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第四章「暗雲を跳ね除けろ」
月が消える
しおりを挟む「心寧ちゃん、心寧ちゃん」
えっ、誰。
「ソメノよ」
「守護霊様なの」
「そうよ」
あっ、守護霊様の姿がはっきりと見える。なんで、どうして。
「えっと、えっと。わたし、わたし、ソメノ様が見える。すごくきれい」
「ふふふ、それはよかった」
あれ、ソメノ様のとなりにいるのってもしかして……。
「シュレン様」
心寧の呼びかけにシュレンがニコリと微笑む。
「心寧、わたしと一緒に」
シュレンはそう告げると手を前に出して頷いた。心寧はその手を取り頷き返す。その瞬間、身体が落下していくような感覚になり悲鳴をあげそうになった。
「大丈夫よ、心寧。わたしもいるから」
空いたもういっぽうの手を握るソメノ様がやさしい眼差しを向けていた。その向こうに園音様も見守ってくれていた。
大丈夫。なんの問題もない。心寧は見守ってくれている三人の微笑みにそう思えた。
あっ、あんなところに……。
「お母さん」
グラウンドの端っこにある木の陰にお母さんがいた。しかもあたたかな気を感じる。もしかしたらずっと見守ってくれていたのかもしれない。
声は聞こえないけどお母さんは『がんばって』と口にしたように思えた。
『わたし、がんばるからね。立派な猫神様になるからね』
心寧は心に誓いシュレンとソメノの手をギュッと握り返した。
感じる、感じる、強い力を感じる。
大丈夫、この調子でいけばきっとシュレンの力を自分のものにできるはず。
『わたしはひとりじゃない。シュレンもソメノもいる。ムサシもソウもいる。ルナもハクもいる。きっとチムを救える。コクの魂を持つチムを魔猫へと変えさせない』
心寧の思いが空に向かって光となり大きな光の柱を作り上げた。
すごい、すごい。これが四猫神様の力なんだ。強い、すごく強い力。
自分の中に入ってくる。
みんなの思いとともに力が自分の中に入ってくる。
やさしくて強くてあたたかい力を感じる。力が内から溢れ出しそうだ。
これならチムを救える。もうダメダメなんかじゃない。そう思ったのも束の間、急に光の柱の輝きが弱まっていく。
んっ、あれ……。なんだかおかしい。
力が、力が……。
気のせいだろうか。身体が重くなってきたような。
「シュレン様。どうしたの」
シュレンの手が力なくだらりと下がり繋いでいた手が放れてしまった。
気づけば結界の周りがどす黒くなっている。よく見るとなにかがうごめいている。なに、あれは。
周りにいる先生たちも片膝をついて荒い息をしていた。
なにが起きているの。
あっ、月がない。雲の中に隠れてしまったのだろうか。
目を凝らして空をみつめた心寧はハッと目を見開いた。あれは、なに。月を隠しているのは雲なんかじゃない。大きな黒い塊だ。
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