上 下
49 / 104
続編 カマルとルアの子育て編

悩み

しおりを挟む
 城に帰ってからも上機嫌で遊んでいるシオン。
 猫神と遊んだ後は、いつも機嫌がいい。きっと、自己肯定感を高めるのが上手いのだと月亜は尊敬している。

 自分も猫神のように、気持ちの余裕が欲しいと会う度感じる。

 自分は恵まれていると思う。お父様もお母様もシオンを溺愛してくれているし、カマルも子育てに積極的だ。

 お母様のミッチェルがオメガということもあり、発情期への理解もある。
 それでも、たまに自分がちゃんと子育てできているのか、不安で仕方ないサイクルに入ってしまう。

 最近ではシオンの『イヤイヤ攻撃』も少なくなってきたが、それでも楽になったかと聞かれれば……どうだろう……。自分が考えすぎなのかもしれないし……。

「ルア、疲れた?」
「カマルさん。ボーっとしてしまいました。全然、疲れたりしてないですよ」
「まだ完全に発情期が終わったわけじゃない。夕食まで休むといい」
「ありがとうございます。そうしようかな」

 一人、寝室へと向かった。
 母親なのに、子供を預けて寝てもいいのだろうか。

 この三年間、周りを頼りすぎていないかと、ずっと思っている。
 素直に甘えていればいいのかもしれないが、割り切るのがなかなか難しい。

「カマルさんに話を聞いてもらおう」

 こういう時は、話を聞いてもらうのが一番だ。
 シオンが産まれてから、ことある毎に月亜の不安を拭ってくれていた。
 何度も同じような悩みを打ち明けては励ましてくれた。

 今回もまた同じような悩みなのだが、それでも吐き出したい。
 ベッドに横になると、シオンが好きな絵本に手を伸ばす。
「片付けるの、忘れてる」
 
 シオンは男の子だけど、優しい話の絵本が好きだ。
 何度も読み聞かせているお気に入りの絵本。
 『好きな人には好きって伝えようね』
 という内容のお話だ。

 きっと月亜に好意を伝えているのも、この絵本の影響なのだ。

 そういえばカマルも毎日のように月亜に好きだと伝えてくれる。
 もう結婚して三年になるのに、よく飽きないものだ。それでもやはり、嬉しく思う。

(俺からも、好きって言ってみようかな。……いやいや、そんなの言ったらカマルさんの方が発情しかねない)

「ふふ……」

 もしも月亜から「好きだ」と伝えたらカマルはどうなるか……。容易く想像できてしまう。
 そのくらいに、自分が愛されている。

「そうだ。月亜の誕生日に、カマルさんにもプレゼントを贈ろう。初めてパパになった記念日だ」

 シオンとお揃いの何かがいいだろう。街に行く許可をもらわなければ。
 プレゼントは自分で探したい。

 目を閉じて一人作戦会議。どうせならサプライズで渡したいじゃないか。

 バレずに買えるのか、そこから不安になるが……。

「ルア、寝ているかい?」
「あわわ、カマルさん。起きてますよ」

 一先ずは保留だ。とはいえ時間はない。
 喜んでもらえるにはどうするのが最善だろう。
 
 カマルは月亜がシオンのことで悩んでいると思ったようだ。

「また何か悩んでる?」
「実は……はい。自分が子育てを楽しすぎじゃないかって、不安で……」
「そんなことはない。その証拠にシオンはルアが大好きだろう?」
 
 隣に座り、抱きしめてくれる。
 これだけで安心できるのだから、自分って単純細胞なんだろうと自虐的に思った。

「カマルさんがそう言ってくれると、救われます」
 やっぱり自分はカマルが好きだと思ったが、今日のところは言えなかった。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

初心者オメガは執着アルファの腕のなか

深嶋
BL
自分がベータであることを信じて疑わずに生きてきた圭人は、見知らぬアルファに声をかけられたことがきっかけとなり、二次性の再検査をすることに。その結果、自身が本当はオメガであったと知り、愕然とする。 オメガだと判明したことで否応なく変化していく日常に圭人は戸惑い、悩み、葛藤する日々。そんな圭人の前に、「運命の番」を自称するアルファの男が再び現れて……。 オメガとして未成熟な大学生の圭人と、圭人を番にしたい社会人アルファの男が、ゆっくりと愛を深めていきます。 穏やかさに滲む執着愛。望まぬ幸運に恵まれた主人公が、悩みながらも運命の出会いに向き合っていくお話です。本編、攻め編ともに完結済。

その溺愛は伝わりづらい!気弱なスパダリ御曹司にノンケの僕は落とされました

海野幻創
BL
人好きのする端正な顔立ちを持ち、文武両道でなんでも無難にこなせることのできた生田雅紀(いくたまさき)は、小さい頃から多くの友人に囲まれていた。 しかし他人との付き合いは広く浅くの最小限に留めるタイプで、女性とも身体だけの付き合いしかしてこなかった。 偶然出会った久世透(くぜとおる)は、嫉妬を覚えるほどのスタイルと美貌をもち、引け目を感じるほどの高学歴で、議員の孫であり大企業役員の息子だった。 御曹司であることにふさわしく、スマートに大金を使ってみせるところがありながら、生田の前では捨てられた子犬のようにおどおどして気弱な様子を見せ、そのギャップを生田は面白がっていたのだが……。 これまで他人と深くは関わってこなかったはずなのに、会うたびに違う一面を見せる久世は、いつしか生田にとって離れがたい存在となっていく。 【7/27完結しました。読んでいただいてありがとうございました。】 【続編も8/17完結しました。】 「その溺愛は行き場を彷徨う……気弱なスパダリ御曹司は政略結婚を回避したい」 https://www.alphapolis.co.jp/novel/962473946/911896785 ↑この続編は、R18の過激描写がありますので、苦手な方はご注意ください。

側妻になった男の僕。

selen
BL
国王と平民による禁断の主従らぶ。。を書くつもりです(⌒▽⌒)よかったらみてね☆☆

夢見がちオメガ姫の理想のアルファ王子

葉薊【ハアザミ】
BL
四方木 聖(よもぎ ひじり)はちょっぴり夢見がちな乙女男子。 幼少の頃は父母のような理想の家庭を築くのが夢だったが、自分が理想のオメガから程遠いと知って断念する。 一方で、かつてはオメガだと信じて疑わなかった幼馴染の嘉瀬 冬治(かせ とうじ)は聖理想のアルファへと成長を遂げていた。 やがて冬治への恋心を自覚する聖だが、理想のオメガからは程遠い自分ではふさわしくないという思い込みに苛まれる。 ※ちょっぴりサブカプあり。全てアルファ×オメガです。

好きだと伝えたい!!

えの
BL
俺には大好きな人がいる!毎日「好き」と告白してるのに、全然相手にしてもらえない!!でも、気にしない。最初からこの恋が実るとは思ってない。せめて別れが来るその日まで…。好きだと伝えたい。

愛などもう求めない

白兪
BL
とある国の皇子、ヴェリテは長い長い夢を見た。夢ではヴェリテは偽物の皇子だと罪にかけられてしまう。情を交わした婚約者は真の皇子であるファクティスの側につき、兄は睨みつけてくる。そして、とうとう父親である皇帝は処刑を命じた。 「僕のことを1度でも愛してくれたことはありましたか?」 「お前のことを一度も息子だと思ったことはない。」 目が覚め、現実に戻ったヴェリテは安心するが、本当にただの夢だったのだろうか?もし予知夢だとしたら、今すぐここから逃げなくては。 本当に自分を愛してくれる人と生きたい。 ヴェリテの切実な願いが周りを変えていく。  ハッピーエンド大好きなので、絶対に主人公は幸せに終わらせたいです。 最後まで読んでいただけると嬉しいです。

【完結】ぎゅって抱っこして

かずえ
BL
幼児教育学科の短大に通う村瀬一太。訳あって普通の高校に通えなかったため、働いて貯めたお金で二年間だけでもと大学に入学してみたが、学費と生活費を稼ぎつつ学校に通うのは、考えていたよりも厳しい……。 でも、頼れる者は誰もいない。 自分で頑張らなきゃ。 本気なら何でもできるはず。 でも、ある日、金持ちの坊っちゃんと心の中で呼んでいた松島晃に苦手なピアノの課題で助けてもらってから、どうにも自分の心がコントロールできなくなって……。

何故か正妻になった男の僕。

selen
BL
『側妻になった男の僕。』の続きです(⌒▽⌒) blさいこう✩.*˚主従らぶさいこう✩.*˚✩.*˚

処理中です...