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決意
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それから、ニコラさんと別々に行動する時間が増えた。
寂しいとは思いながらも、内心ホッとしていた。
と、同時に苦しくもある。
———今頃、レニーさんと……。
そう思うと、胸が締め付けられるような気持ちになる。
レニーさんに言われた一言が忘れられない。
私が幸せになるほど、レニーさんが不幸になってしまうと。
自分はどうすれば良いのだろう。
人を不幸にしてまで、幸せになって良いものか。
ずっとレニーさんが頭から離れない。
『アリシアさんがいなければ、僕が番になっていた』
そう言われてしまった。
きっと、二人の絆はそれだけ深い。
それを私が番になってしまった。
横取りと言われても仕方ないのかもしれない。
ニコラさんのいない家はとても静かだ。
これまでなら、ずっと二人で会話が弾んでいた。
今はレニーさんと……。
「ああ、ダメだ。私……耐えられる自信ない……」
レニーさんがニコラさんを見つめる瞳は、キラキラと輝いていた。
あの瞳を見て、レニーさんの気持ちに気付かないなんて、実はニコラさんも鈍感なのかもしれない。
ニコラさんが施設へ行っている間、私は自分の部屋で眠った。
夜はニコラさんと一緒だから、よく眠れていない。
だから日中のうちに寝ておく。
朝見送った後、そのままベッドに入る。そして返ってくる直前に起きる。
食欲はなかった。
だから私はみるみる痩せていった。
ニコラさんは私の変化にはとても敏感だから、痩せたこともすぐに察した。
「アリシア、僕がいない時の食事はどうしているの?」
「えっ……と……」
「まさか、食べてない……とか言わないよね?」
夕食を食べながら詰め寄られてしまった。
発情期を促す時からニコラさんの膝に座るのが癖になっているから、私はここから逃げられない。
「それが……その……。本を読みながら居眠りをしてしまって」
「それで忘れてたって?」
「気付いたら夕方になってたんです」
「もう、アリシアはドジっ子ちゃんだね」
鼻先を耳元に擦り寄せる。
なんとか誤魔化せて、私は安堵した。
でも、日が経つにつれ苦しさは増して行く。
ここにいれば、その先もずっとニコラさんに甘えて生きていくだけだろう。
レニーさんのように、対等にはなれない。
番になって浮かれていた。
明日、ここを出よう。
ニコラさんが施設に行っている間に。
それでレニーさんが幸せになれるなら、その方がいいに決まっている。
決意したら少しは気持ちが楽になるかと思っていたが、そんなことは無かった。
ずっと重い鉛を縛り付けられているようだ。
ここを出ていけば、この柵から逃れられるのだろうか。
でも、もうこれ以上ニコラさんの笑顔を見るのも辛い。
自分に限界が迫っていた。
寂しいとは思いながらも、内心ホッとしていた。
と、同時に苦しくもある。
———今頃、レニーさんと……。
そう思うと、胸が締め付けられるような気持ちになる。
レニーさんに言われた一言が忘れられない。
私が幸せになるほど、レニーさんが不幸になってしまうと。
自分はどうすれば良いのだろう。
人を不幸にしてまで、幸せになって良いものか。
ずっとレニーさんが頭から離れない。
『アリシアさんがいなければ、僕が番になっていた』
そう言われてしまった。
きっと、二人の絆はそれだけ深い。
それを私が番になってしまった。
横取りと言われても仕方ないのかもしれない。
ニコラさんのいない家はとても静かだ。
これまでなら、ずっと二人で会話が弾んでいた。
今はレニーさんと……。
「ああ、ダメだ。私……耐えられる自信ない……」
レニーさんがニコラさんを見つめる瞳は、キラキラと輝いていた。
あの瞳を見て、レニーさんの気持ちに気付かないなんて、実はニコラさんも鈍感なのかもしれない。
ニコラさんが施設へ行っている間、私は自分の部屋で眠った。
夜はニコラさんと一緒だから、よく眠れていない。
だから日中のうちに寝ておく。
朝見送った後、そのままベッドに入る。そして返ってくる直前に起きる。
食欲はなかった。
だから私はみるみる痩せていった。
ニコラさんは私の変化にはとても敏感だから、痩せたこともすぐに察した。
「アリシア、僕がいない時の食事はどうしているの?」
「えっ……と……」
「まさか、食べてない……とか言わないよね?」
夕食を食べながら詰め寄られてしまった。
発情期を促す時からニコラさんの膝に座るのが癖になっているから、私はここから逃げられない。
「それが……その……。本を読みながら居眠りをしてしまって」
「それで忘れてたって?」
「気付いたら夕方になってたんです」
「もう、アリシアはドジっ子ちゃんだね」
鼻先を耳元に擦り寄せる。
なんとか誤魔化せて、私は安堵した。
でも、日が経つにつれ苦しさは増して行く。
ここにいれば、その先もずっとニコラさんに甘えて生きていくだけだろう。
レニーさんのように、対等にはなれない。
番になって浮かれていた。
明日、ここを出よう。
ニコラさんが施設に行っている間に。
それでレニーさんが幸せになれるなら、その方がいいに決まっている。
決意したら少しは気持ちが楽になるかと思っていたが、そんなことは無かった。
ずっと重い鉛を縛り付けられているようだ。
ここを出ていけば、この柵から逃れられるのだろうか。
でも、もうこれ以上ニコラさんの笑顔を見るのも辛い。
自分に限界が迫っていた。
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