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三章〜クレール・ベルクール編〜
5 学友イザック
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ルベルーノ研究室の話は、本格的に決定してからイザックに話そうと思っていたが、その決心は彼の顔を見た瞬間砕け散った。
朝の登校後、声を掛けてきたイザックは開口一番「何か嬉しいことがあったの?」と言った。
学校でもベータと偽っている僕は、体調不良という理由で学校を休んでいたにも関わらず、イザックは僕の体の具合を聞くよりも何よりも先に、口元が緩んでいることを指摘してきたのだ。
「そんなに顔に出てるかな?」
「まあ、毎日楽しそうに勉強しているな、とは思ってるけど、今日はなんだか様子が違う」
イザックとは初等部の頃からの学友で、なんでも話し合える唯一の相手。僕が家族以外で敬語を使わないのも彼くらいなものだ。もちろん、イザックからも敬語は使わないでほしいと何年も言い続けて、やっとラフに喋ってくれるようになった。
僕と同じく、薬の開発者を目指している彼は、母がオメガなのだそうだ。アシルお母様同様、オメガ性が強いらしく、薬が原因で体をしょっちゅう壊してしまう。それがキッカケで薬草の勉強を始めた。
最初から話が合った僕たちは直ぐに仲良くなった。
そして時にはベルクール邸に招待して、ハーブ園や畑を一緒に見て回っている。
僕は、もしもルベルーノ研究室にイザックと入れたら、どんなに楽しいだろうか。と、勝手な夢を抱いてしまった。そして、昨夜あれこれ悩んでいたことも忘れ、ついポロリと口を滑らせてしまったのだ。
「ねぇ、イザック。実はお父様の伝手で、隣国のルベルーノ研究室に誘ってもらえたんだ」
「なんだって!!? そんなの、薬学を志す人なら誰もが憧れる研究室じゃないか!! さすがは、ベルクール公爵様は違うね」
イザックはその名前を聞いただけで驚嘆した。自分は無関係とでも思っているようだ。そこで僕は、「もし、本当に行けるようになれば、僕は君も推薦したいと考えている」と伝えた。
「ボクは無理だよ!! あんなエリートしか入れない研究室。ボクは子爵の倅でその上ただのベータだ。とても似気無いよ」
イザックは両手を振りながら即答で断った。しかし「そりゃ、あんなところで研究できれば最高だろうけど……」と呟いた。
薬学に進みたい人でなくとも、隣国の医学の開発がとても進んでいるのは認知されている。
昨日、アシルお母様から話を聞いた時は、それでもベルクール邸から離れて暮らすのを寂しいと思ってしまった。
しかしイザックと話していると、なんとか二人で行かれないだろうかという思考が頭を占領している。
「ベータは僕も同じだ。でも、もしも話だけでも聞く機会があれば一緒に行こう。それだけでも、何か勉強になるかもしれない」
「もしボクがいて邪魔じゃないなら、誘ってよ」
今夜、エリアスお父様に早速相談するとイザックには伝えておいた。
それから、僕とイザックの話題はもっぱらルベルーノ研究室についてだ。
放課後は図書館に寄り、研究室に関連する資料も借りてきた。
まだ高等部卒業まで二年もあるが、近い未来を思うとソワソワしてしまう。この話しは白紙になる可能性だって十分あるのに、今は冷静になどなれなかった。
朝の登校後、声を掛けてきたイザックは開口一番「何か嬉しいことがあったの?」と言った。
学校でもベータと偽っている僕は、体調不良という理由で学校を休んでいたにも関わらず、イザックは僕の体の具合を聞くよりも何よりも先に、口元が緩んでいることを指摘してきたのだ。
「そんなに顔に出てるかな?」
「まあ、毎日楽しそうに勉強しているな、とは思ってるけど、今日はなんだか様子が違う」
イザックとは初等部の頃からの学友で、なんでも話し合える唯一の相手。僕が家族以外で敬語を使わないのも彼くらいなものだ。もちろん、イザックからも敬語は使わないでほしいと何年も言い続けて、やっとラフに喋ってくれるようになった。
僕と同じく、薬の開発者を目指している彼は、母がオメガなのだそうだ。アシルお母様同様、オメガ性が強いらしく、薬が原因で体をしょっちゅう壊してしまう。それがキッカケで薬草の勉強を始めた。
最初から話が合った僕たちは直ぐに仲良くなった。
そして時にはベルクール邸に招待して、ハーブ園や畑を一緒に見て回っている。
僕は、もしもルベルーノ研究室にイザックと入れたら、どんなに楽しいだろうか。と、勝手な夢を抱いてしまった。そして、昨夜あれこれ悩んでいたことも忘れ、ついポロリと口を滑らせてしまったのだ。
「ねぇ、イザック。実はお父様の伝手で、隣国のルベルーノ研究室に誘ってもらえたんだ」
「なんだって!!? そんなの、薬学を志す人なら誰もが憧れる研究室じゃないか!! さすがは、ベルクール公爵様は違うね」
イザックはその名前を聞いただけで驚嘆した。自分は無関係とでも思っているようだ。そこで僕は、「もし、本当に行けるようになれば、僕は君も推薦したいと考えている」と伝えた。
「ボクは無理だよ!! あんなエリートしか入れない研究室。ボクは子爵の倅でその上ただのベータだ。とても似気無いよ」
イザックは両手を振りながら即答で断った。しかし「そりゃ、あんなところで研究できれば最高だろうけど……」と呟いた。
薬学に進みたい人でなくとも、隣国の医学の開発がとても進んでいるのは認知されている。
昨日、アシルお母様から話を聞いた時は、それでもベルクール邸から離れて暮らすのを寂しいと思ってしまった。
しかしイザックと話していると、なんとか二人で行かれないだろうかという思考が頭を占領している。
「ベータは僕も同じだ。でも、もしも話だけでも聞く機会があれば一緒に行こう。それだけでも、何か勉強になるかもしれない」
「もしボクがいて邪魔じゃないなら、誘ってよ」
今夜、エリアスお父様に早速相談するとイザックには伝えておいた。
それから、僕とイザックの話題はもっぱらルベルーノ研究室についてだ。
放課後は図書館に寄り、研究室に関連する資料も借りてきた。
まだ高等部卒業まで二年もあるが、近い未来を思うとソワソワしてしまう。この話しは白紙になる可能性だって十分あるのに、今は冷静になどなれなかった。
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