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〜初等部

お出掛け

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 只今朝の9時、本日は日曜日。
 お気に入りのワンピースを身に纏い、霧島に髪を結ってもらう。両サイドを編み込んだハーフアップ、毛先は巻いてふわふわにする。

「結び目にはこれを着けて」

 兄から貰った髪飾りを霧島に渡して、鏡を見る。・・・変なところは無いよね?私の後ろに立つ霧島を見上げて口を開く。

「ありがとう、霧島。可笑しいところはないかしら?」
「大丈夫ですよ。今日も大変お可愛らしいです、お嬢様」

 霧島は私の言葉に頷き、優しく微笑んだ。霧島の言葉に安心して、鞄を手に持ち椅子から立ち上がる。扉を開けてくれた彼女にお礼を言って私は部屋を出た。

「お気をつけて行ってらっしゃいませ」
「行ってきます」

 そう言って霧島が車に乗り込む私に頭を下げる。毎回律儀にそう言って見送ってくれる霧島に微笑んで手を降った。
 走り出した車の窓から晴れ渡る空を見上げる。・・・うん、今日は絶好のお出掛け日和だ。

***

 駅前で車から降り、待ち合わせ場所へと歩き出す。確かこの辺りだったはず・・・。と周りを見回していると後ろから声がかけられる。

「ごきげんよう。春様」
「ごきげんよう、お姉様!」
「春お姉様、おはようございます」

 私の大切な友達の声に微笑んで振り返る。各々の好みがよくわかる服を身に纏い、私に手を降る彼女達の元に足を進める。

「ごきげんよう。桜さん、千華さん、國近さん」

 今日は友達とお出掛けしますよ!

***

 事の始まりは金曜日の昼休み。

「あの皆様、今度の日曜日なのですがご予定は空いていらっしゃいますか・・・?」

 何時も通り4人で話していると、突然千華ちゃんがそう聞いてきた。少し不安げな顔をしている彼女を不思議に思いながらも頷く。

「大丈夫ですよ」
「僕も大丈夫です」
「私も大丈夫です」

 私達の答えに千華ちゃんは嬉しそうに顔を綻ばせると4枚のチケットを取り出した。

「お母様からレストランのチケットを頂いたのですが、一緒に行きませんか?」

 チケットには有名レストランの名前が記されている。兄が好きなレストランだ。千華ちゃんの家はレストランの経営もしていたからそれ経由かな?

「本当ですか!楽しみです」
「お誘いありがとう、千華嬢」

 桜ちゃんと國近くんが嬉しそうに笑う。

「お姉様も、一緒に行ってくださいますか・・?」

 3人が皆同じような表情で私の顔を伺うからつい笑ってしまいそうだ。そんな不安そうな顔をしないで、私が友達のお誘いを断るはずがないでしょう?

「もちろんです。楽しみですね・・・」
「っありがとうございます!お姉様!!」

 幸せそうに笑う千華ちゃんの頭を撫でて4人で休みの予定を組み立てる。
 チケットはランチ限定だったので、朝から待ち合わせをしてショッピングもすることになった。
 そういえば4人でお出掛けするのは初めてだなぁ。

***

 そんなわけで今日に至るのですが・・・

「春様、こちらはどうですか?」

 桜ちゃんが袖口のレースが可愛らしい白いカーディガンを私に見せて言えば

「お待ち下さいませ、桜様。お姉様にはこちらが良いのではないですか?」

 桜ちゃんに対抗するように綺麗な薄紫色のストールを手に持ち千華ちゃんがそう言って

「僕はあの色のものが良いと思います」

 國近くんが近くに置かれた服を指差して頷いた。
 駅前で合流してすぐにショッピングに来たけど、こんな感じで3人が私の服を見繕っている。どれも可愛いし、センスも良いんだけど皆自分の服を見よう?私、自分で服探せるからね。
 私を除いて3人によって進められていく話し合いをぼんやりと見つめる。こうなると長いのは家族で学習済みだ。
 さて、この時間をどうしようと辺りを見渡す。3人の話に混ざりに行っても良いけど、そうすると話が長引いて、ランチに間に合わないかもしれないからそっとしておいた方が良いよね・・・

「あら?」

 悩んでいた私の視界に入ったモノに、思わず声がもれる。それを手に取り、いろんな角度から眺めた。・・・うん、良いんじゃないか?
 1人頷いて、未だに話続けている3人に気付かれないようにそっと会計をする。

「ふふ、気に入ってくれるかしら・・・」

 店員さんから渡された綺麗に梱包された商品を潰れないように、と優しく鞄へと仕舞い込む。

「お姉様、こちらに来て下さいませ!」
「今行きますよ、千華さん」

 私を呼ぶ千華ちゃんの声に返事をする。こちらを見つめる3対の瞳はキラキラと輝いていて、思わず笑みが浮かんだ。
 私の友達は今日もとても可愛らしいです。

***

 買い物を終えてレストランへと向かう。
 私は3人がそれぞれ選んでくれた服を購入し、3人もそれぞれ雑貨や服を購入していた。

「私、あのレストランに行くのは久しぶりなので、今日がすごく楽しみだったのです」

 桜ちゃんがほんのりと頬を赤くして嬉しそうに笑う。

「まぁ!そんなに喜んでもらえるなんて、お誘いして本当に良かったですわ」

 そう言って千華ちゃんが桜ちゃんに笑いかける。2人で顔を見合わせて笑っている姿はとても可愛らしい。
 2人を見守る私の隣に居る國近くんを見上げる。彼も嬉しそうに微笑んで、2人を見つめていた。・・・いや、2人じゃなくて千華ちゃんを、かな?
 出会った時から変わらない國近くんの一途な恋心にほんのりと胸が暖かくなる。
 両片想いである國近くんと千華ちゃんがもどかしくて微笑ましくて。どうか二人が結ばれて幸せになってくれたらと思う。

「春お姉様?どうかしましたか?」

 そんな事を考えながらじっと黙って國近くんを見つめていた私に、彼は不思議そうに首を傾げた。私は首を横に振り國近くんに微笑む。

「何でもありませんよ」

 私はそう言って先を歩く2人の元へ足早に近づいた。
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