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第四章「暗雲を跳ね除けろ」

守りを固めろ

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 グラウンドに出ると空に月が浮かんでいた。まんまるのように感じるけど違う。ほんのちょっと欠けている。
 いつの間にか夜になったのだろう。四猫神様の墓に結構な時間いたってことか。

「綺麗なお月様」
「そうだね、心寧ちゃん」
「ムサシくん」

 んっ、なんだか視線を感じる。
 そうだふたりっきりじゃなかった。
 ルナもすぐそばにいた。先生たちもいわし組のみんなもいる。
 ココの面白くなさそうな顔が目の端にチラッとだけ映ったが今は気にしている場合じゃない。わかっていても気にかかる。ココの視線はどこかトゲがある。

「なによ、心寧だけいい思いをして」

 そんな声がかすかに届いた。
 心寧はなんだか申し訳ない気分になった。

「ああ、もうお似合いだからよけいに腹が立つ。くやしいけど、許してあげる」

 そんな声も届きホッとした。
 心寧は再び空の月をみつめてふと思う。
 あの月が満月だったらよかったのに。けど、それはそれで問題があるのだろうか。
 チムが魔猫化してしまう。
 心寧は目の釣り上がった怨霊猫を思い出しブルッと身体を震わせた。

「心寧ちゃん、はじまったよ」

 えっ、なにが。
 気づけばグラウンドになにか円形のものが描かれていた。
 先生たちがせっせと描いているところだ。あれってなんだろう。

「五芒星魔法陣よ」

 んっ、なに。ごぼう……。木の根っこみたいなやつのこと。心寧は首を捻った。どう見てもあの円形のはごぼうじゃない。じゃ、なんて言ったのだろうルナは。

「『ごぼうせいまほうじん』だよ」
「それってムサシくん、なに」
「おそらくここの結界を強めるためだろう」

 ああ、もうなにがなんだかわからない。やっぱり自分はなんにも知らない。ダメダメだ。それでも大丈夫なのだろうか。四猫神様の力を手にしたとしても使いこなせるのだろうか。
 そう思っていたら突然、ものすごいパワーを感じた。
 先生たちが描いていたごぼうなんちゃらが光っている。なんだかキラキラした光が天に昇ってあたりに広がっていく。うわっ、きれい。虹色の光だ。

「心寧ちゃん」
「えっ、なに」
「ほら先生方が呼んでいるよ」
 本当だ。手招きしている。


***


「んっ、あいつら小癪な真似を」

 カネルはフンと鼻をならして空をみつめた。
 どんなに結界を強めようとも無駄だ。こっちには四猫神の魂がひとつあるのだから。四つの魂が結束しないかぎりあいつらに勝ち目はない。

 あとは明日の満月の日を待つのみ。
 あそこのチビスケが魔猫として猫神学園を襲うことになるだろう。
 なんとも面白い。味方であるはずの者にすべてを壊されるのだからな。

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