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其の参拾肆
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煌びやかな衣装に身を包んだ青蝶と飛龍。
無事に結婚の儀式の日を迎える。
ここまでの四日間は、毎晩飛龍に抱かれ、体液をたっぷりと注がれた青蝶の顔の痣は綺麗に消えていた。
元々の白肌になった青蝶は、目が眩むほどの美しさだ。
「青蝶、今までも其方は美しかったが、今はさらに美しい」
飛龍のストレートな伝え方には、きっと何年経っても慣れないだろうと青蝶は思っている。
「あ、ありがとうございます。飛龍様が僕を愛してくださったお蔭で、元の肌に戻れることができました」
頬を染めて俯き気味に答える。
顔の皮膚から精気を吸われていく……という症状はすっかりなくなっていた。
「身体の牡丹の華は、“病気”というよりも“体質”といった方が良いだろう。運命の番が側でいる限り、症状が消えることはないかもしれない」
そう話たのは新しい医務官だ。だが珍しいことには変わりない。定期的に医務官の診察を受けることが決まった。
「何も害がないのなら、私はこの華の絵が気に入っている。青蝶が私を欲している目印にもなって便利もいい」
「しかしこれは、服を脱がないと見えませんよ?」
「毎晩脱がすから問題ない」
「っ!! 飛龍様!!」
飛龍を責めようとした時、腕を掴まれ制止されてしまった。
笑っていた顔が、急に優しい表情になる。
「青蝶。無事結婚の儀式を終え、今夜は私と番になってくれるか?」
「勿論です。こんな僕ですが、よろしくお願いします」
「本日の其方の舞、楽しみにしているぞ」
「あなたの為だけに舞います。一瞬も目を逸らさないでいてくださいね」
「ふふ……。最初から、其方のことしか見えていなかった」
二人揃って会場へと向かう。
後宮に集まった大勢の人から歓声が上がった。
誰もが飛龍が選んだ妃を興味の目で見ている。
側室を一人も設けないと宣言したことで、長い歴史が変わってしまうと、嘆いた人も少なからずいる。世継ぎが生まれなければ綾国の未来は終わったも同然。反対の声も沢山上がった。
それでも飛龍は自分の意志を曲げなかった。生涯、自分はただ一人の妃だけを愛すると言い切ったのだった。
しかもその妃が針房から選ばれたという噂も先に広まっていたことから、今日の結婚の儀式の関心が高まるのも無理はない。
それはそれは驚くほど美しい人に違いないと、早くから話題になっていたようだ。
そして青蝶の姿を見るや、民衆はその美しい姿に惚れ惚れし、しばらく言葉を失った。
「こんなにも美しい人がなぜ針房にいたのだ?」
そういう声があちこちから聞こえてくる。青蝶が動くたびに、誰もが息を飲んだ。
青蝶が舞を披露すると、今度は大きな歓声が沸き起こった。
『絶世の美女』だと囃し立てる。あれだけ側室を持たないことを反対していた人達でさえ、その姿に納得しざるを得ない状況だ。
そうして結婚の儀式の後、皇より王権を受け取り、飛龍が正式の綾国の皇となった。
「青蝶、この国を私の手で発展させてみせる。それをずっと隣で見守っていてくれ」
「この命尽きるまで、必ず飛龍様に添い遂げます」
後宮を見渡す。
人々の瞳が輝いているのが、遠目にも分かった。
この光を絶やさぬよう、皇としての責務を全うしようと誓った飛龍であった。
「さあ、青蝶。部屋へ帰ろう。発情期が始まっている」
朝から甘い香りが飛龍の鼻を掠めていた。
青蝶はまだ自覚がなかったので、飛龍の言葉に従う。
「自分でも香りが分かればいいのに」
「大丈夫だ。これからは私しにか届かなくなるのだから」
飛龍は青蝶を抱き上げると、足早に自室へと向かう。
この甘い香りすら、誰にも嗅がせたくはない。
「本格的に始まるのは、夜も深まった頃になりそうだな。今日は疲れただろうから、それまでじっくり休むといい」
「じゃあ、そうさせてもらいます」
しかし青蝶に準備されていたのは肌が薄っすらと透ける、薄い生地の夜着であった。
「これは……あの……初夜で着るものでは……」
いや、初夜で着るとしても恥ずかしい。
こんなの、全身の肌が透けて見えてしまう。万が一、牡丹の華が咲き乱れようものなら、服を脱がずとも飛龍にバレてしまうではないか。
「今日から、青蝶の夜着はそれだ。私の妃になったのだからな」
「これは流石に恥ずかしすぎます」
「大丈夫だ、私しか見ないのだから。っというよりも、私にしか見えないでいいのだ。青蝶の存在自体」
飛龍は少しイラついた様子を見せた。何事かと思いきや、結婚の儀式で民衆の目が青蝶に集中していたのが許せなかったと言い出した。
「仕方なく青蝶の姿を晒したが、本当は誰の目にも触れさせたくない。あの大勢の中で、青蝶に一目惚れをした人が一体何人いるだろうか。それを考えただけでも、やるせない気持ちになる」
時折、飛龍の独占欲に唖然としてしまう青蝶ではあるが、それすらも嬉しいと思ってしまう自分も、同類かと思っている。
「僕はいつだって飛龍様しか見えていませんよ」
くすくす……と笑いながら言うと、「あたりまえだ!!」と詰め寄った。
「私のことだけ見ていろ、青蝶。一切の余所見も許さない」
青蝶は背伸びをして飛龍に口付けた。
「私の甘い蜜は、あなたしか味わえない。この牡丹の華も、あなたを想う何よりの証拠です。この華の蜜を吸えるのも、飛龍様しかいないのですよ」
青蝶は飛龍を寝台へと誘い込む。
「この蜜を、飲みたくはありませんか?」
深夜になると思っていた発情期が、早くも始まった。
部屋中が甘いフェロモンの香りで包まれる。
孔からは、オメガの液が腿を伝い滴っている。
飛龍がこの誘いを断るわけがない。
既に昂っている、青蝶の中心も見逃していなかった。
強く口付けると、青蝶の身体に見事な牡丹の華が咲き誇る。
「もっと、味わいたい。其方の蜜を……」
青蝶を、寝台へ押し倒した。
無事に結婚の儀式の日を迎える。
ここまでの四日間は、毎晩飛龍に抱かれ、体液をたっぷりと注がれた青蝶の顔の痣は綺麗に消えていた。
元々の白肌になった青蝶は、目が眩むほどの美しさだ。
「青蝶、今までも其方は美しかったが、今はさらに美しい」
飛龍のストレートな伝え方には、きっと何年経っても慣れないだろうと青蝶は思っている。
「あ、ありがとうございます。飛龍様が僕を愛してくださったお蔭で、元の肌に戻れることができました」
頬を染めて俯き気味に答える。
顔の皮膚から精気を吸われていく……という症状はすっかりなくなっていた。
「身体の牡丹の華は、“病気”というよりも“体質”といった方が良いだろう。運命の番が側でいる限り、症状が消えることはないかもしれない」
そう話たのは新しい医務官だ。だが珍しいことには変わりない。定期的に医務官の診察を受けることが決まった。
「何も害がないのなら、私はこの華の絵が気に入っている。青蝶が私を欲している目印にもなって便利もいい」
「しかしこれは、服を脱がないと見えませんよ?」
「毎晩脱がすから問題ない」
「っ!! 飛龍様!!」
飛龍を責めようとした時、腕を掴まれ制止されてしまった。
笑っていた顔が、急に優しい表情になる。
「青蝶。無事結婚の儀式を終え、今夜は私と番になってくれるか?」
「勿論です。こんな僕ですが、よろしくお願いします」
「本日の其方の舞、楽しみにしているぞ」
「あなたの為だけに舞います。一瞬も目を逸らさないでいてくださいね」
「ふふ……。最初から、其方のことしか見えていなかった」
二人揃って会場へと向かう。
後宮に集まった大勢の人から歓声が上がった。
誰もが飛龍が選んだ妃を興味の目で見ている。
側室を一人も設けないと宣言したことで、長い歴史が変わってしまうと、嘆いた人も少なからずいる。世継ぎが生まれなければ綾国の未来は終わったも同然。反対の声も沢山上がった。
それでも飛龍は自分の意志を曲げなかった。生涯、自分はただ一人の妃だけを愛すると言い切ったのだった。
しかもその妃が針房から選ばれたという噂も先に広まっていたことから、今日の結婚の儀式の関心が高まるのも無理はない。
それはそれは驚くほど美しい人に違いないと、早くから話題になっていたようだ。
そして青蝶の姿を見るや、民衆はその美しい姿に惚れ惚れし、しばらく言葉を失った。
「こんなにも美しい人がなぜ針房にいたのだ?」
そういう声があちこちから聞こえてくる。青蝶が動くたびに、誰もが息を飲んだ。
青蝶が舞を披露すると、今度は大きな歓声が沸き起こった。
『絶世の美女』だと囃し立てる。あれだけ側室を持たないことを反対していた人達でさえ、その姿に納得しざるを得ない状況だ。
そうして結婚の儀式の後、皇より王権を受け取り、飛龍が正式の綾国の皇となった。
「青蝶、この国を私の手で発展させてみせる。それをずっと隣で見守っていてくれ」
「この命尽きるまで、必ず飛龍様に添い遂げます」
後宮を見渡す。
人々の瞳が輝いているのが、遠目にも分かった。
この光を絶やさぬよう、皇としての責務を全うしようと誓った飛龍であった。
「さあ、青蝶。部屋へ帰ろう。発情期が始まっている」
朝から甘い香りが飛龍の鼻を掠めていた。
青蝶はまだ自覚がなかったので、飛龍の言葉に従う。
「自分でも香りが分かればいいのに」
「大丈夫だ。これからは私しにか届かなくなるのだから」
飛龍は青蝶を抱き上げると、足早に自室へと向かう。
この甘い香りすら、誰にも嗅がせたくはない。
「本格的に始まるのは、夜も深まった頃になりそうだな。今日は疲れただろうから、それまでじっくり休むといい」
「じゃあ、そうさせてもらいます」
しかし青蝶に準備されていたのは肌が薄っすらと透ける、薄い生地の夜着であった。
「これは……あの……初夜で着るものでは……」
いや、初夜で着るとしても恥ずかしい。
こんなの、全身の肌が透けて見えてしまう。万が一、牡丹の華が咲き乱れようものなら、服を脱がずとも飛龍にバレてしまうではないか。
「今日から、青蝶の夜着はそれだ。私の妃になったのだからな」
「これは流石に恥ずかしすぎます」
「大丈夫だ、私しか見ないのだから。っというよりも、私にしか見えないでいいのだ。青蝶の存在自体」
飛龍は少しイラついた様子を見せた。何事かと思いきや、結婚の儀式で民衆の目が青蝶に集中していたのが許せなかったと言い出した。
「仕方なく青蝶の姿を晒したが、本当は誰の目にも触れさせたくない。あの大勢の中で、青蝶に一目惚れをした人が一体何人いるだろうか。それを考えただけでも、やるせない気持ちになる」
時折、飛龍の独占欲に唖然としてしまう青蝶ではあるが、それすらも嬉しいと思ってしまう自分も、同類かと思っている。
「僕はいつだって飛龍様しか見えていませんよ」
くすくす……と笑いながら言うと、「あたりまえだ!!」と詰め寄った。
「私のことだけ見ていろ、青蝶。一切の余所見も許さない」
青蝶は背伸びをして飛龍に口付けた。
「私の甘い蜜は、あなたしか味わえない。この牡丹の華も、あなたを想う何よりの証拠です。この華の蜜を吸えるのも、飛龍様しかいないのですよ」
青蝶は飛龍を寝台へと誘い込む。
「この蜜を、飲みたくはありませんか?」
深夜になると思っていた発情期が、早くも始まった。
部屋中が甘いフェロモンの香りで包まれる。
孔からは、オメガの液が腿を伝い滴っている。
飛龍がこの誘いを断るわけがない。
既に昂っている、青蝶の中心も見逃していなかった。
強く口付けると、青蝶の身体に見事な牡丹の華が咲き誇る。
「もっと、味わいたい。其方の蜜を……」
青蝶を、寝台へ押し倒した。
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