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19 魔法学舎最終試験へ
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二日目も三日目もあっという間に過ぎて、僕は貴族の硬い革靴をやめて布靴で森を駆け抜けることが出来る様になったし、魔法陣もいくつか覚えた。
その分夜魔獣になっても眠たくて、室内で眠ることが多くなったからテレサもゆっくり休めるようになったみたいだ。
「では、魔法模擬戦といきましょうか」
食後の午後の訓練では二組に分かれて実戦形式で陣を展開する。マナを制御出来るようになった僕らにターク先生は容赦がなかった。
ミーメとスターは双子だから魔法供給が出来る。ターク先生対ミーメとスターは、ミーメの爆裂魔法陣の威力が足りなくて、マナを背後から供給するスターの支援が遅く、ミーメは防御魔法陣に包まれるところまで飛ばされた。
「はい、次は?」
ドナムンドが手を挙げて僕を見たから頷こうとしていたら、ジェスが僕の服の裾を引っ張る。どうやら僕と組みたいみたいだ。真っ赤になったまま何度も引っ張るから、僕はジェスの手を繋いで手を挙げる。
「ドナムンド、ごめんね。僕、ジェスと組むよ」
ドナムンドは貴族らしく肩を竦めると、ザックに手を差し出した。
「あまりもの同士だな。派手に行こうぜ」
「ああ、そうだね」
ザックはミーメに組んで欲しいと言ったのだが、ミーメは弟のスターの方が相性が良いからとあっさりと断りを入れていて、落胆しているところだった。
ザックの言葉通り派手だった。ドナムンドの捕縛魔法陣にザックの爆裂魔法陣。ターク先生を足止めしてからの攻撃に、砂埃が舞った。その砂埃から金の防御魔法陣が左右に弾けてドナムンドとザックに当たり、二人を跳ね飛ばす。自分を守った防御陣を使い攻撃にするなんて、こんな使い方もあるんだ。
「サリオン、実験してた奴、使おう」
ジェスがターク先生を見つめながら僕の手を握りしめる。そんな小さな手を握り返して、
「分かったよ」
とジェスの背中に触れる。
「……んっ」
ジェスが小さく息を吐いた。
「さあ、おいでなさい!」
ターク先生はまるで悪役じみた言葉遣いで、僕らを煽る。
「じゃあ、頼むぜ」
僕は頷いて索敵魔法陣を展開してから、ジェスの周りに防御魔法陣を展開する。
「加速魔法陣展開、爆裂魔法陣っ!」
一瞬ジェスの身体が見えなくなり、ターク先生の目の前に入るとすぐに掌をターク先生に向ける。
「防御魔法陣展開」
ターク先生の防御魔法陣に僕の防御魔法陣をぶつけて相殺し、次に来るであろう攻撃を索敵する。ジェスの背後に火炎魔法陣の揺らぎを感じ、ジェスの背後に防御魔法陣を展開し直す。
「は、早い!では、瓦解魔法陣」
ターク先生が地に手を伸ばしかけるのを見て、
「加速魔法陣!」
ターク先生の目の前に入ったジェスが両手をターク先生の鼻前でパンっと鳴らす。
「う、きゃあっ!」
「イベル式ねこだまし」
ターク先生が尻餅をついて、僕らは思わず拳に力を入れた。
「ぃやったーー!から揚げーー!」
ミーメが何度も飛び上がり、僕は息を吐いて、
「ターク先生、大丈夫ですか?」
ターク先生に手を貸した。
「攻撃系の魔法陣はマナをかなり使います。ジェスだって無尽蔵ではないはずですよね」
ターク先生の指摘で僕は、
「あ、『解除』」
とジェスの背に手をかざした。ジェスは座り込んだままで、僕が手を貸そうとしていたら、
「や、や、やら。今、お前に触られると。ちょ、ちょっと、抜いてくるっ!」
抜く?何を?と聞く前にジェスは学舎に入ってしまう。
「サーリーオーン、何をしたのです?」
ターク先生の低い声に僕は、
「遠隔供給魔法陣をジェスの背に施しました」
そう告げた。本来魔法石に施して自分のマナを供給し続けるものだ。それを応用してジェスの背に触れることであらかじめ僕のマナとジェスのマナを結びつけたのだ。
ターク先生は目をまん丸にして、
「双子ならいざ知らず……よほどマナの質が合うのですね。しかもサリオン創造の魔法陣ですか」
と僕が魔法石に写した陣を眺めて、軽く指を引いた。ターク先生お得意の複写魔法陣だ。
「ターク先生、明日はから揚げー!!あたしたちの勝ちー!」
「はいはい、山盛り作りますよ」
そんな話をしているとジェスが戻ってきたからジェスに、
「ちゃんと抜けた?」
と聞いてみた。
「あ、ああ?お前、意味分かってない」
ジェスが僕を遠ざけようとする。ターク先生は笑いながら、
「力が余って、ですか。サリオン、早めに解除してあげてくださいねー」
なんてさらに笑った。ともあれ、最終試験に向かうための権利は得たわけだ。
ドナムンドの子爵領奪還作戦のための話し合いは、明日のから揚げと一緒にとなったが、なによりと作戦立案と一泊することだ。僕は心配で心配でターク先生に相談したがターク先生は、
「個人部屋ですから、大丈夫ですよ」
なんて言われてしまった。
その分夜魔獣になっても眠たくて、室内で眠ることが多くなったからテレサもゆっくり休めるようになったみたいだ。
「では、魔法模擬戦といきましょうか」
食後の午後の訓練では二組に分かれて実戦形式で陣を展開する。マナを制御出来るようになった僕らにターク先生は容赦がなかった。
ミーメとスターは双子だから魔法供給が出来る。ターク先生対ミーメとスターは、ミーメの爆裂魔法陣の威力が足りなくて、マナを背後から供給するスターの支援が遅く、ミーメは防御魔法陣に包まれるところまで飛ばされた。
「はい、次は?」
ドナムンドが手を挙げて僕を見たから頷こうとしていたら、ジェスが僕の服の裾を引っ張る。どうやら僕と組みたいみたいだ。真っ赤になったまま何度も引っ張るから、僕はジェスの手を繋いで手を挙げる。
「ドナムンド、ごめんね。僕、ジェスと組むよ」
ドナムンドは貴族らしく肩を竦めると、ザックに手を差し出した。
「あまりもの同士だな。派手に行こうぜ」
「ああ、そうだね」
ザックはミーメに組んで欲しいと言ったのだが、ミーメは弟のスターの方が相性が良いからとあっさりと断りを入れていて、落胆しているところだった。
ザックの言葉通り派手だった。ドナムンドの捕縛魔法陣にザックの爆裂魔法陣。ターク先生を足止めしてからの攻撃に、砂埃が舞った。その砂埃から金の防御魔法陣が左右に弾けてドナムンドとザックに当たり、二人を跳ね飛ばす。自分を守った防御陣を使い攻撃にするなんて、こんな使い方もあるんだ。
「サリオン、実験してた奴、使おう」
ジェスがターク先生を見つめながら僕の手を握りしめる。そんな小さな手を握り返して、
「分かったよ」
とジェスの背中に触れる。
「……んっ」
ジェスが小さく息を吐いた。
「さあ、おいでなさい!」
ターク先生はまるで悪役じみた言葉遣いで、僕らを煽る。
「じゃあ、頼むぜ」
僕は頷いて索敵魔法陣を展開してから、ジェスの周りに防御魔法陣を展開する。
「加速魔法陣展開、爆裂魔法陣っ!」
一瞬ジェスの身体が見えなくなり、ターク先生の目の前に入るとすぐに掌をターク先生に向ける。
「防御魔法陣展開」
ターク先生の防御魔法陣に僕の防御魔法陣をぶつけて相殺し、次に来るであろう攻撃を索敵する。ジェスの背後に火炎魔法陣の揺らぎを感じ、ジェスの背後に防御魔法陣を展開し直す。
「は、早い!では、瓦解魔法陣」
ターク先生が地に手を伸ばしかけるのを見て、
「加速魔法陣!」
ターク先生の目の前に入ったジェスが両手をターク先生の鼻前でパンっと鳴らす。
「う、きゃあっ!」
「イベル式ねこだまし」
ターク先生が尻餅をついて、僕らは思わず拳に力を入れた。
「ぃやったーー!から揚げーー!」
ミーメが何度も飛び上がり、僕は息を吐いて、
「ターク先生、大丈夫ですか?」
ターク先生に手を貸した。
「攻撃系の魔法陣はマナをかなり使います。ジェスだって無尽蔵ではないはずですよね」
ターク先生の指摘で僕は、
「あ、『解除』」
とジェスの背に手をかざした。ジェスは座り込んだままで、僕が手を貸そうとしていたら、
「や、や、やら。今、お前に触られると。ちょ、ちょっと、抜いてくるっ!」
抜く?何を?と聞く前にジェスは学舎に入ってしまう。
「サーリーオーン、何をしたのです?」
ターク先生の低い声に僕は、
「遠隔供給魔法陣をジェスの背に施しました」
そう告げた。本来魔法石に施して自分のマナを供給し続けるものだ。それを応用してジェスの背に触れることであらかじめ僕のマナとジェスのマナを結びつけたのだ。
ターク先生は目をまん丸にして、
「双子ならいざ知らず……よほどマナの質が合うのですね。しかもサリオン創造の魔法陣ですか」
と僕が魔法石に写した陣を眺めて、軽く指を引いた。ターク先生お得意の複写魔法陣だ。
「ターク先生、明日はから揚げー!!あたしたちの勝ちー!」
「はいはい、山盛り作りますよ」
そんな話をしているとジェスが戻ってきたからジェスに、
「ちゃんと抜けた?」
と聞いてみた。
「あ、ああ?お前、意味分かってない」
ジェスが僕を遠ざけようとする。ターク先生は笑いながら、
「力が余って、ですか。サリオン、早めに解除してあげてくださいねー」
なんてさらに笑った。ともあれ、最終試験に向かうための権利は得たわけだ。
ドナムンドの子爵領奪還作戦のための話し合いは、明日のから揚げと一緒にとなったが、なによりと作戦立案と一泊することだ。僕は心配で心配でターク先生に相談したがターク先生は、
「個人部屋ですから、大丈夫ですよ」
なんて言われてしまった。
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