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〜初等部
浮かんだ疑問
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私の手を引き、会場中央へエスコートしていく青柳。
彼は中央で立ち止まると私の腰に手を当て、ポーズをとる。断れなかった時点で腹は括った。私も青柳の肩に手を置く。
「俺、春と踊れてすごく嬉しい」
「・・・私もですわ。青柳様」
微笑んでそう言った彼からは少年の様な純粋さを感じる。社交辞令で言った私の言葉に嬉しそうに笑う青柳に、チクリと胸が痛む。
「俺だけを見てろよ、春」
気まずくて目を伏せた私を引き寄せ、真剣な顔をした彼が私を見つめる。・・・彼の深海の様な、深い青色の瞳に吸い込まれそうだ。
音楽が流れ、彼にリードされるままに体を動かし踊る。
この子は何をしたいのだろう。私は彼に特別な事は何もしていない。友人である兄の妹という只それだけで、私へ興味を持つのだろうか?
「春?ちゃんと俺を見ろ」
青柳と繋いだ手に力が込められ、私は思考の海から戻される。少し不機嫌な彼に視線を向ければ、満足気に笑う。
・・・聞こう、彼の気持ちを。なぁなぁでやっているからこんな面倒なことになるんだ。
「青柳様は、私に何故構うのですか?」
私が兄の妹だから?私の反応が面白いから?それとも暇潰し?・・・一体どうして?
こちらを見ている彼の瞳が、ふるりと揺れた。
「・・・それは、」
ゆっくりと口を開いた青柳を見つめる。私の手を握ったまま、彼は何度も口を開閉させている。
音楽はもう止まっていた。
「春、桜嬢達が心配しているよ」
その言葉と同時に私の手が青柳の手から引き抜かれる。
「お兄様・・・」
「奏」
兄だった。後ろには桜ちゃんと千華ちゃん、國近くんもいる。3人は心配そうな顔で私を見つめている。
「申し訳ありませんでした、春様。私、青柳様をお止めすることが出来なくて・・・」
「お姉様、僕と千華嬢がお側を離れたばっかりにこんなことになっているなんて、奏様に頼まれていたのに・・・」
「申し訳ありませんわ、春お姉様・・・。お困りになっていた春お姉様に気付かないなんて、私・・・」
泣きそうな顔をして声を震わせる3人をそのままにして青柳と話なんて出来ない。私は兄を見上げる。
「お兄様、手を離していただけますか?桜さん達が・・・」
「うん、行っておいで。・・・僕は悠真と話があるから」
兄は私の頭を撫でると桜ちゃん達の方へと私を優しく押す。青柳と向かい合う兄の顔は、あまり見えなかった。
***
「やってくれたね、悠真。僕が傍に居ない時に春を誘うなんて」
「・・・俺の親友の可愛い妹なんだ。誘わない方が失礼だと思わないか?」
そう答えた青柳に奏の酷く冷えた眼差しが突き刺さる。先程まで妹に向けていた暖かさはそこにない。
「断れない状況にしておいてよく言うよ」
「・・・」
黙り込む青柳を奏は睨み付ける。
「悠真は僕の親友だ。それは何があっても変わらない。・・・だけど春にはもう近寄るな」
「・・・何で、奏はそこまで春を守るんだ?」
「僕の妹だからだよ。優しくて可愛い、大切な妹。だから僕が守ってあげるんだ、周りのいろんなものから・・・」
奏はそう言うと友人達と話している妹の姿を見る。微笑みを浮かべ、眩しいものを見るみたいに目を細めて。
「なぁ、奏」
「・・・なに?」
「お前は多分気付いていたと思うけど、俺は春が好きなんだ」
真剣な顔で青柳は奏を見据える。
「お前は絶対に俺を認めない。でも、春の気持ちはわからないだろ?」
「・・・」
「春が俺を好きになれば問題ない。今はまだ意識すらしてもらえてないけど、俺は絶対にあいつを振り向かせてやる!」
そう告げると青柳は奏に背を向けてその場を離れた。奏はその背を複雑な気持ちで見つめると、次第に自身も妹の方へと足を進めた。
「悠真にも、誰にも、春は渡さない。あの子は僕がずっと守るんだから・・・」
***
泣きそうな桜ちゃん達を慰める。
私が青柳にほぼ強制的にダンスへと連れて行かれたことを相当気にしているみたいだ。
「あれは仕方なかったのですよ。私も断れない立場でしたし・・・ね?」
「それでも、申し訳なくて」
「もう忘れましょう?パーティーはまだ続くのですから、楽しまないと勿体無くてよ!」
落ち込み暗い顔をする3人に、にっこり笑いかける。もう終わったことだし、気にしてもしょうがないからね!
「春の言うとおりだよ。楽しんでもらわないと悲しいな」
「お兄様!お帰りなさいませ」
「あぁ、ただいま」
私の肩に手を置き、後ろから顔を出した兄も微笑んで三人に告げた。私だけでなく兄もそう言うならと三人はようやく笑顔を浮かべてくれた。
青柳に問いただそうと思っていたことは、すっかり頭から抜け落ちていた。
彼は中央で立ち止まると私の腰に手を当て、ポーズをとる。断れなかった時点で腹は括った。私も青柳の肩に手を置く。
「俺、春と踊れてすごく嬉しい」
「・・・私もですわ。青柳様」
微笑んでそう言った彼からは少年の様な純粋さを感じる。社交辞令で言った私の言葉に嬉しそうに笑う青柳に、チクリと胸が痛む。
「俺だけを見てろよ、春」
気まずくて目を伏せた私を引き寄せ、真剣な顔をした彼が私を見つめる。・・・彼の深海の様な、深い青色の瞳に吸い込まれそうだ。
音楽が流れ、彼にリードされるままに体を動かし踊る。
この子は何をしたいのだろう。私は彼に特別な事は何もしていない。友人である兄の妹という只それだけで、私へ興味を持つのだろうか?
「春?ちゃんと俺を見ろ」
青柳と繋いだ手に力が込められ、私は思考の海から戻される。少し不機嫌な彼に視線を向ければ、満足気に笑う。
・・・聞こう、彼の気持ちを。なぁなぁでやっているからこんな面倒なことになるんだ。
「青柳様は、私に何故構うのですか?」
私が兄の妹だから?私の反応が面白いから?それとも暇潰し?・・・一体どうして?
こちらを見ている彼の瞳が、ふるりと揺れた。
「・・・それは、」
ゆっくりと口を開いた青柳を見つめる。私の手を握ったまま、彼は何度も口を開閉させている。
音楽はもう止まっていた。
「春、桜嬢達が心配しているよ」
その言葉と同時に私の手が青柳の手から引き抜かれる。
「お兄様・・・」
「奏」
兄だった。後ろには桜ちゃんと千華ちゃん、國近くんもいる。3人は心配そうな顔で私を見つめている。
「申し訳ありませんでした、春様。私、青柳様をお止めすることが出来なくて・・・」
「お姉様、僕と千華嬢がお側を離れたばっかりにこんなことになっているなんて、奏様に頼まれていたのに・・・」
「申し訳ありませんわ、春お姉様・・・。お困りになっていた春お姉様に気付かないなんて、私・・・」
泣きそうな顔をして声を震わせる3人をそのままにして青柳と話なんて出来ない。私は兄を見上げる。
「お兄様、手を離していただけますか?桜さん達が・・・」
「うん、行っておいで。・・・僕は悠真と話があるから」
兄は私の頭を撫でると桜ちゃん達の方へと私を優しく押す。青柳と向かい合う兄の顔は、あまり見えなかった。
***
「やってくれたね、悠真。僕が傍に居ない時に春を誘うなんて」
「・・・俺の親友の可愛い妹なんだ。誘わない方が失礼だと思わないか?」
そう答えた青柳に奏の酷く冷えた眼差しが突き刺さる。先程まで妹に向けていた暖かさはそこにない。
「断れない状況にしておいてよく言うよ」
「・・・」
黙り込む青柳を奏は睨み付ける。
「悠真は僕の親友だ。それは何があっても変わらない。・・・だけど春にはもう近寄るな」
「・・・何で、奏はそこまで春を守るんだ?」
「僕の妹だからだよ。優しくて可愛い、大切な妹。だから僕が守ってあげるんだ、周りのいろんなものから・・・」
奏はそう言うと友人達と話している妹の姿を見る。微笑みを浮かべ、眩しいものを見るみたいに目を細めて。
「なぁ、奏」
「・・・なに?」
「お前は多分気付いていたと思うけど、俺は春が好きなんだ」
真剣な顔で青柳は奏を見据える。
「お前は絶対に俺を認めない。でも、春の気持ちはわからないだろ?」
「・・・」
「春が俺を好きになれば問題ない。今はまだ意識すらしてもらえてないけど、俺は絶対にあいつを振り向かせてやる!」
そう告げると青柳は奏に背を向けてその場を離れた。奏はその背を複雑な気持ちで見つめると、次第に自身も妹の方へと足を進めた。
「悠真にも、誰にも、春は渡さない。あの子は僕がずっと守るんだから・・・」
***
泣きそうな桜ちゃん達を慰める。
私が青柳にほぼ強制的にダンスへと連れて行かれたことを相当気にしているみたいだ。
「あれは仕方なかったのですよ。私も断れない立場でしたし・・・ね?」
「それでも、申し訳なくて」
「もう忘れましょう?パーティーはまだ続くのですから、楽しまないと勿体無くてよ!」
落ち込み暗い顔をする3人に、にっこり笑いかける。もう終わったことだし、気にしてもしょうがないからね!
「春の言うとおりだよ。楽しんでもらわないと悲しいな」
「お兄様!お帰りなさいませ」
「あぁ、ただいま」
私の肩に手を置き、後ろから顔を出した兄も微笑んで三人に告げた。私だけでなく兄もそう言うならと三人はようやく笑顔を浮かべてくれた。
青柳に問いただそうと思っていたことは、すっかり頭から抜け落ちていた。
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