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フォーリア10歳、アシェル20歳 ーバース性判明からー
母と弟の野望 ーsideアシェル
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フォーリアと出会って二年が過ぎた。
俺は無事学校を卒業し、今は父の病院で研修医として働いている。勿論、オメガであることを隠して……。助かったのはオリビアも俺の父の病院に研修医として入ってくれたことだ。研修医の間は甘えられない環境で働きたいと、こっちに来た。
オリビアがいてくれるだけで、気持ちが楽になれる。さりげなく気に掛けてくれたり匂いに敏感に気付いてくれるので、本当に感謝している。
発情期に入ると、別の街の病院まで研修に行っているという体で別宅に籠りに行く。普段、隙を見せないよう気丈に振舞っている分、別宅での時間は緊張感から解放され、肩の力を抜く良い時間となっている。
そしてフォーリアは今でもずっと俺を支えてくれている、かけがえのない存在だ。
今はまだ、俺からの感情が恋愛感情を含むソレだとは隠し通している。この気持ちに気付いた時は耐えられない程のヒートに見舞われたが、それ以降は不思議と落ち着いている。
フォーリアの指示通りに渡されたハーブティーを飲んでいるだけなのに、フォーリアに触れても頬に口付けても、あのような状態にはならなかった。
ただ、その理由がハーブティーのおかげなのか、それとも本当はフォーリアが運命の番ではなかったのか……正解は分からない。
オメガの分際で、なんて言われるかもしれないが、やっぱり番うなら相手はフォーリアしか考えたくない。今は発情期が終わって屋敷に帰って来たばかりだから、次の三ヶ月後までは仕事に専念しないといけないのだ。
(家に帰ったときにフォーリアが居てくれたら、どんなに幸せだろうか……)
なんて考えたりもするが、現実にはそうもいかない。
屋敷には俺を疎ましく扱う弟と母がいる。この二年の間で弟からの嫌がらせは益々酷くなっているのだ。俺の部屋に入り、抑制剤を盗まれた時は本当に焦った。たまたま父が予備の薬を持っていたから仕事にも出られたが、どんなに問い詰めても「そんなのは知らない」の一点張りなのだ。
使用人に命令し「オメガ専用食だ」と、自分の席の前にはサラダしか準備されない日も珍しくなくあった。父が医師会などで不在の日が多いので、やりたい放題やっている。
母は注意をするどころか弟とグルになって俺への嫌がらせを手助けしていた。きっと使用人に命令したのも母であろう。
自分の家なのに落ち着ける空間がないのがたまらなく苦しい。それでもこの屋敷から出ないでいるのは、負けたと思われたくないからだ。
そんなことを考えていると、自室のある三階まで上がってきた俺を弟が出迎えた。
「まだ懲りずに帰ってくんだな。もう別宅に住めばどうだ?」
「そんなのはタリスが決めることではないだろう。そっちこそ、懲りずに俺に構ってくるんだな。寂しいのなら昔のように一緒に遊ぶか?」
「はっ?誰がオメガなんかと!! 父さんはいつまでこんな奴に目をかけるつもりなんだ。全く信じられない!」
一歳違いの弟・タリスも学校を卒業し、同じく父の病院に今年から研修医として赴任してきた。俺がオメガだとは今のところ口外していないが、患者やナースに悪口を吹き込んでいるとオリビアから報告を受けている。
タリスはアルファである自分が病院の跡取りに相応しいと豪語していて、それに同調している母とグルになって俺を追い出そうと嗾けているのだ。母はとにかくプライドが高く、世間体を気にしている。俺のオメガをひた隠しにしているのも、ローウェル家からオメガが出たなど母にとっては恥でしかない。
“ローウェル家“という名のブランドを汚した俺は完全に悪人だ。公にならないうちに、どうにか出て行ってくれないかと躍起になっている。
学校を卒業して社会に出るようになってから一段と嫌がらせがキツくなった。
(因みに三男の弟は元々おっとりした性格で、争い事には興味がないし競争心の欠片すらないため、割と早くから放任になっていた。常に蚊帳の外にいるためか、三男はローウェル家の中で影の薄い存在だ)
十日振りに屋敷に帰った途端言い争いなんて……。嫌気が刺しながら自室のドアを開けると部屋が荒らされているではないか!! クローゼットも引き出しも開け放たれて中のものが部屋に散乱している。泥棒が侵入した後のような有様だ。
「タリス!! 留守中に部屋を荒らすなんて!! 一体何の真似だ!!」
「なんで俺だと決めつける!? 証拠でもあるのか?」
「お前しかこんな子供じみたことをする奴なんていないだろ! それとも使用人に命令してやらせたのか?」
「人聞きの悪い。そんな風に悪人に仕立て上げられるなんて、俺の方が可哀想だ」
ドンッ! と肩を突き飛ばされ、よろめいた。
「兄さん、痩せすぎなんじゃないのか!? そんな細い体じゃ銀狼というより猫のようだ!」
タリスがよろめいた俺を見て嘲笑う。
確かに俺は銀狼なのに子供の頃から細かった。成長期に入ると大きくなるかと期待していたが、背は伸びるものの体格は華奢なままだった。頑張って鍛えても、引き締まりはしても銀狼らしいドッシリとした体型にはなれなかった。
タリスも子供の頃は同じように細かったが、成長期からはどんどん銀狼らしい威厳のある体型に育った。見た目だけではタリスの方が年上に見える程だ。
タリスは俺が華奢なのもオメガの血が流れていたからだと見下した。
どれだけ言い争っても解決しないのは目に見えているので、部屋の片付けに移ることにした。次の発情期までに鍵を付けなければ……。
全て片付くまでに2時間ほどかかった。大事な書類はそれこそ鍵のかかる引き出しに入れていたため無事だったが、フォーリアからもらった茶葉の残りやオリビアと卒業祝いに贈りあったクリスタルのサンキャッチャーなどは床に散らばっていた。
怒りが込み上げるが我慢した。俺が怒れば怒るほど、向こうの思う壺だ。
ようやく片付けが終わりソファーに座った時、フッと気づいてしまった。
急いでクローゼットを開き探してみると、やはり無くなっている。部屋中探し回ってもやはり無いのだ。
フォーリアからずっと借りたままのベストが。
別宅で一人籠っている間は別の服やタオルを貸してくれたので、一番初めに借りたベストは屋敷に持ち帰っていたのだ。二年も前の物なので流石にフォーリアの香りはしないが、何よりも大切な宝物なのだ。
そのベストが無くなっていた。
俺は無事学校を卒業し、今は父の病院で研修医として働いている。勿論、オメガであることを隠して……。助かったのはオリビアも俺の父の病院に研修医として入ってくれたことだ。研修医の間は甘えられない環境で働きたいと、こっちに来た。
オリビアがいてくれるだけで、気持ちが楽になれる。さりげなく気に掛けてくれたり匂いに敏感に気付いてくれるので、本当に感謝している。
発情期に入ると、別の街の病院まで研修に行っているという体で別宅に籠りに行く。普段、隙を見せないよう気丈に振舞っている分、別宅での時間は緊張感から解放され、肩の力を抜く良い時間となっている。
そしてフォーリアは今でもずっと俺を支えてくれている、かけがえのない存在だ。
今はまだ、俺からの感情が恋愛感情を含むソレだとは隠し通している。この気持ちに気付いた時は耐えられない程のヒートに見舞われたが、それ以降は不思議と落ち着いている。
フォーリアの指示通りに渡されたハーブティーを飲んでいるだけなのに、フォーリアに触れても頬に口付けても、あのような状態にはならなかった。
ただ、その理由がハーブティーのおかげなのか、それとも本当はフォーリアが運命の番ではなかったのか……正解は分からない。
オメガの分際で、なんて言われるかもしれないが、やっぱり番うなら相手はフォーリアしか考えたくない。今は発情期が終わって屋敷に帰って来たばかりだから、次の三ヶ月後までは仕事に専念しないといけないのだ。
(家に帰ったときにフォーリアが居てくれたら、どんなに幸せだろうか……)
なんて考えたりもするが、現実にはそうもいかない。
屋敷には俺を疎ましく扱う弟と母がいる。この二年の間で弟からの嫌がらせは益々酷くなっているのだ。俺の部屋に入り、抑制剤を盗まれた時は本当に焦った。たまたま父が予備の薬を持っていたから仕事にも出られたが、どんなに問い詰めても「そんなのは知らない」の一点張りなのだ。
使用人に命令し「オメガ専用食だ」と、自分の席の前にはサラダしか準備されない日も珍しくなくあった。父が医師会などで不在の日が多いので、やりたい放題やっている。
母は注意をするどころか弟とグルになって俺への嫌がらせを手助けしていた。きっと使用人に命令したのも母であろう。
自分の家なのに落ち着ける空間がないのがたまらなく苦しい。それでもこの屋敷から出ないでいるのは、負けたと思われたくないからだ。
そんなことを考えていると、自室のある三階まで上がってきた俺を弟が出迎えた。
「まだ懲りずに帰ってくんだな。もう別宅に住めばどうだ?」
「そんなのはタリスが決めることではないだろう。そっちこそ、懲りずに俺に構ってくるんだな。寂しいのなら昔のように一緒に遊ぶか?」
「はっ?誰がオメガなんかと!! 父さんはいつまでこんな奴に目をかけるつもりなんだ。全く信じられない!」
一歳違いの弟・タリスも学校を卒業し、同じく父の病院に今年から研修医として赴任してきた。俺がオメガだとは今のところ口外していないが、患者やナースに悪口を吹き込んでいるとオリビアから報告を受けている。
タリスはアルファである自分が病院の跡取りに相応しいと豪語していて、それに同調している母とグルになって俺を追い出そうと嗾けているのだ。母はとにかくプライドが高く、世間体を気にしている。俺のオメガをひた隠しにしているのも、ローウェル家からオメガが出たなど母にとっては恥でしかない。
“ローウェル家“という名のブランドを汚した俺は完全に悪人だ。公にならないうちに、どうにか出て行ってくれないかと躍起になっている。
学校を卒業して社会に出るようになってから一段と嫌がらせがキツくなった。
(因みに三男の弟は元々おっとりした性格で、争い事には興味がないし競争心の欠片すらないため、割と早くから放任になっていた。常に蚊帳の外にいるためか、三男はローウェル家の中で影の薄い存在だ)
十日振りに屋敷に帰った途端言い争いなんて……。嫌気が刺しながら自室のドアを開けると部屋が荒らされているではないか!! クローゼットも引き出しも開け放たれて中のものが部屋に散乱している。泥棒が侵入した後のような有様だ。
「タリス!! 留守中に部屋を荒らすなんて!! 一体何の真似だ!!」
「なんで俺だと決めつける!? 証拠でもあるのか?」
「お前しかこんな子供じみたことをする奴なんていないだろ! それとも使用人に命令してやらせたのか?」
「人聞きの悪い。そんな風に悪人に仕立て上げられるなんて、俺の方が可哀想だ」
ドンッ! と肩を突き飛ばされ、よろめいた。
「兄さん、痩せすぎなんじゃないのか!? そんな細い体じゃ銀狼というより猫のようだ!」
タリスがよろめいた俺を見て嘲笑う。
確かに俺は銀狼なのに子供の頃から細かった。成長期に入ると大きくなるかと期待していたが、背は伸びるものの体格は華奢なままだった。頑張って鍛えても、引き締まりはしても銀狼らしいドッシリとした体型にはなれなかった。
タリスも子供の頃は同じように細かったが、成長期からはどんどん銀狼らしい威厳のある体型に育った。見た目だけではタリスの方が年上に見える程だ。
タリスは俺が華奢なのもオメガの血が流れていたからだと見下した。
どれだけ言い争っても解決しないのは目に見えているので、部屋の片付けに移ることにした。次の発情期までに鍵を付けなければ……。
全て片付くまでに2時間ほどかかった。大事な書類はそれこそ鍵のかかる引き出しに入れていたため無事だったが、フォーリアからもらった茶葉の残りやオリビアと卒業祝いに贈りあったクリスタルのサンキャッチャーなどは床に散らばっていた。
怒りが込み上げるが我慢した。俺が怒れば怒るほど、向こうの思う壺だ。
ようやく片付けが終わりソファーに座った時、フッと気づいてしまった。
急いでクローゼットを開き探してみると、やはり無くなっている。部屋中探し回ってもやはり無いのだ。
フォーリアからずっと借りたままのベストが。
別宅で一人籠っている間は別の服やタオルを貸してくれたので、一番初めに借りたベストは屋敷に持ち帰っていたのだ。二年も前の物なので流石にフォーリアの香りはしないが、何よりも大切な宝物なのだ。
そのベストが無くなっていた。
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