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23 魔法学舎の修了式とそして
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次の日。
皆は国に定められ、半年間週三回魔法学舎に通っていた。今日で最後になる。
皆で集まるとターク先生が羊皮紙に不思議な、多分、文字らしいものが書かれた物を見せてくれた。
「修了証書、ドナムンド・ミューラー殿。貴殿はよく学び最終試験に合格しました。よって魔法学舎修了ならびに卒業を証明するものとする。王領魔法学舎校長並びに、レムリカント王国王」
同じように、ミーメとスター、それからザックに送られて、僕とジェスにはなかった。
「こちらは日本語で書いてあります。僕にしか書けないものです。マナを込めてご覧なさい」
『ニホンゴ』また不思議な文字があるものだ。ドナムンドたちがマナを羊皮紙に込めると、金色の王印が浮かんでくる。
「わ……」
「これで王国お墨付きだと分かります。あなたたちはどこにだって行けるし、何にだってなれます」
ドナムンドがミーメとスターの間で笑っている。二人はドナムンドの魔法師兼伴侶になった。内情はスターが伴侶で、ミーメとは白い結婚になるそうだ。爵位持ちは異性の伴侶を持つのが当たり前だからだ。
ドナムンドは昨日ミューラー子爵城で皆がいる前で僕に、
「サリオン伴侶になって欲しい」
と告げてきた。
「ドナムンド、無理だ」
そう、無理だ。僕は後退りした。
「何故?君が王族だからか?関係ない。僕は『唯のサリオン』に恋をしたんだ」
「駄目だよ、無理だ。僕には婚約者がいる」
「婚約を破棄できないのか?君は王太子の弟だろう」
僕は首を横に振った。
「それをすれば国が乱れる。爵位持ちの伴侶は女性がふさわしいよ、ドナムンド・ミューラー新子爵」
ドナムンドは僕の拒絶を理解してくれ、握手を求めてきた。
「では、僕の良き友になってくれ、サリオン」
僕は躊躇なく手を握る。社交界にも、貴族学舎にも行かない僕とは接点があまりないだろうが、王宮ホールでの社交界は数度あるから、離宮に呼ぶことは許されそうだ。
「よろしく、ドナムンド」
そんなふうに笑った僕は、明らかに安堵しているスターを見て理解した。スターはドナムンドのことが好きなんだ。
「なあ、ターク先生。サリオンとジェスは卒業じゃねーの?」
ザックがそう言うと、ターク先生は笑って僕とジェスを見た。
「卒業ですよ。でも、二人とも親に内緒で魔法学舎に来ているので、修了書は出せません。卒業は間違いないですが」
ジェスと僕は顔をみかわせてしまった。確かに父様には話していない。
「ジェスも?」
「サリオンもか?」
「僕はセシル兄様に言われて」
「問答無用でか。相変わらずセシルらしい」
え、セシル兄様を知っているの?どうしてと聞く前に卒業式は終わり、卒業祝いという名目の炭火焼焼き鳥を食べることになった。焼くのはなぜかクロムだ。
「ドナムンドは昨日成人しましたね。麦酒を差し上げましょう」
ドナムンドのところに麦酒の木杯がやってくる。
「あ、俺もーー」
なんてジェスが言うから、ザックも同じように言い始めた。
「だめだよ、ザック。ジェスは特に。まだ小さいんだからね」
僕が嗜めると、金の瞳をまん丸にしてから、
「ちぇ」
と横を向いた。そんなジェスが可愛くて頭を撫でると、ターク先生がすごく嬉しそうに笑う。
「ザックはギルドでしたね」
「おう、最高の人生にしてやる」
そんな風に息巻いて、ザックは麦酒に目を回しているドナムンドのところにからかいに行ったらしい。
卒業っていっても後から来た僕は三ヶ月くらいしかいなかった。もうジェスとも会えなくなるのかなと思うと、レモネードが苦く感じた。
「サリオンとジェスは僕の助手として働いてもらいますからね、まだまだ通ってもらいますよ」
ターク先生が僕の背中をパンッと叩き、ジェスの方に向く。
「サリオン、また、ここに来られるのか!!ば……先生、本当か!」
「ええ、ジェスも、よろしくお願いしますね」
僕はジェスを抱き上げて、抱きしめた。ジェスも僕の首に抱きついて、僕は嬉しくなってしまった。ジェスは小さくて細くて可愛い、そして大好きだ。
「ばっか、降ろせよ」
「嫌だよ、ジェス」
「仲がよろしいことですが、学舎は今年度は閉じますよ。次の春、また会いましょう」
ターク先生の言葉は重かった。
「…………はい」
僕はジェスを降すとテラスに座る。胸が痛くて、額を膝につけた。
「泣くなよ、サリオン」
「泣いてないよ。少し我慢するのが辛いだけ。半年も会えないなんて。嫌だな、我慢するの慣れてるのに。ごめんなさい、先に帰るね。また、来年」
僕は転移陣の組み込まれた指輪を翳した。口の中で転移と呟くと、既に身体は陣に包まれる。
「クロルは後で届けましょう」
ターク先生のそんな声が聞こえてきた。
※※※※※※※※※※※※
「クロル、置いて行かれましたね」
僕は意外な展開に驚いています。サリオンがあれほどジェスに懐くとは思わなかったのです。
「殿下はジェスを可愛がることで、自身を癒しているのかもしれません。これは自立の一歩でしょう」
「では、ラムダに書状を送りましょう。僕も動き出しますよ」
ーーー
二日ぶりです。需要のあった方すみません。エロ足りなさすぎて、短編に暴走していました。満足?したので、コツコツ書いていきます。
皆は国に定められ、半年間週三回魔法学舎に通っていた。今日で最後になる。
皆で集まるとターク先生が羊皮紙に不思議な、多分、文字らしいものが書かれた物を見せてくれた。
「修了証書、ドナムンド・ミューラー殿。貴殿はよく学び最終試験に合格しました。よって魔法学舎修了ならびに卒業を証明するものとする。王領魔法学舎校長並びに、レムリカント王国王」
同じように、ミーメとスター、それからザックに送られて、僕とジェスにはなかった。
「こちらは日本語で書いてあります。僕にしか書けないものです。マナを込めてご覧なさい」
『ニホンゴ』また不思議な文字があるものだ。ドナムンドたちがマナを羊皮紙に込めると、金色の王印が浮かんでくる。
「わ……」
「これで王国お墨付きだと分かります。あなたたちはどこにだって行けるし、何にだってなれます」
ドナムンドがミーメとスターの間で笑っている。二人はドナムンドの魔法師兼伴侶になった。内情はスターが伴侶で、ミーメとは白い結婚になるそうだ。爵位持ちは異性の伴侶を持つのが当たり前だからだ。
ドナムンドは昨日ミューラー子爵城で皆がいる前で僕に、
「サリオン伴侶になって欲しい」
と告げてきた。
「ドナムンド、無理だ」
そう、無理だ。僕は後退りした。
「何故?君が王族だからか?関係ない。僕は『唯のサリオン』に恋をしたんだ」
「駄目だよ、無理だ。僕には婚約者がいる」
「婚約を破棄できないのか?君は王太子の弟だろう」
僕は首を横に振った。
「それをすれば国が乱れる。爵位持ちの伴侶は女性がふさわしいよ、ドナムンド・ミューラー新子爵」
ドナムンドは僕の拒絶を理解してくれ、握手を求めてきた。
「では、僕の良き友になってくれ、サリオン」
僕は躊躇なく手を握る。社交界にも、貴族学舎にも行かない僕とは接点があまりないだろうが、王宮ホールでの社交界は数度あるから、離宮に呼ぶことは許されそうだ。
「よろしく、ドナムンド」
そんなふうに笑った僕は、明らかに安堵しているスターを見て理解した。スターはドナムンドのことが好きなんだ。
「なあ、ターク先生。サリオンとジェスは卒業じゃねーの?」
ザックがそう言うと、ターク先生は笑って僕とジェスを見た。
「卒業ですよ。でも、二人とも親に内緒で魔法学舎に来ているので、修了書は出せません。卒業は間違いないですが」
ジェスと僕は顔をみかわせてしまった。確かに父様には話していない。
「ジェスも?」
「サリオンもか?」
「僕はセシル兄様に言われて」
「問答無用でか。相変わらずセシルらしい」
え、セシル兄様を知っているの?どうしてと聞く前に卒業式は終わり、卒業祝いという名目の炭火焼焼き鳥を食べることになった。焼くのはなぜかクロムだ。
「ドナムンドは昨日成人しましたね。麦酒を差し上げましょう」
ドナムンドのところに麦酒の木杯がやってくる。
「あ、俺もーー」
なんてジェスが言うから、ザックも同じように言い始めた。
「だめだよ、ザック。ジェスは特に。まだ小さいんだからね」
僕が嗜めると、金の瞳をまん丸にしてから、
「ちぇ」
と横を向いた。そんなジェスが可愛くて頭を撫でると、ターク先生がすごく嬉しそうに笑う。
「ザックはギルドでしたね」
「おう、最高の人生にしてやる」
そんな風に息巻いて、ザックは麦酒に目を回しているドナムンドのところにからかいに行ったらしい。
卒業っていっても後から来た僕は三ヶ月くらいしかいなかった。もうジェスとも会えなくなるのかなと思うと、レモネードが苦く感じた。
「サリオンとジェスは僕の助手として働いてもらいますからね、まだまだ通ってもらいますよ」
ターク先生が僕の背中をパンッと叩き、ジェスの方に向く。
「サリオン、また、ここに来られるのか!!ば……先生、本当か!」
「ええ、ジェスも、よろしくお願いしますね」
僕はジェスを抱き上げて、抱きしめた。ジェスも僕の首に抱きついて、僕は嬉しくなってしまった。ジェスは小さくて細くて可愛い、そして大好きだ。
「ばっか、降ろせよ」
「嫌だよ、ジェス」
「仲がよろしいことですが、学舎は今年度は閉じますよ。次の春、また会いましょう」
ターク先生の言葉は重かった。
「…………はい」
僕はジェスを降すとテラスに座る。胸が痛くて、額を膝につけた。
「泣くなよ、サリオン」
「泣いてないよ。少し我慢するのが辛いだけ。半年も会えないなんて。嫌だな、我慢するの慣れてるのに。ごめんなさい、先に帰るね。また、来年」
僕は転移陣の組み込まれた指輪を翳した。口の中で転移と呟くと、既に身体は陣に包まれる。
「クロルは後で届けましょう」
ターク先生のそんな声が聞こえてきた。
※※※※※※※※※※※※
「クロル、置いて行かれましたね」
僕は意外な展開に驚いています。サリオンがあれほどジェスに懐くとは思わなかったのです。
「殿下はジェスを可愛がることで、自身を癒しているのかもしれません。これは自立の一歩でしょう」
「では、ラムダに書状を送りましょう。僕も動き出しますよ」
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