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第2章 怨霊退治

3 ひとり残された愛莉

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 そういえばお腹減った。けどその前に部屋の散らかり具合が気になってしまう。一人暮らしの男子高校生の部屋ってこんなものなのかもしれない。

 掃除でもしてあげようか。いや、勝手にそんなことをするのもどうかと思う。エッチな本とかみつけてしまうかもしれない。掃除はやめておこう。それに掃除なんてしたら、かえって散らかす恐れもある。なぜそうなるのかわからないけど、いつもそうなってしまう。

 祖父の苦笑する顔が目に見えるようだ。

 お腹空いたし、掃除をするよりもお腹を満たすほうが先だ。やっぱり何か作って食べようか。コンビニで買ってくるって手もある。けど、面倒だ。それに、なんだか落ち着かない。

 この男くさい部屋のせいだろうか。やっぱり一緒に行けばよかったかもしれない。
 今更遅いけど。

 愛莉はゴロンと床に寝転がり天井を眺めた。
 何か違うこと考えよう。あいつの名前はえっと……大和だ。

 素戔嗚尊の生まれ変わりか。そうは見えなかった。同じ霊感が強いってことはわかったけど、力はないって話をしていた。なら、ただ霊感が強い人ってだけか。

 愛莉のお腹がギュルギュルルと鳴った。

 空腹はやっぱり我慢できない。冷蔵庫に何かないだろうかと覗くと、卵とソーセージと納豆とインスタント味噌汁と生ラーメンか。玉子焼きなら作れる。けど、ごはんがない。炊飯器があるから今からごはんを炊くしかない。

 愛莉は卵と炊飯器を交互に見遣り、やっぱり作るのは面倒臭い。えっと、あっ、カップラーメンがある。ポットは……。あった。お湯も入っている。

 カップラーメンにしよう。
 お湯を入れて三分待つ。

 カップラーメンを考えた人に感謝だ。

 三分待つ間に、再び愛莉は怨霊のことを黙考した。

 源頼光と名乗ったけど、本当にそうだろうか。何かが引っ掛かる。その何かがわからないけど。あの鎮石に封印されていたのは誰の怨霊なのだろう。いや、そもそも怨霊が封印されていたかどうかもわからない。ただのパワーのある石って可能性もある。怨霊の話は後付けかもしれない。

 鬼猫とはあの鎮石の話はしたことがない。真実は闇の中か。

 んっ、何。今、何か感じた。誰かの視線だ。そうかさっきから落ち着かないのは誰かの視線を感じるせいか。
 どこだろう。ここにも別の怨霊がいるのかもしれない。いや、さっきまで怨霊の気配は何も感じなかった。怨霊じゃないのかも。もしかして、ここは幽霊の通り道になっているのではないだろうか。ありえる。

 大和は気にならないのだろうか。慣れてしまって気にならないのだろうか。きっとそうだ。愛莉もそうだから。なのに、今感じる視線は気にかかる。

 誰だかわからないけど視線が痛い。この感じは嫉妬かも。なんで、嫉妬なのだろう。愛莉は感じるほうへとサッと顔を向ける。

「誰、何か用なの」
「ふん、おまえこそ誰だ」

 おっ、反応があった。けど、あまり関わらないほうが本当はいい。それでも今はちょっと関わってみよう。もうここへは来ないように話すべきだ。

「私は愛莉。ちょっと事情があってここにいるの。あの、ここはあなたが来る場所ではないわ。帰って」
「ふん、おまえこそ帰れ。ここは大和の部屋だ。おまえのような小娘が汚すんじゃない」

 うおっ、な、何で。急に首を絞めてきた。女の幽霊だ。
 この感情はやっぱり嫉妬。この女の幽霊は大和のことを好きになってしまったようだ。早いところなんとかしなくては、大和の精気を吸い取られてしまう。

 あれ、けど大和は元気そうだった。精気を吸い取られている感じは一切なかった。どうしてだろう。

「おい、小娘。苦しくないのか」
「全然平気よ。だって、あなたの霊力よりも愛莉のほうが上だもの」

「怖くないのか」
「慣れているからね。幽霊の友達がいるくらいよ」

「なぜだ、なぜだ。大和といい小娘といい。私の力が及ばないとは。怖がりもしないなんて。口惜しい」
「それはしょうがないわね。早いところ成仏することをオススメするわ」

 愛莉はそう話すと鈴を取り出して鳴らした。

「や、やめろ」

 幽霊はそう喚き散らして消え去った。

 まったく幽霊に好かれるなんて大和は何をしているのだろう。それにしてもこの鈴は効果覿面こうかてきめんだ。母の形見だけどすごく役に立つ。だからと言って、即成仏はできないけど。

 あっ、カップラーメンが。
 蓋をあけて溜め息を漏らす。汁を吸って伸びきってしまっている。やってしまった。それでも愛莉は麺をすすり完食した。これはこれで美味い。

 あっ、あんなところにお菓子がある。あとでお菓子も食べてしまおう。自由に使わせてもらうって言ってあるから問題ないはず。

 んっ、まだ何かいるみたい。
 さっきの幽霊じゃない。愛莉は気を引き締めて警戒をした。ここは般若心経でも唱えてバリアを張ったほうがよさそうだ。まったくこんなところに住むなんて大和は物好きだ。

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