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23号室 根小成学園
しおりを挟む教室の戸を開けたら、そこには……。
「あああぁぁぁーーーーーーーーーーー」
なんだ、夢か。なんかものすごく怖い夢を見た気がするけど、思い出せない。
まあ、いいか。額の汗を拭い、起き上がる。
時計の針は八時五分。
八時五分……。
えっと、今日は春休み……じゃなーーーーーーーーーーい。遅刻の文字が頭を過る。どうして、起こしてくれなかったのだろう。とにかく着替えなきゃ。そう思ってベッドから飛び降りたら、足を滑らせ尻餅をついてしまった。
「いたーい」
ああ、もう。何しているの私。慌ててもいいことなんてない。落ち着かなくちゃ。ひとつ深呼吸をして「はい行動開始」と自分に言い聞かせる。まずは、制服に着替え。
それであっている? 顔を洗うのが先じゃない? シャワー浴びたほうがよくない?
でも、遅刻しちゃう。ダッシュすれば間に合うかも。考えている時間なんかない。とにかく着替えなきゃ。ササっと制服に着替えてリビングへ向かう。
「おはよう~」という母の寝ぼけた声に苛立つ。
「もう、おはようじゃないでしょ。今日から学校なのに、なんで起こしてくれなかったのよ」
「えっ、そうだったっけ」
ダメだこりゃ。腹立つだけ無駄だ。のんびりし過ぎな母にはうんざりだ。大好きだけど、もっと……。いいや、もう。急がなきゃ。
「あんた、寝癖ついているわよ」
「えっ、寝癖⁉」
ダメ、ダメ。今日は気にしない。遅刻はさけなきゃ。家から十分あれば学校に着く。
今は、八時十五分。
八時三十分に教室に辿り着けば、セーフ。大丈夫、大丈夫。今日だけは何を言われても気にしないことにしよう。寝癖女なんて言われるかも。かぶりを振って、嫌な考えを振り飛ばす。でも、やっぱり寝癖は最悪よね。ううん、いいの。本当に、いいのかな。身だしなみは大事よね。そう思いつつも、結局軽く髪をとかしただけで終わりにしてしまった。
「いってきまーす」
母からの『いってらっしゃい』の言葉はごにょごにょごにょという何かを食べながらの返答だった。もう知らない。腹立たしい気持ちを抱きながら家を飛び出した。
走りながら、いろんな考えが浮かんでくる。ああ、もう今日から学校だって言うのに早速遅刻だなんて最悪。春休みボケしちゃっているなんて。二年生になって最初の登校がこれじゃあね。本当に私ってボケボケなんだから。いや、母が起こしてくれないのが悪いのよ。うーん、人のせいにしちゃダメだよね。
それにしても、眠い。十時間くらい寝ているからスッキリしてもいいはずなのに。これって、寝過ぎで眠いのかも。鞄片手に、学校へとダッシュしながら大欠伸をひとつ。寝癖で毛先がピンと跳ねてしまった髪の毛もそのままで登校するなんて。皆になんて言われるだろう。
想像するだけで、赤面してしまう。美樹には絶対に、笑われる。そういえば美樹とはクラス変わったんだっけ。一緒だったかな。
「沙也、最高!!」なんて爆笑されるかも。だからって、休むわけにはいかない。こんなどうしようもない理由で休むなんて私自信が許さない。無遅刻無欠席だったのに。せめて無欠席記録は更新しなきゃ。いや、もしかしたら遅刻せずに間に合うかもしれない。まだ諦めちゃダメ。全速力で走り抜けば、もしかしたら。頑張れ、私。
ふぁ~。
もうヤダ。また欠伸なんて。誰かに見られたら近所も歩けないじゃない。本当にどうしちゃったのかな。今日は最高に眠い。猫みたいに丸くなって寝たい気分。
あ、やっと学校が見えてきた。急げ、急げ、急げ。
よし、校門に到着。どう、時間は?
そのとき学校の始業ベルが鳴った。ああ、ダメだった。アウト。遅刻決定。こうなったら、ここで寝入っちゃおうか。って何を寝ぼけたことを。早く教室に行かなきゃ。
んっ、あれ?
なんだか違和感が。なんだろう。なぜだかわからないけど、学校が妙に大きく感じた。
私、背が低くなっちゃったみたい。まったく、そんなことあるわけがない。背が突然に低くなるわけない。それに、不思議と今日は土の匂いが近くに感じる。草の匂いも感じる。
あ、どこかで猫が騒いでいる。でも、この辺に野良猫いただろうか。そんなこと考えている場合じゃない。とにかく先生に謝らなくちゃ。急いで教室の前まで行くと、大きく深呼吸して私は教室の戸を開けた。
えっ、なに⁉ どうなっているの⁉
そこには行儀よく椅子に座る猫たちがいた。しかも、私に視線を向けてニヤリと笑みを浮かべていた。頭が真っ白になり、呆然とする。手に力が入らずに持っていた鞄を床に落としてしまった。落とした拍子に鞄が開き、手鏡が足元に飛び出してくる。
う、嘘でしょ。鏡に映る私も猫になっていた。
そうこの学校は猫になってしまう学校だった。
猫になる。ねこなる。根小成学園。
*****
(*ダジャレで終わらせてしまいました。すみません。ニャニャニャ。(=^・^=))
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