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第二章
22、運命の番
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エリペールは感極まり、眸を潤ませた。
「何故、言わなかった」
「主従関係の域を超えてはならないと思っていました。貴方は公爵家の後継者で、いずれは名の知れたご令嬢と結婚なさるでしょう。奴隷でなんの後ろ盾もない僕がエリペール様のそばでいられるのは、どちらかのバース性が発症するまでだと……。だから、いつまでもこのままいたいと願ってしまったのです」
「他の誰とも結婚などするわけがない。君は、もっと自分の価値を信じるべきだ」
真上から覆い被さったエリペールからキスの嵐が降る。
「マリユスがオメガを発症すれば、私たちは番になり、卒業と共に結婚出来ると計画を立てていた。なのに卒業したあとも、私のアルファ性が低いばかりにいつまで経っても発情しないのだと悩んでいた。しかし、今、全て理解した」
息が上がっている。
長い髪が垂れ下がり、頬をくすぐる。
エリペールが何を言おうとしているかは、なんとなく通じている。
二人は紛れもない、運命の番だ。
なのにこれだけ一緒にいても、どちらもバース性を発症してこなかった。
お互いのフェロモンを感じているにも関わらず燻っていた。
どうやら、これには発症するキッカケが必要だったのだと、エリペールと同時に理解しのだ。
僕たちがバース性を発症するキーポイントは『口付けること』だった。
さっき初めて感じた体の熱は、ヒートによるものなのだとようやく理解した。
「マリユスの匂いがいつもより濃く感じる」
エリペールは首に顔を埋め、頸に鼻先を擦り寄せる。
興奮している彼の息がかかり、くすぐったくて肩が竦む。更に啄んで何度も唇を落とし、甘噛みをする。
「んんっ……」
頸を噛むのはアルファの本能なのだろうか。
噛みたいと思ってくれているのだろうか。
エリペールは無意識に執拗に首を何度も噛む。
図書館のバース性の本を全て読んで置くべきだったと後悔した。
キス以降の行為も書かれていたかもしれない。
全ての行為の後、頸を噛むということだけは知っていたが、肝心のそれまでの知識が全くないのだ。
ただあの時、唇同士を重ねていた挿絵を見た時にドキドキした意味を、今、しっかりと噛み締めている。訳がわからない感覚だったが、僕に性的な感情が生まれた瞬間だったのだ。
実際経験してみると、想像していたよりもずっと気持ちよくて恥ずかしくて、でもこれまでにないほど幸せな気持ちになる。
触れられると悦びを感じる。手で、唇で、肌で、存在を感じられる。
夜着を脱ぎ払い、肌を密着させた。体の熱は上がる一方で、息苦しさを覚える。
エリペールから放たれるフェロモンが強くなるほどに、オメガの本能が疼いて精を求める。
全身を愛撫し、腰から回したその手で孔の周りを捏ね始めた。
「あっ、ん……んん……」
「濡れている」
「言わないで、ください」
「喜んでいるのだ。私に欲情したマリユスの体がそれを証明してくれている。もっと、フェロモンで私を煽ってくれ」
孔に指が這入っていく。隘路を抉るように奥へ奥へ……オメガの液で滑りが良くなっている肉胴は、最も容易く指全体を受け入れた。
長い指で中を掻き混ぜられ、ぐちゅぐちゅと卑猥な水音を立てる。
初めての行為であるにも関わらず、僕の孔は瞬く間に解れていった。
それがオメガ故なのかは知りようもない。
けれどもこの体の奥がアルファの精を欲しているのは確かである。
エリペールも余裕のない表情で、一刻も早く怒張したそれを挿れたがっている。
先端からは透明の液が垂れ、肉茎にはところどころ血管が浮き出ている。
太く長いそれを見せつけられ、法悦となってしまう。
早く、挿れて欲しい。
この太くて硬いもので、中をめちゃくちゃに突き上げてほしい。
どんなに苦しくても構わない。エリペールの存在を、この体に刻み込みたい。
腕を伸ばすと応えるように体を曲げ、口付ける。
「もっと優しく、丁寧にしてあげたいのに、体が言うことを聞いてくれない。早くこの中に這入りたいと疼いて仕方ないのだ」
「僕も……早く一つになりたいです。エリペール様のものになれたと、実感したい」
「しかし、君の負担を考えなければ」
僕は頭を左右に振った。
「見た目よりずっと頑丈ですよ。なにせ、あの石積みの塔で生き抜いたのですから」
「あんな非道な目に遭わせる気はない。鮮明に覚えている。私はマリユスの声にならない叫びを聞いた。助けてと、ここから出たいのだと。マリユスを救えるのは私しかいないと確信していた。いい匂いがすると言ったのも本当だ。私は運命の番の匂いがなければ、眠ることさえできなかったのだ」
顎に、首筋に、鎖骨へと、口を滑らせていく。
乳暈に沿って舌を這わせ、じゅうと吸う。
「はぁっ!! ん……」
エリペールの頭を両手で支え、快楽に身悶える。
「気持ちいい時は言ってくれ」
「気持ちいいです……エリペール様から触れられるところから、熱を帯びていきます」
エリペールは更に腋を舐め、うつ伏せにさせる。
膝立ちになると、僕の尻を盛り上げ「やはり全て私のものになってくれたまえ、今すぐ」先端を孔に宛てがう。
ズブズブと亀頭が押し込まれ、あまりの圧迫感に目の前に星が散る。
「はっ、かは……ふっ……」
「苦しいか」
「だい……じょうぶ……」
「少しずつ挿れる」
緩く腰を揺らしながら、エリペールの男根が最奥を目指す。媚肉を擦られ、肉胴がエリペールのもので隙間なく埋められていく。
罪悪感がないわけではない。
いくらエリペールが好きだと言ってくれても、ゴーティエやブランディーヌまで承諾してくれるとは限らない。
だからこそ、今、全てを捧げたい。もしもこれが最初で最後だったとしても、今だけは自分の気持ちに素直になっていたい。
エリペールが背中を撫でる。
くすぐったくて撓ませるが、大きな掌は何度も円を描くように背中を滑る。
「綺麗な背中だ。白くてキメ細かくて、シルクのように滑らかだ」
褒めすぎだと言いたかったが、とても喋れる状態ではない。
エリペールは続ける。
「君が奴隷商から来た当時、傷だらけだったと聞いていた。身体中、打撲の痕や、鞭で打たれたようなミミズ腫れになっている部分まであったのだと。リリアンたちが思わず目を背けるほど酷い有様だったらしく、私は見せてもらえなかった。ただ、丁重に扱うようにとだけ聞かされていた」
初耳だった。
あの頃は感情もなければ神経も麻痺していた。
痛いのレベルはどれも同じだった。
自分の体を見ることなどないし、皆、これが当たり前なのだと思い込まされて育った。
エリペールは背中に口付ける。
挿入を続けながら、少しでも意識が逸れるように至る所にキスをする。
時々、呻っては腰の動きを止めながらも、時間をかけ、僕の体を傷つけないようにと慎重に進めてくれた。
「這入った……這入ったぞ、マリユス」
男根が最奥まで届いた時、エリペールは歓喜のあまり腰をぐいと押し付けた。
「はぁぁぁっ!! あっ、ぁぁぁああ!!」
盛大に白蜜を飛沫させた。
一つに繋がった喜びを感じるよりも先に、話しをしながらもじわじわと襲ってくる快楽に耐えていた。
一番奥を貫かれ、ため込んでいた精が一気に弾けるような絶頂を味わった。
「何故、言わなかった」
「主従関係の域を超えてはならないと思っていました。貴方は公爵家の後継者で、いずれは名の知れたご令嬢と結婚なさるでしょう。奴隷でなんの後ろ盾もない僕がエリペール様のそばでいられるのは、どちらかのバース性が発症するまでだと……。だから、いつまでもこのままいたいと願ってしまったのです」
「他の誰とも結婚などするわけがない。君は、もっと自分の価値を信じるべきだ」
真上から覆い被さったエリペールからキスの嵐が降る。
「マリユスがオメガを発症すれば、私たちは番になり、卒業と共に結婚出来ると計画を立てていた。なのに卒業したあとも、私のアルファ性が低いばかりにいつまで経っても発情しないのだと悩んでいた。しかし、今、全て理解した」
息が上がっている。
長い髪が垂れ下がり、頬をくすぐる。
エリペールが何を言おうとしているかは、なんとなく通じている。
二人は紛れもない、運命の番だ。
なのにこれだけ一緒にいても、どちらもバース性を発症してこなかった。
お互いのフェロモンを感じているにも関わらず燻っていた。
どうやら、これには発症するキッカケが必要だったのだと、エリペールと同時に理解しのだ。
僕たちがバース性を発症するキーポイントは『口付けること』だった。
さっき初めて感じた体の熱は、ヒートによるものなのだとようやく理解した。
「マリユスの匂いがいつもより濃く感じる」
エリペールは首に顔を埋め、頸に鼻先を擦り寄せる。
興奮している彼の息がかかり、くすぐったくて肩が竦む。更に啄んで何度も唇を落とし、甘噛みをする。
「んんっ……」
頸を噛むのはアルファの本能なのだろうか。
噛みたいと思ってくれているのだろうか。
エリペールは無意識に執拗に首を何度も噛む。
図書館のバース性の本を全て読んで置くべきだったと後悔した。
キス以降の行為も書かれていたかもしれない。
全ての行為の後、頸を噛むということだけは知っていたが、肝心のそれまでの知識が全くないのだ。
ただあの時、唇同士を重ねていた挿絵を見た時にドキドキした意味を、今、しっかりと噛み締めている。訳がわからない感覚だったが、僕に性的な感情が生まれた瞬間だったのだ。
実際経験してみると、想像していたよりもずっと気持ちよくて恥ずかしくて、でもこれまでにないほど幸せな気持ちになる。
触れられると悦びを感じる。手で、唇で、肌で、存在を感じられる。
夜着を脱ぎ払い、肌を密着させた。体の熱は上がる一方で、息苦しさを覚える。
エリペールから放たれるフェロモンが強くなるほどに、オメガの本能が疼いて精を求める。
全身を愛撫し、腰から回したその手で孔の周りを捏ね始めた。
「あっ、ん……んん……」
「濡れている」
「言わないで、ください」
「喜んでいるのだ。私に欲情したマリユスの体がそれを証明してくれている。もっと、フェロモンで私を煽ってくれ」
孔に指が這入っていく。隘路を抉るように奥へ奥へ……オメガの液で滑りが良くなっている肉胴は、最も容易く指全体を受け入れた。
長い指で中を掻き混ぜられ、ぐちゅぐちゅと卑猥な水音を立てる。
初めての行為であるにも関わらず、僕の孔は瞬く間に解れていった。
それがオメガ故なのかは知りようもない。
けれどもこの体の奥がアルファの精を欲しているのは確かである。
エリペールも余裕のない表情で、一刻も早く怒張したそれを挿れたがっている。
先端からは透明の液が垂れ、肉茎にはところどころ血管が浮き出ている。
太く長いそれを見せつけられ、法悦となってしまう。
早く、挿れて欲しい。
この太くて硬いもので、中をめちゃくちゃに突き上げてほしい。
どんなに苦しくても構わない。エリペールの存在を、この体に刻み込みたい。
腕を伸ばすと応えるように体を曲げ、口付ける。
「もっと優しく、丁寧にしてあげたいのに、体が言うことを聞いてくれない。早くこの中に這入りたいと疼いて仕方ないのだ」
「僕も……早く一つになりたいです。エリペール様のものになれたと、実感したい」
「しかし、君の負担を考えなければ」
僕は頭を左右に振った。
「見た目よりずっと頑丈ですよ。なにせ、あの石積みの塔で生き抜いたのですから」
「あんな非道な目に遭わせる気はない。鮮明に覚えている。私はマリユスの声にならない叫びを聞いた。助けてと、ここから出たいのだと。マリユスを救えるのは私しかいないと確信していた。いい匂いがすると言ったのも本当だ。私は運命の番の匂いがなければ、眠ることさえできなかったのだ」
顎に、首筋に、鎖骨へと、口を滑らせていく。
乳暈に沿って舌を這わせ、じゅうと吸う。
「はぁっ!! ん……」
エリペールの頭を両手で支え、快楽に身悶える。
「気持ちいい時は言ってくれ」
「気持ちいいです……エリペール様から触れられるところから、熱を帯びていきます」
エリペールは更に腋を舐め、うつ伏せにさせる。
膝立ちになると、僕の尻を盛り上げ「やはり全て私のものになってくれたまえ、今すぐ」先端を孔に宛てがう。
ズブズブと亀頭が押し込まれ、あまりの圧迫感に目の前に星が散る。
「はっ、かは……ふっ……」
「苦しいか」
「だい……じょうぶ……」
「少しずつ挿れる」
緩く腰を揺らしながら、エリペールの男根が最奥を目指す。媚肉を擦られ、肉胴がエリペールのもので隙間なく埋められていく。
罪悪感がないわけではない。
いくらエリペールが好きだと言ってくれても、ゴーティエやブランディーヌまで承諾してくれるとは限らない。
だからこそ、今、全てを捧げたい。もしもこれが最初で最後だったとしても、今だけは自分の気持ちに素直になっていたい。
エリペールが背中を撫でる。
くすぐったくて撓ませるが、大きな掌は何度も円を描くように背中を滑る。
「綺麗な背中だ。白くてキメ細かくて、シルクのように滑らかだ」
褒めすぎだと言いたかったが、とても喋れる状態ではない。
エリペールは続ける。
「君が奴隷商から来た当時、傷だらけだったと聞いていた。身体中、打撲の痕や、鞭で打たれたようなミミズ腫れになっている部分まであったのだと。リリアンたちが思わず目を背けるほど酷い有様だったらしく、私は見せてもらえなかった。ただ、丁重に扱うようにとだけ聞かされていた」
初耳だった。
あの頃は感情もなければ神経も麻痺していた。
痛いのレベルはどれも同じだった。
自分の体を見ることなどないし、皆、これが当たり前なのだと思い込まされて育った。
エリペールは背中に口付ける。
挿入を続けながら、少しでも意識が逸れるように至る所にキスをする。
時々、呻っては腰の動きを止めながらも、時間をかけ、僕の体を傷つけないようにと慎重に進めてくれた。
「這入った……這入ったぞ、マリユス」
男根が最奥まで届いた時、エリペールは歓喜のあまり腰をぐいと押し付けた。
「はぁぁぁっ!! あっ、ぁぁぁああ!!」
盛大に白蜜を飛沫させた。
一つに繋がった喜びを感じるよりも先に、話しをしながらもじわじわと襲ってくる快楽に耐えていた。
一番奥を貫かれ、ため込んでいた精が一気に弾けるような絶頂を味わった。
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