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45 ラメタルの人々

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 何故か隠れるように穴暮らしをしていたラメタルの人々はガリウス王に恐れをなしながらも、足元にやってきて僕らに話したのだ。

「ラメタルの王に会わせて下さい」

 一番初めに一声したのはライカと名乗った若い赤髪の男の人で、この地域の村長の血筋だと言うから、僕らはライカとライカの元に集まった村人たち数人を王都に案内した。その他の人はまた穴に戻ってしまったんだ。

「これは……すごい。見たことがないです。煮炊きは外ですか?」

 僕はジェスと顔を見合わせると空き家の一つに入って、ジェスがプレートに手を合わせて、熱導プレートを起動させた。

「煮炊きはこちらだな。鍋はなんでも構わないが、素焼きのものはやめたほうがいい」

 明かりが感応式でついたり消えたりするのに腰を抜かし、ライカは初めて見る器具に目を輝かせながらも、眉をひそめている。

「少し遅くなっているな。ジェス、サリオン、移動陣を使おう。俺は後から行く」

 僕とジェスをライカたちの小集団と一緒にすると、ガリウス王は低い通る声で、

「魔法陣発動」

と指を大地に向ける。そして金のマナで魔法陣を書き上げると、僕たちを魔法陣の中に入れ浮かび上げた。

「お前ら動くなよ。爺様、上げてくれ」

 ジェスの声にガリウス王が頷く。

「移動陣展開」

 僕らは浮かび上がったまま王城へ移動し、中庭に降ろされた。ガリウス王の大きな手に包まれたような陣は消えて、女官長の黒いお仕着せドレスのメーテルがやってきた。

「デメテル様っ!」

 メーテルの前で土下座するのは、ラメタルの人々だ。

「私の名はメーテル。デメテルは確かに私の祖母です」

 ライカが

「ラメタル国最後の女王様の絵姿に瓜二つのあなた様は間違いなく、ラメタル王族です。メーテル様、ラメタルの民をお救いください」

と座り込んで頭を下げる。

「私には何の力もありません」

 メーテルがきっぱりと言い捨てる。ライカの顔に絶望感が漂うのが、僕にも分かった。

「そんな……アルフィートが……」

 ライカは力が抜けて座り込んでしまう。

「こちらのサリオン殿下こそが、ラメタルの新王でございます。私に頼むことなど筋違いです」

 メーテルは僕に頭を下げる。ライカはメーテルと僕を見比べて困惑していた。

「僕は腹実を出した後、ジェスといずれこの地を統治します。メーテルは僕の育ての親。ラメタルの民は僕の民でもあります」

「腹実……アルフィートもそうなんです!俺のマナがないと厳しいのに、人狩りに連れて行かれたのです。腹実排出は貴族の夜サロン格好の見世物なんです。ちくしょう、水なんて俺が汲みに行けばよかったのに!」

 なんてことを……。ラメタルの民は隠れてずっと生きて来たのだと話してくれたが、僕は腹実のアルフィートが、心配でたまらない。ジェスもおなじようだった。

「伴侶のいない排出はどうなる?」

 ジェスが僕の手を繋ぎながら聞いた。

「一人のマナでは激痛を伴います。腹実排出はマナの量で苦楽が変わります。時には死を誘います」

 僕はジェスの手を握り返した。アルフィートを助けたい。でも、どうしたら。

「おやおや、どうしたのです?皆さん」

「ターク先生」

 ターク先生がガリウス王に抱っこされて帰って来る。ライカは三メートルの巨人と一メートルの小人を見つめてから、顔を真っ赤にする。

「巨人と小人……。物語の中の……まさか!」

 ターク先生はガリウス王から飛び降りると、

「物語はほんのひと粒の真実が存在して膨らむものですよ。あとは作者の想像力ですね」

 なんてライカに歩みよって行き、

「ラメタルの民を助けることは可能です。ですが、条件があります」

と話している。

「なんでもします!」

 ライカの言葉に、ラメタルの民が一同に頷いた。

「命も差し出せます!」

 連れて行かれたのは、腹実ばかりで、今王城にいるのはその伴侶らしい。

「命はいりません。ただ、受け入れてほしいのです。ガルドバルド大陸の僕らという存在を認めて、一緒に王都で暮らしてください」
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