【完結】【R-18】♡妹から悪役令嬢の濡れ衣を着せられて追放された私ですが、森でくまさんに拾われて溺愛されています♡

亜沙美多郎

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初めてのキス

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 それから一ヶ月ほどが過ぎた。
 私もここの生活にも随分慣れ、街を歩く人の中にも顔見知りになったり、ニコラさんを通じて新しく友人もできた。

 自宅に引きこもっていた時とは違う。
 毎日が刺激的で、笑っていない時がない。ニコラさんはいつだって突拍子もなく、予測不能な行動や表情を見せてくれる。

「今度、森へ行こう。きっと木の実が沢山とれる」
「それは素敵ですわ。木の実を拾いに行くなんて子供の頃ぶりです」
「良かった。もしかすると森へは良いイメージがないかもしれないと思っていたから」

 ニコラさんの顔が綻ぶ。
 私よりも私を気遣ってくれていると分かって嬉しかった。確かに森へ捨てられけど、それだけで苦手になったりしない。

「あの森は好きです。ニコラさんと出会えた場所ですもの」

 気を使って言ったのではなく、これは本心だ。あの森に捨てられなければ、私達は出会えなかった。だから今となっては、感謝している。

 あの森に、私を捨ててくれたことを。

「ぅぅうう……アリシアをすっごく抱きしめたい!!」
「だっ!! そんなハッキリ申されれば、なんとお答えすれば良いのか分かりません」
「じゃあ、手だけ繋いでもいい?」
「勿論ですわ」

 スッと手を差し出した。
 ニコラさんのスキンシップにも、ほんの少しだけ慣れてきたから、手を繋ぐくらいなら大丈夫だろうと。

 でもニコラさんは繋いだ手をグッと引っぱり、私を懐に収めたのだ。

「えぇぇ……」
 温かくて逞しい胸に頬を埋めてしまった。
 そのままニコラさんは私が逃げられないように、ギュッと包み込んで離さなかった。

「やっぱり、どうしてもこうしかった。アリシアが嬉しいことを言ってくれたから」
「そんな………いつもニコラさんが私を喜ばせてくれるから」
「だから?」
「……私も、たまには素直に……ならないとって、思いまして」
「じゃあ、このまま顔見ないで良いから言って。僕を好きになった?」

 そんなの、きっと初めから……私に、微笑みかけてくれたあの瞬間から……、私はきっと……。

「す……すき……です」
「アリシア!!」

 ニコラさんの腕にさらに力が入る。
 抱きしめられると、ニコラさんの体格の良さが際立って余計にドキドキしてしまう。
 
 フッと額に柔らかいものが触れた。
 ニコラさんが口付けたのだ。

「アリシア、何度君に好きだと伝えても足りないくらい、君が好きだよ」

 もう一度額に口付ける。

「発情期が早くくればいいのに」

 ニコラさんはこの一ヶ月、スキンシップは多かったものの、キス一つして来なかった。私を怖がらせないために、少しずつ慣れていこうと言ってくれていた。

 でもこのままで良いのか、私は悩んでいた。その……つまりは……、健全な成人男性が女性と二人きりで過ごしていて……。そういうこと・・・・・・を全くせずに過ごせるものなのかと……。

 私も経験がないとはいえ、一応は大人だ。そういうこと・・・・・・に興味がないわけではない。
(未知の世界ではあるけれど)

 もしニコラさんが、私のせいで我慢しているなら、それは私の責任だ。

「あ、あの……ニコラさん……」
「アリシア?」

 ニコラさんを見上げて瞼を閉じた。
 この人になら、何をされても良いと思える。

「それって……もう! 君はズルいな」

 言い終わらないタイミングでもう唇は重なっていた。

 柔らかい唇が軽く吸い付いて離れる。

(これが……キス……)

 全身がじんわりとわなないた。
 世の中にこんな悦びが存在していたのか。
 薄らと目を開けようとしたところで、再びニコラさんの顔が重なる。

 自分の全てをニコラさんに委ね、降り注がれるキスの嵐を受け止めた。

 自分からニコラさんを抱きしめているのにも気付かず、私達は唇を重ねる行為に夢中になっていた。
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