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第五章 特訓開始
第五章 第七幕
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「ところで、華瑠はどうしてそんなに、俺によくしてくれるんだ?」
セオクク厩舎に所属している鴻鵠は自分一人だから、当然と言えば当然なのかもしれないが、ルティカと自分に対してを比べた場合、随分と対応が違うように、バラクアは感じていた。明け透けに言えば、贔屓をして貰っている様な気さえしていた。
その疑問を尋ねたのと同時に、華瑠の顔が段々と赤くなっていく。そして彼女は半笑いのまま、モジモジと下を向いてしまう。
「あー、やっぱり、気付いてタ?」
「まぁ、何となく、って程度だけどな」
「いや。違うのよ! 別にルーちゃんの事が嫌いトカそんなんじゃないノヨ! あのネ、あのー、これを説明するノ、ちょっと恥ずかしいカラ、笑わないでテネ?」
華瑠はそこで、深く呼吸を一つ吐いた後、眉間に皺を寄せて、少し困ったように微笑んだ。
「あ、あのネ……。私のネイバーは、あの、ディラル語じゃなくテ、風全語で聞こえる様に設定してるのネ。ディラル語の勉強にならないのハ、充分分かってるのヨ。デモ、こっちの方が落ち着くシ、シショーもいいっテ、言ってくれてルシ……」
「そうだったのか。うん、それで、俺とネイバーの設定が、どう関わってくるんだ?」
華瑠の顔が、先程よりも更に赤くなる。だけどその顔は、恥ずかしい半面、とても嬉しそうにも見える。
「アノネ、それで、バラクアの、声ってネ……。とってもとっても、格好いいノヨ……。私、大好きなのネ。……あー、ダカラネ、一杯一杯聞きたくテ、一杯一杯話しかけたくなるノヨ。バラクア、私みたいなドジな女にも優しいシ、喋り方トカ、飛んでる時トカ、トテモ格好いいシ、いつか私も、もし高い所チョット大丈夫になったラ、バラクアに乗せて、空を飛んでみたいナ、って、思ってるノ」
自身の頬を両手で押さえ、華瑠はバラクアを見つめた。
「フフフ、何だか、恥ずかしいネ。誰にも内緒ヨ?
そこで華瑠は勢い良く立ち上がり、バラクアに顔を近づけて、そっと、口元に人差し指を立てた。そして、
「約束ヨ?」
と、照れくさそうに呟いた。
「ハイ! 休憩終わりネ! それじゃバラクア、準備が出来たカラ、シショーとルーちゃん呼んで来るネ! ちょっと待っててネ!」
と不必要なまでの大声を出して、ジラザ達の元へと走り去って行ってしまった。
人口風力装置に囲まれたバラクアは、そんな華瑠の後姿を見つめながら、一つ、ごく小さめに、ヒョロロロロロと鳴き声を飛ばした。
――風全語か……。一体華瑠の耳には、俺の声はどんな風に聞こえているんだろうな……。俺に聞こえて来る俺の声は、この鳴き声だけだからな……。
駈けて行った華瑠の背中が、ルティカ達の元へと辿り着く。そこでふと、バラクアはこうも思った。
――じゃあルティカには、一体俺の声はどう言う風に届いているんだ?
不意に、一陣の風が草の指先を悪戯に撫でて行った。この風の音は、人にも鴻鵠にも、本当に同じ音に聞こえているのだろうか?
セオクク厩舎に所属している鴻鵠は自分一人だから、当然と言えば当然なのかもしれないが、ルティカと自分に対してを比べた場合、随分と対応が違うように、バラクアは感じていた。明け透けに言えば、贔屓をして貰っている様な気さえしていた。
その疑問を尋ねたのと同時に、華瑠の顔が段々と赤くなっていく。そして彼女は半笑いのまま、モジモジと下を向いてしまう。
「あー、やっぱり、気付いてタ?」
「まぁ、何となく、って程度だけどな」
「いや。違うのよ! 別にルーちゃんの事が嫌いトカそんなんじゃないノヨ! あのネ、あのー、これを説明するノ、ちょっと恥ずかしいカラ、笑わないでテネ?」
華瑠はそこで、深く呼吸を一つ吐いた後、眉間に皺を寄せて、少し困ったように微笑んだ。
「あ、あのネ……。私のネイバーは、あの、ディラル語じゃなくテ、風全語で聞こえる様に設定してるのネ。ディラル語の勉強にならないのハ、充分分かってるのヨ。デモ、こっちの方が落ち着くシ、シショーもいいっテ、言ってくれてルシ……」
「そうだったのか。うん、それで、俺とネイバーの設定が、どう関わってくるんだ?」
華瑠の顔が、先程よりも更に赤くなる。だけどその顔は、恥ずかしい半面、とても嬉しそうにも見える。
「アノネ、それで、バラクアの、声ってネ……。とってもとっても、格好いいノヨ……。私、大好きなのネ。……あー、ダカラネ、一杯一杯聞きたくテ、一杯一杯話しかけたくなるノヨ。バラクア、私みたいなドジな女にも優しいシ、喋り方トカ、飛んでる時トカ、トテモ格好いいシ、いつか私も、もし高い所チョット大丈夫になったラ、バラクアに乗せて、空を飛んでみたいナ、って、思ってるノ」
自身の頬を両手で押さえ、華瑠はバラクアを見つめた。
「フフフ、何だか、恥ずかしいネ。誰にも内緒ヨ?
そこで華瑠は勢い良く立ち上がり、バラクアに顔を近づけて、そっと、口元に人差し指を立てた。そして、
「約束ヨ?」
と、照れくさそうに呟いた。
「ハイ! 休憩終わりネ! それじゃバラクア、準備が出来たカラ、シショーとルーちゃん呼んで来るネ! ちょっと待っててネ!」
と不必要なまでの大声を出して、ジラザ達の元へと走り去って行ってしまった。
人口風力装置に囲まれたバラクアは、そんな華瑠の後姿を見つめながら、一つ、ごく小さめに、ヒョロロロロロと鳴き声を飛ばした。
――風全語か……。一体華瑠の耳には、俺の声はどんな風に聞こえているんだろうな……。俺に聞こえて来る俺の声は、この鳴き声だけだからな……。
駈けて行った華瑠の背中が、ルティカ達の元へと辿り着く。そこでふと、バラクアはこうも思った。
――じゃあルティカには、一体俺の声はどう言う風に届いているんだ?
不意に、一陣の風が草の指先を悪戯に撫でて行った。この風の音は、人にも鴻鵠にも、本当に同じ音に聞こえているのだろうか?
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