじゃったらどうしよう……」

そう言いながら堪えきれず泣き出した。
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