【番外編スタート】公爵様を寝取った悪役令息に転生しましたが、子供が産まれるので幸せになるために、この事件解決させていただきます。

二章～アシル・クローシャー編～

34 仲良しさん③

　今日という一日は終始賑やかだった。
　ヴィクトール様はライリーやロラにもすっかり懐いていて、湯浴みも食事もずっと二人にお世話をされながら、なんだか本当に家族の一員になったような錯覚さえ起こす。

　マルティネス王子も、エリアス様とお父様と一緒に飲み明かそうと意気込んでいる。
　途中、秘書にロベール公爵様を呼ぶよう言いつけ、数時間後には四人で乾杯をしていた。

「本当に、みんな楽しそうで良かったです」
「ごめんなさい、アシルさん。結局一家でお世話になってしまいまして……」
「こちらこそですよ、こんなにも楽しい夜は早々ありません」

　もうすぐクレールも学校に通い始めれば、こんな風に思い切り遊べる日もなかなか作れないだろう。良いタイミングで来てくれて、逆に感謝していると伝える。

「さぁ、先に休みましょう。お腹に触るといけません」
　妊娠しているクララ様をゲストルームへ案内させ、ぼくも自室へ入るなり寝室へと向かう。

「楽しかったけど、疲れた」
　そのままベッドに潜り、目を閉じる。
　クレールとヴィクトール様が手を繋いでこっちを見ている。
　何やら必死に伝えているようだ。
　なんと言っているのか……。
「ん、聞こえない……クレール？」
　これが夢だとは、なんとなく自覚している。しかし、何か伝えようとしている二人から目が離せない。
「……様、アシルお母様……僕たちは……つが……」
「クレール？　クレール、なんと……言って……」

　そこで目が覚めた。

　なぜか、二人が兄弟ではなくて番になった夢を見てしまった。
　夢とはいえ、クララ様にも申し訳ない内容だったと反省する。

　うたた寝してしまっていたと気づき、今度はきちんと寝る準備を整えてから再びベッドに潜る。
　エリアス様は本当に飲み明かすつもりなのか、まだ部屋に帰って来ていなかった。
　
　クレールとヴィクトール様は思うままの時間が過ごせただろうか。
　今日一日だけで、クレールに弟を作ってあげたい気持ちは強くなっていったのは確かである。
　この気持ちはクララ様のお腹が大きくなるほどに膨れ上がるだろう。

　次の発情期が待ち遠しく思うなんて。
「発情期もいつ来ても良い頃に入ってきているな……」
　今度は自分が妊娠している夢を見た。