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番になったばかりのαが、記憶喪失になってしまうお話。
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スマホの終話ボタンを押さないまま、一心不乱に走り出した。
ナースの声がスピーカーから漏れている。
『○○さんの番のΩさんですか?今、αさんが事故で病院に運ばれまして。総合病院の……』
目の前が真っ暗になった。
先日、番になったばかりのαが意識不明で運ばれたとの電話。
病院に着くと、αは沢山の管を繋いだ状態で眠っていた。
「なんで……」
体に大怪我を負っているものの、顔は綺麗なまま。
眠っているだけにしか見えない。
今朝、仕事に見送った時は変わらぬ笑顔を見せてくれていたのに。
現状を受け入れられない。
ゆっくりと目を開けて「なんて顔してんだよ」って、そんな風に言われる気がして、
一時も離れられず、一睡もできず、αの目覚める瞬間を待った。
Ωの望みは叶わぬまま、時間だけが過ぎていく。
「命に別状はないの。いつ目覚めるかは、本人次第ね」
ナースが言う。
後に知ったのは、暴走した車に撥ねられそうになった子供を助けて、自分が犠牲になったと。
生きているのが奇跡と言えるほど、大きな事故だった。
「なぁ、起きてよ。寂しいよ」
αに話かけても反応はない。
「Ωさんも、ちゃんと食べて休んでください。そんなんじゃ、αさんが目覚めた時に悲しみますよ」
「はい……」
分かっていても、食欲はない。
頸の歯型がΩを慰めるように、ズキズキと痛む。
無情にも変化のないまま三ヶ月が過ぎた。
流石に仕事に復帰せざるを得なかったΩは、病院と仕事の往復に疲弊していた。
それでもαは絶対に目覚めると信じて通い詰める。
その願いがようやく叶えられた。
ある日病室に行くと、αがボヤッと天井を眺めている。
「α?目覚めたの?」
「……あなたは、誰?」
αは記憶を失っていた。
『僕は、番だよ』
その一言は言えなかった。
忘れられていたショックに、言葉を失い立ち尽くす。
後から入室したナースが、慌てて主治医を呼びに行った。
αが言う。
「教えてください。ここは病院ですよね?俺は一体なぜこんな所にいるんですか?」
αは事故をする前の記憶からないようだ。
主治医から全ての説明を受けたαは、ショックで頭を抱えた。
「自分の名前は、分かります。それより、番がいたなんて……」
パートナーのことを何一つ思い出せない自分を悔やんでいるようだ。
主治医がΩを紹介しようとしたが、Ωはそれを制止した。
αは元々はノンケだった。記憶を失って、自分が同性と番になったと知ったら、きっと余計に混乱させる。
主治医はそれでいいのか?と言ったが「運命の番だから、きっと思い出してくれます」と伝え、Ωのことは一先ず友人だと話してもらった。
これなら、側にはいられる。
「友達を忘れるなんて、俺って酷いやつだよな」
「仕方ないよ。生きてて良かった」
本当に、僅かにもΩを覚えていない。
何度も涙を堪え、平然を装う。
「友達だからって、毎日世話しに来なくていいよ」
そんなことを言われるのも悲しかった。
「実は、ルームシェアしてるんだ。だから頼ってよ」
「俺と、君が?」
「そうなんだ。まだ二ヶ月くらいだけど」
「……俺、忘れてる……」
αも記憶を失ったことにショックを受けている。
自分がしっかりしなくちゃ。
きっと、いつかは思い出してくれるはずだから。
「無理に考えると頭痛くなるって先生が言ってたし、徐々に、ね?」
「あぁ、同居人が優しいやつで良かったよ」
「うん」
同居人……言葉の一つ一つに、胸が張り裂けそうになる。
それでもその後なんとか退院し、一緒にマンションに帰った。
「ここで住んでたんだ」
部屋を見渡すα。
「いい所でしょ?αが見つけて来てくれたんだよ」
「俺の部屋は?」
「αはこっちね」
入院している間に個室にしておいた。もう一緒には寝られない。でも、なるべく刺激を与えない方がいいと判断した。
わざわざ買った大きなベッドも意味をなくした。
二人が番になったベッド。見るのも辛くて部屋を出る。
一部屋余っていたのが幸いだったと言い聞かせる。
自室に入って気持ちを落ち着かせていると、αが入ってきた。
「え?Ωの部屋はこんなに狭いの?俺って最低じゃん」
「違うよ。僕が選んだの。ほら、こっちは中から鍵も閉められるし。僕、Ωだから……」
その一言で察したようだ。一瞬、顔を歪ませた気がした。
「あの、もし迷惑かけそうだと思ったら、発情期の間は出ていくから。大丈夫、だから……」
「あ、うん。了解」
番になっているから、発情期にはαにだけフェロモンが届いてしまう。
次の発情期まで期間があるのが助かった。
それからはバタバタとした日が続き、余計なことを考える時間はなくなる。
夜も寝るだけに帰るようになった。
なるべく顔を合わせたくない。別れたくもない。傷つきたくない。
感情が混ざり合って、情緒が乱れやすくなった。
こっそりと持っていたαのタバコを取り出す。
やめると言いながら、結局吸っていたのを知っていた。
αがいないのを確認してから、ベランダで火をつける。
「αの匂いだ」
思い出の香りに、涙腺が緩むともうダメだった。
張り詰めていたものが切れ、蹲って泣きじゃくる。
あの時に戻りたい。
αの名前を繰り返し呼ぶ。
頸の歯型を撫でる。
生きていてくれたから、いいじゃないか。
自分に言い聞かせても、今のαが別人に思えて仕方ない。
信じたいのに……。
でも、αの前では泣けない。
不安にさせるから。
αが帰ってきたら笑うから。
だから、だから、今だけは……。
燻るタバコを消した時、αがベランダに出てきた。
「ねぇ、Ωの番って、俺なんでしょ?」
「えっと、それは……」
「本当のこと教えてよ。そのタバコ、俺のだよね?」
Ωの手から取り上げる。
長年吸っていたタバコは覚えてるんだ。
でもそれより長く、Ωとαは一緒の時間を過ごした。
高校生の頃から憧れの存在だったα。ノンケだと知っていたから望まなかった。
友人の一人。その程度の関係性でも嬉しかった。
Ωは卒業式の後、発情期に入る。助けてくれたのがαだった。
「助けて……」
Ωを救う為αは抱いてくれた。
「ごめん。男なのに、こんなことさせて。ごめん……」
「今だけだ。忘れろ」
使われていない教室で何時間も体を重ねる。
結果的に、それがきっかけとなり付き合う運びになった。
「抱いて分かったんだけど、俺たち、番になる運命だよ。絶対」
それからお互い大学を卒業し、就職してやっと手に入れた幸せだった。
それでも、Ωのことは存在すら忘れられている現実。
「……僕も、前からこれ吸ってて……」
「なんでそんな嘘つくんだ?俺さ、怖いんだよ。断片的にしか思い出せなくて。学生の頃の記憶はなんとなくあるんだけど、近い記憶ほどなくて。こんなマンションでルームシェア?そんなわけないじゃん。ファミリー向けマンションだよ、ここ。その噛み跡誰が付けたんだよ?」
「……」
全てを話していいのかまだ葛藤がある。
「ためらうってことは、そうなんだろ?」
「真実を知ると、きっとαは傷つくから」
「それでもいいから教えてくれ」
「……僕の番はαだよ」
「なんですぐに言わなかった?」
「αは、もとはノンケだった。記憶がないのに男と番になったなんて、ショックだろ?」
αはタバコに火をつけ大きく吸い込むと、ゆっくり煙を吐き出した。
「この味は覚えてる」
そう呟くと、今度はΩを引き寄せ口付けた。
「な、なにして……」
「思い出すかと思って。Ωの味」
「んっ」
泣き始めると、何度でも涙が溢れてしまう。
もう触れることはないと思っていたαの唇。この感覚をずっと覚えている。
αは記憶を失っても、以前と変わらない貪るようなキスをする。
Ωは控えめにαの服を掴み、口付けを受け入れる。
「一緒……だよ」
「何が?」
「君のキス。前と一緒」
「番を泣かせてる自分が不甲斐ない」
Ωは頭を横に振り「そんなことないよ」と言う。
記憶を失っているαの方が、余程生きにくいと、頭では分かっていたはずだ。
それなのに、あれだけ愛し合っていた自分を思いださないことが辛かった。
それが如何に自分本位だったか……と、Ω自身を責めた。
こんなことを言うと、αを困らせてしまう。
分かっていて話したことを、ごめんなさいと謝った。
αはΩを抱き上げ、寝室のベッドに連れて行った。
「俺はどんな風にΩを抱いてた?」
「やさしくて情熱的で、たまにちょっと意地悪だった」
「そう……」
やはり、思い出せないようだった。
「嫌じゃないの? 男と寝るの」
「嫌じゃない。病院で目覚めた時から、なんとなくとても大切な存在のような気がしてた。確信が持てなかったけど、番って言われて、しっくりきた」
αは思い出すまで抱かせてほしいと、Ωを組み敷く。
身体中にキスを落としていく。
それはかつてαもしてくれていた。
やはり、記憶を失っても本能でΩの愛し方を覚えてる。
Ωはそれだけで十分だと思った。
数ヶ月ぶりに体を重ね、Ωは発情した。
周期的にそろそろだった。
「ねぇ、もう一回噛ませて。上書きしたい。新しい自分として」
「噛むのは、思い出してからでいい」
「今がいいんだ。俺はきっと何度でもΩに恋をする」
自分の噛み痕の上から、新しい歯型を刻んだ。
「今度こそ忘れない。Ωが大切な存在だってこと。過去を思い出しても思い出さなくても、俺はΩが好きだよ」
繋がったまま何度も口付けた。
「俺を見捨てないでいてくれて、ありがとね」
αの笑顔は、前にも増して優しくなった。
二人の絆がより深くなった。
おしまい。
ナースの声がスピーカーから漏れている。
『○○さんの番のΩさんですか?今、αさんが事故で病院に運ばれまして。総合病院の……』
目の前が真っ暗になった。
先日、番になったばかりのαが意識不明で運ばれたとの電話。
病院に着くと、αは沢山の管を繋いだ状態で眠っていた。
「なんで……」
体に大怪我を負っているものの、顔は綺麗なまま。
眠っているだけにしか見えない。
今朝、仕事に見送った時は変わらぬ笑顔を見せてくれていたのに。
現状を受け入れられない。
ゆっくりと目を開けて「なんて顔してんだよ」って、そんな風に言われる気がして、
一時も離れられず、一睡もできず、αの目覚める瞬間を待った。
Ωの望みは叶わぬまま、時間だけが過ぎていく。
「命に別状はないの。いつ目覚めるかは、本人次第ね」
ナースが言う。
後に知ったのは、暴走した車に撥ねられそうになった子供を助けて、自分が犠牲になったと。
生きているのが奇跡と言えるほど、大きな事故だった。
「なぁ、起きてよ。寂しいよ」
αに話かけても反応はない。
「Ωさんも、ちゃんと食べて休んでください。そんなんじゃ、αさんが目覚めた時に悲しみますよ」
「はい……」
分かっていても、食欲はない。
頸の歯型がΩを慰めるように、ズキズキと痛む。
無情にも変化のないまま三ヶ月が過ぎた。
流石に仕事に復帰せざるを得なかったΩは、病院と仕事の往復に疲弊していた。
それでもαは絶対に目覚めると信じて通い詰める。
その願いがようやく叶えられた。
ある日病室に行くと、αがボヤッと天井を眺めている。
「α?目覚めたの?」
「……あなたは、誰?」
αは記憶を失っていた。
『僕は、番だよ』
その一言は言えなかった。
忘れられていたショックに、言葉を失い立ち尽くす。
後から入室したナースが、慌てて主治医を呼びに行った。
αが言う。
「教えてください。ここは病院ですよね?俺は一体なぜこんな所にいるんですか?」
αは事故をする前の記憶からないようだ。
主治医から全ての説明を受けたαは、ショックで頭を抱えた。
「自分の名前は、分かります。それより、番がいたなんて……」
パートナーのことを何一つ思い出せない自分を悔やんでいるようだ。
主治医がΩを紹介しようとしたが、Ωはそれを制止した。
αは元々はノンケだった。記憶を失って、自分が同性と番になったと知ったら、きっと余計に混乱させる。
主治医はそれでいいのか?と言ったが「運命の番だから、きっと思い出してくれます」と伝え、Ωのことは一先ず友人だと話してもらった。
これなら、側にはいられる。
「友達を忘れるなんて、俺って酷いやつだよな」
「仕方ないよ。生きてて良かった」
本当に、僅かにもΩを覚えていない。
何度も涙を堪え、平然を装う。
「友達だからって、毎日世話しに来なくていいよ」
そんなことを言われるのも悲しかった。
「実は、ルームシェアしてるんだ。だから頼ってよ」
「俺と、君が?」
「そうなんだ。まだ二ヶ月くらいだけど」
「……俺、忘れてる……」
αも記憶を失ったことにショックを受けている。
自分がしっかりしなくちゃ。
きっと、いつかは思い出してくれるはずだから。
「無理に考えると頭痛くなるって先生が言ってたし、徐々に、ね?」
「あぁ、同居人が優しいやつで良かったよ」
「うん」
同居人……言葉の一つ一つに、胸が張り裂けそうになる。
それでもその後なんとか退院し、一緒にマンションに帰った。
「ここで住んでたんだ」
部屋を見渡すα。
「いい所でしょ?αが見つけて来てくれたんだよ」
「俺の部屋は?」
「αはこっちね」
入院している間に個室にしておいた。もう一緒には寝られない。でも、なるべく刺激を与えない方がいいと判断した。
わざわざ買った大きなベッドも意味をなくした。
二人が番になったベッド。見るのも辛くて部屋を出る。
一部屋余っていたのが幸いだったと言い聞かせる。
自室に入って気持ちを落ち着かせていると、αが入ってきた。
「え?Ωの部屋はこんなに狭いの?俺って最低じゃん」
「違うよ。僕が選んだの。ほら、こっちは中から鍵も閉められるし。僕、Ωだから……」
その一言で察したようだ。一瞬、顔を歪ませた気がした。
「あの、もし迷惑かけそうだと思ったら、発情期の間は出ていくから。大丈夫、だから……」
「あ、うん。了解」
番になっているから、発情期にはαにだけフェロモンが届いてしまう。
次の発情期まで期間があるのが助かった。
それからはバタバタとした日が続き、余計なことを考える時間はなくなる。
夜も寝るだけに帰るようになった。
なるべく顔を合わせたくない。別れたくもない。傷つきたくない。
感情が混ざり合って、情緒が乱れやすくなった。
こっそりと持っていたαのタバコを取り出す。
やめると言いながら、結局吸っていたのを知っていた。
αがいないのを確認してから、ベランダで火をつける。
「αの匂いだ」
思い出の香りに、涙腺が緩むともうダメだった。
張り詰めていたものが切れ、蹲って泣きじゃくる。
あの時に戻りたい。
αの名前を繰り返し呼ぶ。
頸の歯型を撫でる。
生きていてくれたから、いいじゃないか。
自分に言い聞かせても、今のαが別人に思えて仕方ない。
信じたいのに……。
でも、αの前では泣けない。
不安にさせるから。
αが帰ってきたら笑うから。
だから、だから、今だけは……。
燻るタバコを消した時、αがベランダに出てきた。
「ねぇ、Ωの番って、俺なんでしょ?」
「えっと、それは……」
「本当のこと教えてよ。そのタバコ、俺のだよね?」
Ωの手から取り上げる。
長年吸っていたタバコは覚えてるんだ。
でもそれより長く、Ωとαは一緒の時間を過ごした。
高校生の頃から憧れの存在だったα。ノンケだと知っていたから望まなかった。
友人の一人。その程度の関係性でも嬉しかった。
Ωは卒業式の後、発情期に入る。助けてくれたのがαだった。
「助けて……」
Ωを救う為αは抱いてくれた。
「ごめん。男なのに、こんなことさせて。ごめん……」
「今だけだ。忘れろ」
使われていない教室で何時間も体を重ねる。
結果的に、それがきっかけとなり付き合う運びになった。
「抱いて分かったんだけど、俺たち、番になる運命だよ。絶対」
それからお互い大学を卒業し、就職してやっと手に入れた幸せだった。
それでも、Ωのことは存在すら忘れられている現実。
「……僕も、前からこれ吸ってて……」
「なんでそんな嘘つくんだ?俺さ、怖いんだよ。断片的にしか思い出せなくて。学生の頃の記憶はなんとなくあるんだけど、近い記憶ほどなくて。こんなマンションでルームシェア?そんなわけないじゃん。ファミリー向けマンションだよ、ここ。その噛み跡誰が付けたんだよ?」
「……」
全てを話していいのかまだ葛藤がある。
「ためらうってことは、そうなんだろ?」
「真実を知ると、きっとαは傷つくから」
「それでもいいから教えてくれ」
「……僕の番はαだよ」
「なんですぐに言わなかった?」
「αは、もとはノンケだった。記憶がないのに男と番になったなんて、ショックだろ?」
αはタバコに火をつけ大きく吸い込むと、ゆっくり煙を吐き出した。
「この味は覚えてる」
そう呟くと、今度はΩを引き寄せ口付けた。
「な、なにして……」
「思い出すかと思って。Ωの味」
「んっ」
泣き始めると、何度でも涙が溢れてしまう。
もう触れることはないと思っていたαの唇。この感覚をずっと覚えている。
αは記憶を失っても、以前と変わらない貪るようなキスをする。
Ωは控えめにαの服を掴み、口付けを受け入れる。
「一緒……だよ」
「何が?」
「君のキス。前と一緒」
「番を泣かせてる自分が不甲斐ない」
Ωは頭を横に振り「そんなことないよ」と言う。
記憶を失っているαの方が、余程生きにくいと、頭では分かっていたはずだ。
それなのに、あれだけ愛し合っていた自分を思いださないことが辛かった。
それが如何に自分本位だったか……と、Ω自身を責めた。
こんなことを言うと、αを困らせてしまう。
分かっていて話したことを、ごめんなさいと謝った。
αはΩを抱き上げ、寝室のベッドに連れて行った。
「俺はどんな風にΩを抱いてた?」
「やさしくて情熱的で、たまにちょっと意地悪だった」
「そう……」
やはり、思い出せないようだった。
「嫌じゃないの? 男と寝るの」
「嫌じゃない。病院で目覚めた時から、なんとなくとても大切な存在のような気がしてた。確信が持てなかったけど、番って言われて、しっくりきた」
αは思い出すまで抱かせてほしいと、Ωを組み敷く。
身体中にキスを落としていく。
それはかつてαもしてくれていた。
やはり、記憶を失っても本能でΩの愛し方を覚えてる。
Ωはそれだけで十分だと思った。
数ヶ月ぶりに体を重ね、Ωは発情した。
周期的にそろそろだった。
「ねぇ、もう一回噛ませて。上書きしたい。新しい自分として」
「噛むのは、思い出してからでいい」
「今がいいんだ。俺はきっと何度でもΩに恋をする」
自分の噛み痕の上から、新しい歯型を刻んだ。
「今度こそ忘れない。Ωが大切な存在だってこと。過去を思い出しても思い出さなくても、俺はΩが好きだよ」
繋がったまま何度も口付けた。
「俺を見捨てないでいてくれて、ありがとね」
αの笑顔は、前にも増して優しくなった。
二人の絆がより深くなった。
おしまい。
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